職場の常識、再点検 part.10 ~間違った思い込みや不文律、見直しを~

法律関係の会社でもなければ専門家でもない、一般企業の一般社員が書くことに意味がある?CSRとしての「職場の常識、再点検」シリーズも今回で10回目。

今回はこれまでに書いてきたことの総集編的な感じで、ネットや書籍などに相談やNG事例として挙げられることの多い「思い込み&法的にNGなのに定着してしまっている不文律」をまとめてみました(全15例)。

年末の大掃除のついでに?目次から、気になった項目だけでもお読みいただけますと幸いです。

 

あ、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

※事例はネットや書籍などを参考にしたものであり、当社を含めた特定の企業についてのものではありません。また、法的な解釈は必ずしも正しいことを保証するものではありません。ご了承ください。

 


休憩・休日(休暇・休業)についての間違った認識

【誤01お昼休憩の時間に、電話対応のために事務所に居るよう指示されたが、1件も電話がなければ、休憩していたことになる。

 手持ち(待機)時間であり休憩ではありません。実際の業務(電話応対)が生じなくても、待機している時間は労働時間とみなされるため、その時間は休憩とはならず、別途休憩が必要です。

なお、法で例外を認められる一部の業種を除き、休憩時間に事務所内にいること(外出禁止)を指示するなど、自由な休憩を妨げること自体がNGです(業務上の合理的な理由によって、外出を届出制にすることは可能なようです)。

  

02休日でも仕事の連絡には速やかに対応しなければならないので、社用スマホは電源を入れて常時携帯しなければならない。

 休日の電話・メール対応などは休日勤務になり得ます。また、業務用スマホを携帯するよう指示することも、Q.1同様、業務上の待機指示(手持ち時間)と解釈される可能性があります。

休日中でも会社や取引先からの電話・メールには速やかに対応しなければいけない、という使命感もありすが、休日(休暇)中に何らかの業務を行う場合は休日勤務になるので、休日中の業務発生について、どのように取り扱うのか(申請手段など)を労使間で決めておきましょう。

 

03有給休暇を申請する場合、理由を必ず会社に伝えなければいけない。

 有給休暇取得には特別な理由は不要であり、理由によって可否を決定することは法律で禁止されています。当然、企業が独自に取得条件を規定することも認められません(そもそも、従業員からの有給取得申請を企業が拒否することはできません)。

なお、有給休暇は雇用形態や企業規模の大小、業種に関係なく、勤続年数と出勤率により取得可能な日数が法律で決められているので、「アルバイトは何年勤めても有給休暇はない」「当社では全員一律年間5日までしか有給休暇は取得できない」などといった独自ルールも認められません(法律が優先されます)。

 

04男性が育休を取得するのは控えるべきだ。

 育児休業は性別に関係なく取得可能であり、会社が育休取得を理由に、減給・降格・望まない部署への配置転換などの不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。

男性の育休取得は正当な権利であり、育休制度を適切に利用可能にすること、制度についての正しい理解を社内に促すことは企業の義務とされています。

  

残業についての間違った認識

05準備や片付け、会議などの実務以外の活動を勤務時間外に行う場合、それらは残業にはならない。

 すべて残業であり、残業代が支払われなければなりません。他にも、職場の清掃、朝礼(終礼)、制服への着替え、作業場所までの移動などの時間も、すべて「会社の指揮命令下にある時間=労働時間」になるため、法定労働時間外に行うのであれば残業になります。

 

06その日のうちにどうしても終わらせなくてはならない業務があっても、上司が残業を認めなかったため無断で残業をした場合、残業代は支払われない

 残業代の支払いが命じられる場合があります。残業が自己申告制や上司の許可制であって、申請がなかった・上司が許可しなかったという場合であっても、黙示的に残業せざるを得ない状況などで残業が発生した場合は、社員が勝手に残業したとはみなされません(定時で終わらない業務量を課せられているにもかかわらず残業を認めない、上司の「圧力」で残業申請できない職場環境になっている、など)。

残業が許可されないことを理由に自宅に持ち帰って仕事をする隠れ残業の場合も、同様に残業代の支払いが命じられる可能性があります。

 

07定額残業代制の場合、どれだけ残業しても追加の残業代は支給されない。

 定額として想定している(支給されている)時間を超過した分は追加で残業代が支払われなければなりません(定額残業し放題プランではありません)。

また、深夜勤務や休日勤務分について追加で手当の支給が必要になる場合もあります。これは、定額残業代を役職手当(管理職手当・営業手当など)として支給している場合も同様です。

 

081時間未満の残業は残業として認められない。

 日々の残業時間は1分単位で計算することが原則であり、1時間単位でしか残業を認めないことは法令に違反します。賃金は働いたすべての時間に対して全額支給されなければならないので、30分単位や15分単位で認めるというようなルールもNGになります。ただし、1分単位で残業時間を集計した1か月間の合計残業時間について、30分未満を切り捨てることは許容されるようです(厚労省の通達あり)。

例:1日10分間の残業(片付け)が20日あった場合、その月の残業時間を0時間とすることはNG。合計の3時間20分について、3時間分の残業代を支給し、端数の20分は切り捨て、とすることはOK(もちろん、4時間分として残業代を支給することは全然OK)。

 

