画像(イラスト)・映像をSNSやブログ、広報誌に使う時に気を付けること ~ちょっとした著作権の話③~

弊社では様々な媒体を使って情報発信をしております。投稿の内容や使用する画像には気を付けておりますが、情報発信手段も情報発信者も多いため、どうしても「これはありか、なしか」迷ってしまうケースもあります。

 

どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

本日は、ちょっとした著作権の話第3弾として、「他者著作物のイラストや画像を企業のブログ・SNS・広報誌などに使う場合に注意すること」について、実際に相談された事例も含めた “あるある” な例をまとめてみました(約10分で読めます)。毎回長尺になってしまいますが、興味のあるところだけでもお読みいただけると幸いです。

※ 第1弾「〇〇風とか模写とかの著作権」、第2弾「職務著作について」も併せてお読みいただけますと幸いです。

なお、今回はそもそも著作権とは?とか、著作権の例外が認められる場合とは?といった内容は割愛させていただきます(それらについては文化庁の「『著作権』について」をご参照ください)。

 


以下はすべて、当社内での判断になります。必ずしも法的に正確な解釈ではない内容が含まれているかもしれませんし、事例でOKとしたことが絶対に権利侵害にならないことを保証するものでもありません。

キャラクターのイラスト、キャラクターグッズの画像の使用

Q.①好きなキャラクターの公式イラスト(画像)を自社のSNSに投稿したい、②子どもが描いた某漫画キャラクターのイラストを広報誌の挿絵に使いたい、③愛用のキャラクターグッズを自社のブログで紹介するために画像を載せたい、どれも大丈夫だよね?

A.①キャラクターの公式イラストの無断使用はもちろんNG。②自身で模写・トレースしたキャラクターイラストも商用利用はNG。③キャラクターグッズの画像は一応OKだが、企業の公式サイト等に使用する場合は少し注意が必要。ただしいずれも「写り込み」または「引用」に該当するならOK

 

【キャラクターのイラストについて】

基本的に他者が作成したイラストや写真を無断で使うことは、「キャラクター」に限らず、また、有名無名を問わずすべてNGです(著作権法上の例外の場合を除く)。商用であるかないかに関わらず、インターネット上にイラストや写真を公開する行為は、著作権法上の例外の「私的利用」の場合には該当しません。

公式サイト等で公開されている公式なイラスト(画像)以外にも、次のようなイラスト(画像)の無断使用もやめましょう。

  • 著作者の許可なく無断でネット上に公開されているキャラクターイラスト(違法アップロード画像)の複製使用
  • ファンアートなど、作者とは異なる第三者が作成したキャラクターイラスト(二次的著作物)の複製使用
  • 使用者自身がキャラクターを模写(トレース)して描いたイラストの使用

他者著作物との類似性が容易に特定できる(模写・マネ・パクリ等と判断される)イラストは著作物とはみなされないでの、自分が描いたものであっても、自分の著作権は認められません(元の著作物の作者に著作権があるため例外に該当する場合を除き、無断では使用できません)

現実問題としては、例えば、「子どもがこんな絵を描いたよ!上手でしょ!」という感じでスタッフブログやSNSに家族(または自分)が描いたキャラクターイラストを公開する程度であれば、問題になることはないと思いますが、会社の広報誌や公式サイトなどに「挿絵」として使用するのは、色々と問題になり得るので避けた方がいいでしょう。

  

【キャラクターグッズの画像について】

キャラクターのデザインされた文具やTシャツ、フィギュア等のグッズに使用されているキャラクターにも、当然著作権はありますが、「グッズ」そのものについては購入者に「所有権」が発生します。そのため、自身が購入したグッズを紹介するだけの目的であって、次の条件に該当するような場合は基本的に画像の使用は問題はないようです。

  • 自身が購入し所有しているものであること
  • 自身が撮影した、グッズの外観等一般的に知り得る範囲の画像であること
  • 当該グッズを紹介することが目的であること
  • 当該グッズの利益を著しく害する使用ではないこと

企業名で公開しているSNS(企業公式アカウント)やブログへの使用であっても、単にそのグッズを従業員が個人的に愛用している、職場で重宝している、といった感じで紹介するためであれば、問題になることはほぼないと思われます。

