「〇〇風」とか「模写」とか、ちょっとした著作権の話。

数年前に某メジャー系アーティストのCDのジャケット用に描かれた某イラストレーターのイラストが、別の某超有名漫画家の描くイラストにそっくりだ、というので話題(問題)になり、結局、ジャケットが差替えられた、ということがありました(某ばかり)。

ちょっと検索すれば記事などが見つかると思いますが、まぁ、確かに似ています(ご本人も○○贋作師と一時期名乗っていたほどなので、意図的でもありそうです)。

それなりに人気のあるイラストレーターなのですが、評判は真っ二つに割れています(私個人的にはこのイラストレーターの作品が好きで、グッズやTシャツも持っていたりします)。

 

どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

本日は、印刷物制作会社らしく?著作権についてのちょっとした小話ですが、著作権関係は複雑&広範囲なので、「無断使用」と「模写」などに限定した小話です。

また、シャドーサイドをあれこれ担当してはおりますが、法律関係の専門家ではないので、必ずしも正確な解釈ではないかもしれないことを予めご了承ください(間違いなどありましたらご指摘いただけますと幸いです)。


 

盗作、いわゆる「パクリ」や無断使用がいけないことだという認識は、著作権にあまり関心のない人でも持っていると思います。

あらゆる創作物には著作権(&その他の関連する知的財産権)があり、誰かが「勝手に」マネしたり、使用したりしてはいけないことになっています。

ましてや、他人の著作物を「勝手に」利用してお金を儲けようなんて言語道断です。

なぜなら、「作者(著作者)の、正当な利益を妨害(または略奪する)行為だから」です。

でも、ネットを開けば、誰かの作品(特にイラストや写真などの画像類)が無断で使用されまくっていますし、メ〇カリなどの個人売買でも盗作や偽ブランド品は無数に出品されています。

みんなやっていることだから、問題ない……なんてことはありません。

むしろ、知ってか知らずか、著作権者の権利を侵害してしまっている人がかなり沢山いる、ということです。

 

では、何をしたらNGで、どこまではOKなのか……

ひと言で言ってしまえば、法律で認められている範囲内での使用ならOK、それ以外はNGとなります。

法的には、「個人で楽しむ範囲(私的利用)」や「教育の現場で必要な範囲」など「例外的な」利用が認められています。その範囲内であれば、著作権者に無断で使用しても問題にはなりません(著作権については、文化庁WEBサイトをご参照ください)。

仕事・プライベート問わず、様々な著作物を利用して生きている(仕事をしている)以上、自分には関係ない、なんて思わずに、著作者の権利を尊重する気持ちを忘れないようにしましょうね。

 

……と、これで終わってしまっては、一般論だけのブログで終わってしまうので、日常や仕事上でよくある著作権のこれっていいの?あるあるの例を少しまとめてみました。

何かのご参考にしていただけたら幸いです(いずれも著作権者に「無断で」行う場合の話です)。


Q.個人的なブログに好きな漫画の一部の画像を投稿する、またはSNSの自分のアカウントのアイコンに好きな芸能人やキャラクターの画像を設定することは「私的利用(個人で楽しむ範囲)」だからいいよね?

答えは…NG。インターネット上に公開する行為は「私的利用」にはなりません。ブログもSNSも不特定多数が閲覧できてしまうし、ブログやSNSから画像をコピー(複製)することもできてしまうため、複製権の侵害や公衆送信権の侵害になってしまいます。芸能人の写真などの場合、肖像権の侵害にもなり得ます。

現実問題としては、大目に見てもらっている、というか、よほど悪質であったり、お金儲けが絡んでいなければ訴えられるようなことはないと思いますが、基本的にはNGだということを忘れないようにしましょう。

因みに、自分が使っているスマホやPCのホーム画面にキャラクターの画像や漫画の一部を設定するだけなら、それは「私的利用」の範囲内なので問題にはなりません。 


Q.好きなキャラクターのイラストをトレース(画像の上からなぞり書き)、または模写したイラストを使ってチラシを作成して不特定多数に配布しても、自分で描いたものなのだからいいよね?