飲み会や旅行、親睦会などについての間違った認識

09会社の飲み会などの行事は強制参加である。

 業務でなければ参加は強制されるものではありません。通常の勤務時間内に業務として行う、または勤務時間外でも残業代や交通費などが支給され「残業」または「出張」と同じ扱いとなる場合、参加義務が生じることはありますが、そうでない一般的な飲み会などへの参加強制、参加しなかったことによる不利益扱いはパワハラとなり得ます。

   

10】新入社員は飲み会などで余興をしなければならない(断ってはいけない)。

 業務遂行上の必要のない、余興などについての指示・命令に従う必要はありません

飲み会(宴会)などでは、他にも、浴衣など特定の衣装の着用・飲酒・カラオケなどの強要や、ゲーム大会などで無理やりプライベート情報を晒させる(または晒す)、酔った姿や寝姿の写真や動画をSNSに投稿する、なども本人の同意なく強制すればハラスメントになり得ます。

 

11入会した覚えがないのに、会社の親睦団体に入会したことになっていて、会費が給料から天引きされていた場合でも、退職しない限り退会できず、会費も返金されない。

 退会し、既に支払った会費を返金してもらうことは可能です。親睦会はあくまでも「任意団体」であり、会社から独立した組織体なので、全員加入を基本とする場合でも、本人の同意がなければ入会は無効とされます(会社に入社=親睦団体に入会、とはなりません)。また、退会も任意であり、退職しない限り退会できない、というものでもありません。

なお、会費を天引きで徴収する場合、企業と労働者の間で控除に関する協定(24条協定)を締結しなければなりません(労働基準法違反になります)。

  

他者の権利の尊重についての間違った認識

12顧客から土下座謝罪を要求された部下に対して、それに従うよう指示することは業務上やむを得ないことだ。

 土下座の強要はパワハラで。他にも、顔などを叩く・人格を否定する・モノを投げつける・全員の前で見せしめとして叱る・恫喝する・故意に無視する、などの行為もすべてパワハラであり、暴行罪・名誉棄損罪・侮辱罪・脅迫罪・傷害罪などに該当する可能性があります。

なお、顧客の立場から、店員等に土下座を強要することも名誉棄損罪や脅迫罪などに該当し得ます。絶対にそのような要求をしてはいけません。

  

13在職中に、写真と名前が自社WEBサイトに掲載されることに同意した場合、退職後もそのまま掲載され続けていても仕方ない。

 利用に同意した場合であっても、個人情報の削除(利用停止)、開示などを要求できます。企業は、自社で保有する個人情報について、当該本人からの削除(利用停止)などの要求に迅速かつ適切に応じる義務があり、それには自社従業員(元従業員)も当然該当します。

なお、自社の従業員であっても、本人の許可なく写真を含めた個人情報を取得(撮影)し、WEBサイト・SNS・会社案内などに利用することは個人情報保護法に違反します。必ず本人の同意を得ておきましょう。

 

退職についての間違った認識

14在職中に自分で取得した取引先の名刺や連絡先データを、転職先に持ち出して使用しても問題ない。

 会社が許可する場合を除き、前職で知り得た機密情報や営業情報を持ち出すことは禁止されます(不正競争防止法、個人情報保護法などへの違反にもなり得ます)。

名刺や連絡先データ以外にも、貸与端末(スマホやパソコン)やソフトウェア、営業資料、業務アプリの利用アカウント情報、業務用メールアドレスなどはすべて返還しなければなりません(または、会社から指示がある場合は破棄する)。返却(破棄)に関する内容や機密保持などを含めて、退職時に誓約書の提出を求められることも多いです。

  

15退職する場合、未消化の有給休暇が残っていても、退職日までにまとめて取得するのは避けるべきだ。

 有給休暇は退職前にすべて使い切っても問題ありません。引継ぎ等を理由に、会社が有給休暇取得を拒否することは法律で禁止されています。

当然ですが、会社が引継ぎのために「時季変更権」を行使する場合であっても、退職日以降の日に有給取得を変更することはできませんし、基本的に未消化の有給休暇を金銭で買い取ることもできません。会社側は、退職者が退職前にまとめて有給休暇を消化することを前提にした引継ぎスケジュールを立てておきましょう。

 


会社(組織)としては正しく認識・運用していることばかりだとは思いますが、個人レベルでは勘違いしている人もいるかもしれません。

適切な職場環境の維持のため、今一度確認して、よい年を迎えましょう!

 

ということで、本年最後の私の脳内DJのパワープッシュは、もうすぐクリスマスということで(ブログ本編とは関係ありませんが)The Poguesの普遍的な大大大大名曲、“Fairytale of New York”です!

ブログと直接関係しないのでリンクは貼りませんが、YouTube(MVも素敵です)や各種音楽配信で聴けますし、この時期は街中で耳にすることもあると思います。

数年前のここのブログで紹介済の曲ですが、名曲を再確認……という感じ&今年11月に逝去したボーカルのシェイン・マガウアンへの追悼の意も込めて、再度のご紹介。

一足先にあちらに移住した、カースティ・マッコール(この曲のゲスト女性ボーカル)と、あちらでも一緒にこの曲を歌っていてくれたらいいな、と思いながら、この曲が脳内&実際に通勤途中の車の中でエンドレスリピートしております。

いつ何があるかわからないのが人生ですし、一度しかないのも人生なので、今回のブログに書いたようなことを改めて確認し、このようなことで困らない&困らせないようにしつつ、楽しく仕事ができるといいですね。

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