一方で、自社の製品との比較・検証のため、または当該グッズへの批評(ダメだし)のため、等の場合は、著作権者や販売元からクレームがつく可能があります。

また、そのグッズの利益を害する可能性のある使用はNGです。例えば、ポストカードのみを正面から撮影した高画質画像を公開する(画像を印刷することでコピー商品が作れてしまう)、漫画の1話分全部を画像として投稿する(購入しなくても読めてしまう)、自社で製造しているグッズであるかのような誤解を招く紹介記事に使用する等は絶対にやめましょう。

  

なお、キャラクターや模写、グッズ等の画像でも、「写り込み」に該当する場合は使用しても大丈夫です。

  • 街中の様子を撮影した映像に街頭CM(BGMやキャラクターの映像・音声)が少し含まれていた
  • オフィスを撮影した画像の机上に小さくキャラクターを模写した(自分が描いていた)画用紙が写っていた
  • イベントの様子を撮影した映像に、キャラクターのプリントされたTシャツを着た人物が写っていた

というように、風景等の一部に著作物が含まれている場合を「写り込み」といい、それに該当する場合は著作物を無断で使用することにはならない、と判断されます(付随著作物の利用についての例外の適用、詳しくは「文化庁 いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について」をご参照ください)。

また、「引用」に該当する場合も、キャラクターやグッズ等の画像を使用することはできますが、そのためには「引用」の条件を “すべて” 満たしている必要があります(引用の条件については、「文化庁 著作物が自由に使える場合」をご参照ください)。例えば次のような使用は引用とは認められないのでご注意ください。

  • 本文(内容)とは無関係なキャラクターの画像を挿絵として使用する
  • キャラクターの画像に一言だけ自身の書いた文章を添えてSNSに投稿する(他者著作物がメイン)
  • 引用元(作者名や作品名、出版社や製造元名など)を明記していない、自身の著作物との明確な区分がない

 

有料施設内の著作物の画像の使用、有料施設内でのライブ配信の実施

Q.④某夢の国系テーマパーク内にいるキャラクターや建物を撮った写真を自社のSNSに投稿したい、⑤有料の美術館内に展示されている絵画を自分で撮影した画像を自社ブログや広報誌に使用したい、⑥テーマパーク内で楽しんでいる様子をネットを使ってライブ配信したい、入場料をちゃんと払っているんだから大丈夫だよね?

A.④有料施設内の建物やキャラクターだけを写した画像や映像の使用はNG、建物やキャラクターと自分(たち)を一緒に撮影した画像なら商用利用でなければほぼOK(黙認)。⑤美術作品は施設や所有者の指示に従う。⑥有料施設内やイベント会場でライブ配信するのは許可されない限りNG

 

【有料施設内の著作物について】

近年ではテーマパーク等の有料施設や美術館内、ライブ会場でも撮影やSNS等への投稿もOKというケースが増えています。施設や主催者から許可されている範囲内での撮影や使用(投稿)は問題ありません。

逆に、許可されていない行為は絶対にやめましょう。例えば、撮影はOKでもネット上への公開や印刷物への利用はNG、写真(静止画)はOKでも動画はNG、このエリアは撮影OKでもここから先のエリアは撮影NG、美術品やキャラクター単体の画像のネット上への投稿はNGなどの場合もあります。施設や主催者の注意事項(ルール)を事前によく確認して、許可された範囲内でのみ使用(公開)するようにしましょう。

特に、キャラクターや建物、美術作品単体の画像や映像は注意が必要です

基本的にはキャラクターや美術作品を単体で写した(または「主」として写した)画像は、先述の「①キャラクターの画像」の場合同様に無断で使用することはNGです。実際問題としては、旅行に行ってきました!的な記事へ数枚使用する程度であれば、よほどのことがない限り問題になることはないと思いますが、著作権者や所有者、イベント主催者の目に留まった場合に、画像削除要請が来る可能性はゼロではないので、あくまでも自己責任で……ということになります。

