職場の常識、再点検 part.11 ~やる気と法規、サービス早出・サービス残業~

あるある事例① 会社から指示されたわけではないが、自身のスキルアップのために始業時間より1時間早く出社して(または居残りして)仕事をする(したい)。

あるある事例② 自発的に早出や居残りをしている部下(後輩)がいることは上司(先輩)として把握しているが、やる気があっていいことなので黙認している。

新年度がスタートして、新しく働き始めた人、新しい職場(部署)で働くことになった人、そういった人たちを指導・管理する人……

なにかとやる気と活気に満ちた新年度のスタートですが、その「やる気」や、「やる気」を陰ながら応援することにも、少し気を付けておきたいことがあります。

 

ということで、今回はやる気に起因する時間外労働について、要約すると、

やる気は大切!ただし『ルールの範囲内でできる限り』が基本です!」といった感じの小話です。

あ、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

事例はいずれもインターネットや書籍などを参考にしたものであり、当社を含めた特定の企業についてのものではありません。また、法律素人なので法解釈が必ずしも正確ではないかもしれません。ご了承ください。

 


法令遵守が成長の足かせになる??

労働基準法をはじめとした各種法令の遵守が以前よりも声高に言われるようになり(少々コンプライアンス至上主義的傾向はあるにせよ)、少しでも問題があるとSNSなどであっという間に拡散されて社会的信用を落としてしまうリスクが増えています。

法令の中身も「長時間&過度な労働の抑制」など、過労死をはじめとした長時間労働に起因する日本社会の問題解消を目的とした内容が強化されてきました。

※ 残業時間の上限規制が2024年4月から運送業・建設業・医師にも適用されました。因みに、残業を含む時間外労働は、労使間でいわゆる「36協定」を締結し労基署に提出した場合に限り、「月45時間まで、年間360時間まで」認められ、さらに「特別条項」を締結することで「年に6か月までは月45時間を超えてもよい(ただし年間720時間以内)」とされます。今回適用された業種では、運送業で年960時間、建設業で年720時間、医師で年960時間(特別な事情があれば1860時間まで)が上限となります。

 

一方で、なんらかの理由により、ある程度の長時間労働を自ら希望する労働者からは、もっと働きたいのに(会社や上司が許可してくれない)」という不満の声もあるそうです。

そのような人にとっては、残業削減や有給休暇取得強化などによって、「帰らなければいけない」「休まなければいけない」ということがストレスになる、または、成長や成果を妨げる「ありがた迷惑なルール」であるように思えてしまうかもしれません。

上司(先輩)としても、やる気のある(頑張っている)社員を後押ししてあげたい、という気持ちがある一方で、法令は遵守しなければいけないし、人件費も抑えなければいけない……というジレンマを抱えることもあるかもしれません。

 

やる気があれば早出・残業してもいい?

自身のスキルアップや知識習得のために、始業時間より早く出社して仕事をしたい(居残って仕事をしたい)、だから残業申請はしない、またはその分はタイムカードを打刻しない、という人もいるようです(ネット調べ)。

上司(先輩)も本人のやる気を尊重したい、という善意で、そのような行為を見て見ぬふりをする、または、むしろ頑張っている社員として評価する、ということもあるでしょう。

感情的には、それでいいと思います。

 

……が、日本に所在する企業や、その企業に雇用される労働者である以上、労働基準法などの日本の法令(ルール)や法令に準じた就業規則を守らなくてはいけません

労基法により、労働時間は「1日8時間1週40時間以内」と定められており、それを超えて仕事をする場合は割増賃金を支給しなければなりませんし、残業時間の上限も労基法で定められていますし、そもそも労使間で協定を締結していないと残業すること(させること)自体がNGです。

就業規則にも、勤務日数や勤務時間が明記され、時間外労働を命じる場合についても規定がありますし、労働契約や協定も遵守しなければいけません。

また、たとえ実務ではなく、研修・練習・勉強会などであっても、会社の設備を使用するのであれば多かれ少なかれコストは発生しますし、万が一ケガをした場合などの補償の問題もあり、業務上必要な研修や勉強会であれば、やはり適切に管理されなければなりません。

