社内フェアトレード(サービス残業問題と時間の価値)

新店舗オープン準備で人手が足りないから、と社員が表向き自主的に、実際には会社命令で仕方なく、休日返上で準備作業をする…なんてことは割と当たり前のように行われていますが、もしそれが「無償」であるなら、違法な労働となる可能性があります。

それくらい当たり前では?という考えは思考の停滞(停止)を招き、持続可能な社会の実現を遠ざけてしまいます!

 

どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

本日は新年度を迎える前に改めて考えたい、「フェアトレードは社内にも大切です!会社の習慣と時間の価値を見直しましょう!」という、「日本の悪習」にちょっとだけ踏み込んだSDGs的マインドセット改革の小話です(以前ここに書いた「『ホワイト職場ウォッシュ』をなくすのもSDGs的な活動ですよね、というお話。」のREMIX版ブログになります)。

大事なことなので、最初に書いておきますが、

どんな理由であれ、サービス残業は違法行為です

以下の内容は、あくまでも私個人の思うところですが、素人なりに法的および倫理的根拠に基づいて書いてはおります。

 


「時間」の価値

成果報酬型の労働契約の場合は異なることもありますが、一般的な労働契約(いわゆるサラリーマンやパートタイムなど)の場合、特定の会社(雇用主)と労働契約を交わし、労働者は「労働力(体力・技術・知識など)」と「時間」を会社に提供し、その見返りとして会社が労働者に賃金を支払っています

そして、「1日8時間、週40時間の法定労働時間」を超えた労働、つまり「時間外労働=残業・休日勤務」を求める場合は割増賃金(残業代・休日出勤手当)が支給されなくてはいけません(※)。

何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、案外「時間」を提供している / 提供してもらっている、という意識が低く、日本全体で「時間の価値」が軽んじられているような気がしています。それが「サービス残業」や「過剰サービス」がなくならない要因ではないかと。

すべての人の時間は例外なく、とても価値のあるものです。

安く(または無料で)商品やサービスが提供されるのは消費者としては嬉しいものですが、冒頭の新店舗準備の例のように、その裏で誰かの時間が安く(または無料で)提供されてしまっているかもしれない…ということは意識して行動(要求)したほうがいいと思います

本当にその時間を費やしてまでしてほしい(しなければいけない)サービスなのか…と。

そうしていかないと、「サービスの安売り」が暴走してしまい、遅かれ早かれ、立ちいかなくなってしまいます。

 

(※)法定労働時間を超えて労働させるためには通称「36協定」と呼ばれる労使間の残業に関する協定の締結が必要です。

 


サービス残業が起きる原因①誤った習慣・仕組み

「サービスの安売り」の代表的なものでありながら、案外誰の思考からも抜け落ちがちなのが「サービス残業」です。

サービス残業とは、「労働時間を超過しているにも関わらず、時間外勤務手当(残業代)を貰わずに労働する(支払わずに労働させる)」ことです残業代の支払いは法で定められているので、意図的にサービス残業をさせているような企業は完全に「ブラック企業=違法組織」となります。

悪質な企業は論外としても、次のようなことが社内で「当たり前」になっていませんか?

  • 名ばかり管理監督者が存在している(労基法上の管理監督者とは「経営者と同等の権限を持つ立場」と言えるほど厳格な条件がありますが、そこまでの権限のない「部長」「店長」等を「管理監督者」として残業代を支払っていない)
  • 労働時間を正しく管理(記録)していない(定時になったら一斉にタイムカードを打刻させる、みなし残業制だからといって正確な残業時間を把握していない、30分や1時間単位でしか勤務管理をしていない等)
  • 早出出勤が常態化、始業前に朝礼・清掃・会議を行っている(それらもすべて「労働」です)
  • 業務用のPCやスマホ、書類等を自宅に持ち帰ることを許可している(無許可の隠れ残業横行の原因になりやすい)
  • 準備・片付け・着替え・移動・待機の時間は労働時間に含めない(業務遂行上の必要性があるのであれば、それらもすべて「労働」です)
  • クレームや苦情対応で残業する場合には残業代は支払わない(クレーム対応も「労働」です)
  • テレワークは実態の把握が難しいから残業の管理もしない(テレワークであっても、会社は労働時間を管理する義務があり、残業にも適切に対応する必要があります)
  • 会社の飲み会や休日開催のイベント・奉仕活動・旅行等への参加を社員に強制している(強制、または表向き自主的なだけの暗黙の強制であれば「労働」と解釈されます)

上記文中の「労働」は「労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間」と言い換えることもできます。つまり、生産的な活動に限らず「雇用主の指揮命令下に置かれた状態」で何かをする(してもらう)ことは「労働」であり、勤務時間外であれば残業となる、ということです。

現実問題としては、あまり法律論ばかりになってしまうと労使双方とも窮屈になってしまうので、それがいいのか悪いのかはともかくとして、多少のことは受け流すほうが円滑にいくとは思います(サッカーでも、軽めな反則はあえて「流す」ということはよくあります)。

しかし、これらが「当たり前」の状態は、サービス残業が容認・放置されやすい、ということでもあります。社員が自発的にやっていることだから…と放置することは会社の監督責任問題にもなりかねません。

「ほかの会社もやっている」「これくらいは常識だ」「それが会社で働くということだ」「誰も文句言わずにやってくれる」…etc.なんて思わずに、新年度を迎えるタイミングで、「会社の習慣」と「時間の価値」を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

コンプライアンス経営(CSR)、SDGsの推進が求められる社会の中で、「サービス残業が放置・容認されている会社」がアリかナシかなんて、考えるまでもないですよね。

「悪習を次世代に残さない」ことも企業の社会的責任です!