では、キャラクター単体ではなく、キャラクター等と自分(たち)を一緒に映した「記念写真」を使用するのはどうかというと……

旅行に行ってきました、という主旨のブログやSNSへの投稿に、自分たちが「主」となる構図で撮影された「記念写真」を使用する程度であれば、基本的には問題ないと思います。ただし、自分たちが「主」である、とういうところがポイントなので、キャラクターのほうが主になるような構図の写真はたとえ自分たちの姿も含まれていても、使用は控えた方がいいかもしれません(このあたりも、あくまでも自己責任で……)。

 

【有料施設やイベント会場内でのライブ配信について】

撮影OK、SNSやブログへの使用もOKという場合でも、ライブ配信行為は禁止されている場合が多いようなので、施設・イベント主催者の注意事項を確認し、ライブ配信行為が許可されていないにも関わらず、「社員旅行で〇〇に来ています!今からテーマパーク内での社員の様子をお届けします!」等といってテーマパーク内の様子を撮影し、配信してしまうような行為は絶対にやめましょう。

他にも、施設等の特定の従業員や来場者を撮影し投稿する行為(プライバシーの侵害)、アトラクションやショーをはじめから最後まで全部動画で公開してしまう行為(ネタばらし)等もやめましょう(企業のブログやSNSでそのような行為をするとは思えませんが)。

 

公共の場の建物や美術作品の画像、寺社仏閣や仏像等の画像の使用

Q.⑦ビルや教会等を含めた市街地の様子を撮影して自社紹介動画や広報誌の「イメージ映像・画像」として使用したい、⑧お寺や神社の外観や仏像、屏風等を撮影して自社ブログに載せたい、大丈夫だよね?

A.⑦市街地等公共の場の一般的な建物の外観を撮影した画像・映像の使用は商品パッケージ等商用でなければOK。⑧寺社仏閣や仏像等を撮影し、個人的に楽しむ程度ならOKな場合が多いが、SNSなどへの公開や紙媒体への使用のための撮影には事前の許可が必要な場合が多いので、寺社仏閣のHPなどで注意事項を確認しておきましょう。

 

【公共の場の建物や美術作品について】

街の中に建てられているビルや学校、教会等の建物の外観、公共の場に常設されている美術作品の外観を撮影して無料配布の広報誌やブログ、非商用の動画に使用することは基本的には問題ありません(著作権法第46条)。ただし、商用利用はNGなので、有料の会員制ブログに使用したり、撮影した画像・映像そのものを素材として販売するためにブログ等に公開する等は禁止です。

また、無料で誰でも利用できる公園や広場等に設置された彫像等の美術作品の場合、画像の利用目的によっては許諾が必要な場合もあります(例:観光案内目的で広報誌に画像を使用する場合は有償無償に関係なく許可が必要、等)。事前にインターネット等で確認するか、美術作品を設置している自治体等に問合せてみるとよいでしょう。

【寺社仏閣や仏像等について】

お寺や神社の外観、境内などの様子、仏像等の画像・映像は、個人的に楽しむ程度(写真などをとって自分や家族、友人などと閲覧するだけ)であれば、許可されたエリアなどで撮影することは可能ですが、「このお寺に行ってきました」的な紹介記事への使用を含めて、SNSや動画投稿サイトなどへの公開や、広報誌などへの使用については、「所有者」であるお寺や神社の許可する撮影・利用ルールを確認して、それに反しないようにしましょう

仏像や建築物などの多くは古くからあるものなので、著作権は切れている場合が多いので、写真やイラストを自由に使っても問題ないのでは?と思われるかもしれませんが、寺社仏閣に所有権があるので、基本的には許可された範囲内でしか使用できません。

また、「奈良の大仏」「五重塔」等有名な建築物や仏像等は、ネット上に画像・イラストが多数公開されていますが、それらを無断で複製して使用する、トレース(模写)して使用するのは、もちろんNGですのでやめましょう。

 

著名人の画像、有名な動物の画像(イラスト)の使用

Q.⑨自社イベントに参加された著名人の画像を自社ブログに載せたい、⑩動物園の人気動物を撮影した画像や自分で模写したイラストを広報誌に使いたい、大丈夫だよね?