答えは…NG。他者の著作物との類似性が容易に確認できるようなものは、たとえ自分が作成したものであっても、著作性を認められません。自分の著作性が認められないだけでなく、原著作物に対する複製権や翻案権の侵害になる可能性があります。キャラクターイラスト以外でも、例えば、ネットで見つけた自分以外の人が撮影した風景や人物の写真を模写(トレース)して作ったイラストも自分の「オリジナル」とはならず(二次的著作物になります)、原著作者に無断でチラシなどに利用すると著作権の侵害になる可能性があります(グッズなどを作って販売するのも同様です)。

もちろん、描いたイラストを自宅の壁に飾ったり、数名の友人に無償で配布する程度であれば問題にはなりません。


Q.有名ブランドのロゴに似せて(〇〇風)、自社のロゴを作成して名刺やHPに使ってもいいよね?または某国民的キャラクター風の自社オリジナルキャラクターを作成して会社案内や動画に登場させてもいいよね?

答えは…NG。トレースや模写同様、他者の著作物との類似性が容易に確認できるようなものは、たとえ自分が作成したものであっても、著作性を認められません。なお、具体的にどこのブランドのロゴに似ているか・どのキャラクターに類似しているか、を特定できない場合(はっきりとコレ!とは断定できない場合)は、翻案権の侵害になる可能性がある一方で、法的には許容される可能性もあります。ただし、いずれにしても世間一般からは「パクリ」として非難され、社会的信用や名声を落してしまうことにはなりそうです。


Q.大好きな漫画の登場人物(容姿や設定)を使ったオリジナルストーリーの漫画を自費出版して手売り(少部数販売)してもいいよね?だって出版社を通してないし、ストーリー自体は自分のオリジナルだから。

答えは…厳密にはNGだけど、現実にはほぼOK。この場合、自分が作った漫画は「二次的著作物」になります(漫画や小説を原作として映画やドラマを作成するのと同じ)。二次的著作物の「元」になる著作物(原作)が著作権で保護されている以上、許可なく二次的著作物を作成できません。また、キャラクターの外見や性格などが原作と異なる場合は同一性保持権や翻案権の侵害にもなります。

とはいえ、いわゆる「同人誌」文化が定着している日本においては、原作者(著作権者)側が同人誌の作成や販売を黙認していることが多く、法的にはOUTだが、よほどのモノでない限り取り締まられることもほぼない、という矛盾した状態だといえます。

なお、「印刷物」としてコミックマーケットなどで手売りすることは黙認傾向にありますが、ネット上での公開やデジタルデータの配布行為、原作のトレース(複製)使用などは厳しく取り締まられているようです。


Q.手作りでマスクやエコバッグを作ってフリマで売りたい。どうせならみんなに使って欲しいから、某ブランドのロゴや某人気キャラクターをプリントして作って販売しても、自分で作ったんだからいいよね?

答えは…NG。複製権などの著作権以外にも商標権などにの違反にもなります。その他、既製品を模倣したものや、本やネットに掲載されているレシピ(作り方)をそのまま真似て作ったもの、市販の手作りキットを使って作成したものなどを販売することも利用規約で許可されていなければ、著作権その他の権利の侵害になります。レシピやキットの利用規約をしっかり読んで、規約に反しないようにしましょう。

もちろん、作った作品を自分だけ使う、またはごく少数の友人にプレゼントする、というのは著作権違反にはなりません。

なお、マスクやバッグなどの手作り作品は美術品ではなく、実用品として扱われるため、著作権は認められないケースが多いようです(手作りのためのレシピやレシピをまとめたブログ・本などは著作権が認められます。ここを混同しないようにしましょう)。


Q.顧客に提出する企画書に有名人の写真やイメージの似た別の商品の画像(ネットから拾った)を使っても、不特定多数に配布するわけではないからいいよね?

答えは…NG。仕事で使用している時点で少人数への配布であっても、「私的利用」に該当しません。複製権の侵害になる可能性があります。ただし、当該企画に正式に採用が決まっているキャラクターや商品の画像を使うのであれば、限定された関係者に配布する企画書への使用は許容されると解釈されてはいます。

また、イメージとして「フリー」「無料」の画像やイラスト素材を使用することも多いですが、フリー(無料)であっても、利用規約で認められた使用方法以外は禁止されます。安易に使用せずに、きちんと規約を読んで違反しない範囲で使用しましょう。


すでにかなりの長文になってしまったので、本日はこの辺で終わりにします。

故意ではなくても、ついうっかりやってしまったり、これくらいは問題ないでしょ?と思ってしまったりしてしまいがちですが、健全な文化の発展のためには、それなりの「ルール」があり、それを守らなくてはいけない、ということは常に意識するようにしましょう!

コメント

タイトルとURLをコピーしました