仕事で作ったそれ、誰のもの? ちょっとした著作権の話② ~職務著作について~

仕事をしていると、毎日のように何らかの文章を書いたり、資料や作業マニュアルを作成したり、社内掲示物を作成したり……様々なものをつくる機会があると思います。

弊社の場合は、印刷会社なので、お客様からのご依頼で名刺やポスター、パンフレットのデザインをしたり、ロゴやイラストを作成したり、動画を作成したり……といったことも毎日行われています。

仕事とはいえ、自分が作成したものなのだから仕事以外のところでも好きなように使ってもいいよね?とか、逆に、同じ会社内とはいえ他の社員が作成したものを勝手に使ったらダメなのでは?なんて思ったことがある人もいるのではないでしょうか。

  

どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

本日は、印刷会社らしく?著作権についてのお話第二弾として、職務著作についてざっくりとまとめてみた、およそ6分で読める小話です(ちなみに第一弾は『「〇〇風」とか「模写」とか、ちょっとした著作権の話。』でした)。

※法律の専門家ではないので、それは違うよ!などありましたらご指摘いただけると幸いです。


 

結論からいうと、仕事として作成した著作物の多くは、たとえ作った本人であっても会社の許可なく、仕事上必要な範囲を超えて自由に使うことはできない反面、仕事として使うなら(会社が許可すれば)、他の社員が作ったものを本人の許可なしで使っても問題ありません。

その理由を説明する前に…大前提として、著作権( 作った 人の権利)が発生するためには、作ったものが「著作物」である必要があります。

自分が 作ったものが著作物なのかどうか……案外わからないかもしれませんが、著作権法においては、次の要件を満たすものが「著作物」として定義されています。

  • 思想や感情を(単なる統計データやフォーマットは該当しない)、
  • 創作的に(他人の模倣、複製などは該当しない)、
  • 表現した(頭の中だけにあるアイデアは該当しない)、
  • 文芸・学術・美術または音楽に属するもの(工業製品は該当しない)

「文芸・学術・美術または音楽に属するもの」というと、一部の「芸術性のある作品」だけが著作物だと勘違いしそうですがそんなことはありません。

一般的な仕事の中で作られるものの中にも、例えば、「ブログや広報誌に記載する文章(言語の著作物)」「会社動画用に作成したBGMや社歌(音楽の著作物)」「社内報に使う挿絵や広報誌に載せる漫画(美術の著作物)」「機械の操作マニュアル動画(映画の著作物)」「SNSに投稿する写真(写真の著作物)」「自社オリジナルダンスの振り付け(舞踊、無言劇の著作物)」「独自に作成した会社周辺地図やおすすめの飲食店をまとめたMAP(地図、図形の著作物)」……などなど様々なものが著作物になります(詳しくは文化庁のWEBサイトに記載されている例をご覧ください)。

基本的には、それらを作った本人に著作権(権利)が発生し、他の人は法律で認められた範囲を除き、自由に使うことはできません。


 

では、作った本人に著作権が発生するはずなのに、仕事として作成した著作物の多くは作った本人であっても仕事上必要な範囲を超えて自由に使えないのはなぜかというと……

著作権法により、職務著作が認められているからです。

職務著作とは、「仕事上作成する著作物について、一定の条件を満たす場合は作った本人(個人)ではなく、法人等使用者(会社以外の社団やPTA等の団体も含む)を著作権者とする」という制度で、著作権法 第15条に定められています。

職務著作が認められるためには、次の要件を「すべて」満たしている必要があります。

  • 法人等(企業や団体)の発意に基づくこと(雇用主や組織長またはその代理からの指示や許可によって作成されること)
  • 法人等の業務に従事する者が職務上作成するもの(組織に所属する者が仕事として作成すること)
  • その法人等の著作名義で公表するもの(企業や団体名義で公表する、公表しない場合でも、もし公表するなら会社や団体名義で公表することになるものも含む)
  • 契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと(就業規則などに「著作権は従業員に帰属する」などと特別に規定されていない限り、企業や団体の職務著作となる)

「発意に基づく」というと、会社からの「これを作りなさい!」という直接的な指示・命令をイメージしがちですが、具体的な指示なしに社員が自発的につくったものでも、または、最初のアイデアは社員から出たものであっても、最終的に会社(上司や責任者)が決定(許可)したのであれば、「法人等の発意に基づく」とされます。一方で、社員同士で直接(個人的に)依頼され、会社を通さずに作られた著作物の場合は「法人等の発意に基づく」とはいえず、職務著作が認められない場合があるようです。