A.⑨著名人の画像は公式な利用許可が得られる場合を除きパブリシティー権や肖像権の侵害にもなり得るのでNG。⑩動物の画像やイラストは自分で撮った(描いた)ものなら基本的にはOKだが施設の利用規約は遵守しましょう。

 

【著名人の画像について】

キャラクター同様、著名人の画像をブログやSNSに使用したい!と思う人は多いと思います。

著名人の画像については、パブリシティー権(顧客吸引力や経済的利益のために容姿を利用する権利)やプライバシー、肖像権の侵害になり得るため、許可された場合を除きNGです。もちろん、ネットやテレビ、雑誌等ですでに公開されている(カメラマン等が撮影した)著名人の映像や画像は、それを撮影したカメラマンや企業の著作権その他の権利侵害にもなるので、こちらもNGです。

自社で開催したイベントのゲストとして著名人が来て、その様子を自らが撮影した場合であっても、著名人側から正式に画像使用を許可されていなければ使用はNGとなります。使用許可がある場合であっても、公開前に著名人側のチェックを受けなければいけない場合もありますので、必ず事前に確認しておきましょう。

 

【有名な動物の画像について】

一方、「動物」の容姿にはパブリシティー権や肖像権、プライバシーの権利等は認められていません。そのため、自分で撮影した写真や模写したイラストであれば使用してもOKです。ただし、動物園や水族館等の施設が定める写真等の利用規約は必ず守りましょう(仏像や寺社の外観の場合同様、大量の画像使用はNG、動画はNG、商用利用に該当する場合はNG等の決まりがある場合もあります)。一般的に、「動物園に行ってきました!」といった内容のブログに数枚の画像を使用する程度であればまず問題はないと思います。

なお、著名な動物の容姿(特徴)や名前については、グッズ等の販売のために容姿(形状)や名称が商標登録されている場合があります。無断で自社商品に人気動物の画像(イラスト)や名前を使用することは、商標権の侵害や不正競争防止法違反に該当する可能性もあります

    


……長くなってきたので、本日はこの辺で終わろうと思います。他にも相談された事例はあるので、続きは次回のブログ当番の時に書こうと思います。

長々と、わかってる風に書いてしまいましたが、著作権その他の権利については、実際には裁判などで正式に判断されない限り、明確にOK / NGとは言えないケースも多いです。

誰でも簡単に画像や映像を撮影&編集&投稿できる、様々な画像をコピーして利用できる、という環境が「当たり前」になったため、あまり深く考えずに他者の著作物を使用して、自分には悪意はなくても、結果として著作者の権利を侵害してしまう……ということが増えています。

画像・映像の使用は、慎重に行いましょう(少なくとも、“勢い” とか “ノリ” で使用するのはやめましょう)。

ということで、本日の私の脳内DJのパワープッシュは、少し冷くドライな質感の音とメロディが、暑さにダウン気味の私をチルアウトさせてくれるスウェーデンのバンド、The Bear Quartetの “It Only Takes A Flashlight To Create The Monster”。

この曲のサビでは、降りしきる午後の雨の中で、“権利や名声の再利用” “ありがたい浪費” と皮肉を込めて歌われています(ここで歌われているのは著作物ではなく、かつて名声を得て、その後お落ちぶれてしまった人物のことですが)。

ただ浪費する&ちょっとしたネタにするためだけに他者の権利を侵害してしまわないように注意しつつ、かといって、萎縮しすぎて何も発信できなくなってしまわぬように、配慮しながら発信していけたらな、と思ったり思わなかったりしている真夏の午後でした。

 

参考:文化庁「著作権」(WEBサイト)、「ちょっと待って、そのコピペ!著作権侵害の罪と罰(林 幸助著、実業之日本社発行 2008年第1版)」、「はじめての著作権法(池村 聡著、日本経済新聞出版社発行2020年第3版)」、「図解わかる著作権(中川達也監修、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会編集、株式会社ワークスコーポレーション発行2010年第1版)」、「著作権トラブル解決のバイブル! クリエイターのための権利の本(著者:大串肇、北村崇、染谷昌利、木村剛大、古賀海人、齋木弘樹、角田綾佳 発行・販売:株式会社ボーンデジタル (2018年第1版)」、その他弁護士や有識者等のブログ記事等(順不同)

コメント

  1. […] 本日のブログは、前回(ちょっとした著作権の話③)に引き続き、ちょっとした著作権の話第4弾になります。 […]

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