勤務時間外にしか指導できないので居残りで指導するというようなこともあるかもしれませんが、指導や教育も労働時間に含まれる(時間外であれば残業)ので、必要であれば適切に時間外労働として扱うようにしないといけません。

 

上司として、無断で早出・居残りをする社員がいることを把握していながら、放置(黙認)することは、管理義務の不履行とされる可能性がありますし、タイムカードを押さずに早出・居残りをすることを上司が許可(指示)しているのであれば、それは問題(法令違反や就業規則違反)になり得ます。

無断の早出や居残りの放置(黙認)は、そうすることが「当たり前(または良い事)」になって、逆に労働時間を守る(または適切に残業を申請する)ことは良くないこと、という空気が職場内で醸成される原因になり得ます。

そうなってしまうと、職場全体の社員満足度低下や社員定着率低下=作業効率の低下やサービス・品質の低下=売上や顧客満足に悪影響が及んでしまうかもしれません。

  

現実的な落としどころは?

ということで、上司(先輩)は、早出やサービス残業(休日の無断勤務)が行われないように部下(後輩)の状況を把握して、業務上必要なことであれば適切に残業として扱い、業務上不要であればやめるように指導する、というのが現実的な落としどころではないかと思います。

企業によっては、定時または許容する時間以外はPCが起動しない、メールの送信ができない、オフィスの電気が付かない、など物理的に仕事ができないよう設定しているところもあります。

ただし、ここをあまり厳しくすると、せっかくの「やる気」をなくしてしまったり(最悪の場合退職してしまったり)、私物のPCやスマホなどを使ってデータを「こっそり」持出して自宅で作業するなどのルール違反が横行してしまったりするリスクもあり得るので、多少の(安全で健全な範囲内の)バッファはあってもいいのかもしれません(法令遵守が大前提ですが)。

 

どうしても早出や居残りで仕事をしたいという人は、そのような事情も考慮しつつ、まずは上司(先輩)に相談してみましょう。

また、新入社員等の場合、「まだ仕事で貢献できることが少ない」などの理由から、先輩社員よりも早く出社して仕事を始める&先輩より遅くまで仕事をするべきだ、と思ってしまう人(それが「当たり前」と思っている先輩や上司)もいるかもしれませんが、そのような考えがサービス早出・サービス残業を「当たり前化」させるトリガーにもなるので、見直したほうがいいのではないかと思います。

 

休日や有給休暇、勤務後の時間を自己研鑽や家族・友人との時間として有効活用したり、単に趣味など好きなことをする時間に充てたりすることは、直接的または間接的に自身の「糧」=知識・スキルの向上=今の仕事や将来の自分にとってプラスになるはずです。

   


「やるき と ほうき」という言葉がなんとなく頭に浮かんだことから発展して、このような小話を書いてみましたが、まとめると、冒頭に書いた通り、

やる気は大切!ただし『ルールの範囲内でできる限り』が基本です!

ということだと思います。

長時間でも(休まずに)働くこと、苦労すること、努力・忍耐・根性……などが美徳とされがちな日本社会ではありますが、法規制的にはNGということもありますし、その美徳が現代社会の諸々の問題の根本になっている可能性もあるので、何事もほどほどがいいのではないでしょうか。

 

……なんだか話が散らかってきたので本日はこの辺で。

そんなこんなで、本日の私の脳内DJのパワープッシュは、ネオアコ界きっての早熟の天才、ロディ・フレイム率いるAztec Cameraの歴史的名盤1stアルバム「High Land, Hard Rain」収録の “The Bugle Sounds Again” です!

曲名の「Bugle」は小型のラッパで、軍隊の進軍の時などに使用されるもののことで、「安全で健全な時でも小型ラッパの音が聞こえてくる=順調に見える時でもリスクは存在している=若さ故の焦燥感」についての歌だと思います(あくまでも私個人の解釈ですが)。

因みに、soundには「音」「鳴る」以外に「健全な」「(倫理的に)正しい」などの意味もあります。

先行き不透明で、いつ何が起こるかわからない、そんな不安定な世の中で生きているからこそ「がむしゃらに」「今やれるベストを!」、というのも大事ですが、一方で「健全な」環境で「(倫理的に)正しい」行動、というのも大切ですよね。

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