「法人等の業務に従事する者」は、その会社の従業員や団体に所属する人が該当します。また、派遣社員やフリーランスのデザイナー・カメラマン等、その会社と雇用契約をしていない人でも、会社の指揮命令下で職務を遂行している場合は「従事する者」に該当するようです。

「職務上作成する」については、作成する場所や時間は関係ないので、勤務時間外に自宅で作成したものであっても、仕事上の必要性があって作成したものであれば該当するとされます。逆に勤務時間内であっても、社員個人が職務とは関係のない著作物を作成した場合は該当しません。

「法人等の著作名義で公表するもの」は、例えばデザインコンペ等に制作者(デザイナーなどの個人)名義で応募し、制作者名で公表される場合は職務著作とはならない、ということです。

また、スタッフブログや広報誌の執筆、あるいはセミナーや研修会で社員が講師を務める場合等、会社(団体)名と制作者(個人)名が併記されて公表される場合も、職務著作が認められない可能性があります(併記されている場合は、責任や権利の所在が会社にあることが明記されていれば職務著作として認められるようです)

※ちなみに本ブログの場合、「このブログについて」ページに責任の所在を明記しております。 

なお、職務著作は作った本人がその会社を退職したとしても影響されません。会社が必要とするのであれば本人の退職後でも社内で(仕事で)自由に使うことができます。一方、作った本人は退職後にその著作物を会社の許可なく自由に使うことはできない、ということになります。

 

このように、お客様からの依頼で作成した印刷物や動画などはもちろん、仕事上の必要があって作った社内掲示物やチラシ、文章などの多くが職務著作となり、会社(団体)が著作権者となり得ます。

※お客様からの依頼で作成した著作物については、お客様との間に著作権譲渡契約が締結されていれば、職務著作であっても、会社が自由に使うことはできません。 

職務著作要件を満たしているかどうかは、様々な条件を総合的に判断されるので、素人レベルでは絶対にこれは職務著作だ!いや、これは絶対に違う!とは簡単には言えませんが、仕事として作った著作物は、たとえ自分が作ったとしても、多くの場合は会社(団体)が著作権を有することになる、と覚えておきましょう。

一方で、職務著作が認めらる要件を「すべて」満たしていない場合は、たとえ仕事として作成した著作物であっても、会社(団体)が著作者とはならず、作った本人が著作者となる、とういう事でもありますので、なんでもかんでも職務著作だ!会社のものだ!とはならないことも忘れないよにしましょう。


 

自分が頑張って作ったものの権利が会社のものになる……というと、なんとなく損をしている気分になるかもですが、職務著作がなかったとしたら、それはそれで面倒なことになるかもしれません。

例えば、Aさんが以前作ったプレゼン資料の一部を改変して新しいプレゼン資料を作ろうとしたら、Aさんから許可するかわりに使用料を請求された …… とか、Bさんが作った自社オリジナルキャラクターのポーズや色を変えてバリエーションを持たせたいが、Bさんがそれを認めないので自社キャラクターなのに自由に使えない……などなど。

そのような事態を回避して、事業活動を円滑に進めるために職務著作が認められている、ということです。

まぁ、そもそも仕事上の必要があって作るものなので、そういうものでしょ、と思っている人も多いかと思いますが、職務著作は会社(団体)が都合よく決めているのではなく、条件を満たす限り法律で認められている、ということです。

こんな感じですが、なんとなく職務著作についてお分かりいただけたでしょうか?(私もこれを書きながら自分の頭の中を整理しております)

 

……そんな私の脳内では、バブル・ バブル ・ガム・ガムな70’s(正確には1968年リリース)ソフトロックの名曲、salt water taffyの “Finders Keepers” の印象的なサビのフレーズがリフレインしております。一般的にはB級扱いだったり、隠れ名曲扱いをされがちですが、とんでもなく正統派の名曲なので、ぜひ一度聴いてみてください(YouTubeに公式動画がないのでリンクは貼っておりませんが)。

ちなみにサビで連呼される “Finders Keepers” と “losers weepers” はセットで使われる表現で、「拾った人は得をするが、無くした人は泣きをみる」的なことわざ?慣用句?です。

 

権利を有するということは責任を持つということでもあります

 

ということで、 “Finders Keepers, losers weepers”なんて口ずさみながら……

 

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