  


サービス残業が起きる原因②誤った認識

一方で、労働者側が何らかの理由で残業代を求めない場合もあります。そのために、都合よく「サービス残業」なんて名称が定着してしまったのですが…

例えばこんなことを「当たり前」だと思っている人はいませんか?

  • 指示されていなくてもやらなくてはいけない仕事があるなら「自主的に」残業・早出はするものだ(本来残業は会社から指示されて行うものですし、必要な仕事であればちゃんと許可をもらいましょう)
  • 上司は会社のために部下からの残業申請を却下するものだ(人件費の節約、仕事が遅いから残業になっただけ等と理由をつけて認めない人もいますが、やらなくてはいけない仕事なら残業ですし、認めないのであれば残業させてはいけません)
  • 残業申請がメンドクサイ(自己申告制であるならばちゃんと申請しましょう)
  • 若いうち(入社間もないうち)はあまり戦力になれていないから残業代はもらってはいけない(必要な仕事であれば年齢・社歴・能力に関係なく残業代は支給されなくてはいけません)
  • 休日や憩時間でも仕事をしたほうがいい(熱心なのはいいことですが、ちゃんと休まないと体と精神を壊します)
  • 同僚が残業しているなら自分も残るものだ(付き合い残業・ダラダラ残業は誰のためにもなりません)
  • お客様や会社のためになることなら、なんだってしてあげるべきだ(とてもいい心構えですが、法や就業規則等の「ルール」を逸脱してはいけません)
  • 上記のようなことをしている人が職場にいても見て見ぬフリをしている(労働環境がどんどん悪くなってしまいます)

もちろん、会社で働く以上、権利だけでなく道義的責任を果たさなくてはいけませんが、「道義」を背負いすぎると、サービス残業をしてしまいやすくなります(ほどほどにしましょう)

どんな理由であれ、サービス残業は違法行為ですよ!

必要な残業を会社から要請された場合、労働者は正当な理由なく断ることはできませんが、それはあくまでも適切に残業代が支給される場合に限られます逆に言えば、残業代が支給されないということは、会社から「残業しなくていい」と指示された、ということです。本当に会社のために!と思うのであれば、勝手に残業するのではなく、ちゃんと会社の「指示」に従いましょう。

 

サービス残業の話が拗れやすいのは、「これはボランティア(善意)だから」といってサービス残業をしてしまう人もいるためです。

もちろん、「ボランティア」自体は素晴らしい精神であり行動ですが、それと「ボランティア精神でサービス残業をする」ことは別ものですし、一人が「ボランティア(善意)で」サービス残業をしてしまうと、そうすることが当たり前!という風土の醸成にも繋がりかねません

善意の行動であるため、なかなかやめさせることもできません…が、勝手な「サービス残業」は結果的に会社に迷惑をかけてしまう可能性もあります。会社のために!と思うのであれば、やはりちゃんと会社の「指示」に従うべきですし、同僚にそういう人がいたら、従うように指導(注意)するべきですよね。

因みに、「ボランティア=自ら志願して何かをすること」であって、「ボランティア=無償ではたらくこと」ではありませんし、「自ら志願」は他人に強制されるものでもありません。「自ら志願」しないと不利益を被ることが容易に推測できるような状況も強制と同じです。当然、自ら志願していない人を無償で働かせるのであれば、それは無償労働、つまり、違法行為になります。冒頭の新店舗準備だって、「自ら志願」していないのであれば、きちんと休日手当支給、または代休が付与されないといけません。

 

お人好しで世話好き、責任感も強い上に決められたことをきちんと守るのが日本人のいい面ですが、それが見事に裏目に出てしまっているのが「サービス残業」ではないかと。

「悪い流れを断ち切って次世代には継承させない」というのは社会の中で生きる私たちひとり一人の果たすべき責任です。

 


最近では学校でSDGs教育も行われていますが、それを教える先生の長時間労働は放置されている、というような「Wスタンダード」が世の中に蔓延している気がします。外側に向けて環境配慮活動やフェアトレードを推進している一方、内側ではサービス残業が当たり前なんて質の悪いジョークだとしても、まったく笑えません。

サービス残業を撲滅するための取組や行動変容も、もろジャストに「SDGs」ど真ん中です(キリッ)!

はたして、2030年までに、サービス残業なんてものは過去の黒歴史(社会の歴史的汚点)…となって世の中から抹消されているでしょうか??

誤解されるといけないので、念を押しておきますが、当社のことではなく、日本の社会全体についての個人的な意見です。

 

…そんなことを考えている(祈っている?)私の脳内では、CMなどでもおなじみの、特大アンセム(みんな合唱しちゃいますよね)、OASISの“whatever”が繰り返し流れております。

この曲といえば、歌い出しのメロや歌詞が特に印象的ですね。

もちろん、ここでの「free」は「自由」の意ですが、一部の人には「無料」と聞こえているのではないか、なんて思ってしまうほど、なんだか「無償のサービス」が当たり前になってしまっているような気がします。

因みに、この歌の冒頭部分は“その気になれば自分は何にだってなれるし、なんだってできる”といった感じのメッセージです。

その気になれば、世の中はもっと良くなるはず。

あの大震災から早くも10年が過ぎましたが、本当に「1秒後に自分の時間がまだ続いている保証なんてどこにもない」と痛感させられました。

あとどれだけ残されているのかもわからない、そんな貴重な「自分の時間」の使い方、つまり「生き方」を今一度見つめ直してもいいのではないでしょうか?

生きていることへの感謝とより良い人生のために、イマジン…

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