不定期過ぎて、前回から約1年半ぶりになりますが、ちょっとした著作権についての小話第5弾!
今回は、インターネット上のコンテンツ(動画、地図、SNSの投稿など)の印刷物やブログ、SNSなどへの引用・利用について、素人なりにまとめてみました、という小話です。
以下の内容は、著作権関連の書籍やインターネット記事などを参考にしておりますが、法的に正確ではない内容が含まれているかもしれません。また、以下の事例でOKとした方法が絶対に権利侵害にならないことを保証するものでもありません。ご了承ください。
あ、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。
長いですが、目次からご興味ある項目だけでもお読みいただけますと幸いです。また、これまでの著作権関係の投稿も、当サイト内で「著作権」と検索すると表示されると思います。稚拙な文章&内容ではありますが、もしよろしければ併せてお読みください。
そもそも「著作物」とは?「著作権の侵害」とは?
本題に入る前に、そもそもの「著作権」について、簡単にまとめてみます。
「著作権」とは、著作物※1の創作者=著作権者に与えられる、「自身の著作物が守られることを保証される権利」です。
この権利があるので、著作権者以外の人が勝手に著作物を利用したり、改変したりすると、著作権の侵害となり、著作権者から利用差止や損害賠償を請求される場合があります。
このことが著作権や他者著作物の利用について考える際の大前提です。
※1 一般的に流通している「書籍や印刷物(新聞、雑誌、漫画、チラシ、パンフレットなど)」「楽曲や動画」「写真やイラスト(ネット上に公開されているものも含む)」「ライブや演劇などの実演」などはほぼすべて著作物です。一方、「法令の条文」「単なる事実やデータのみ」「アイデアや作風のみ」などは著作物とはされません。また、「タイトルや見出しなどのごく短い文字列」も多くの場合で著作物とはみなされません。
とはいえ、著作物を許可なく利用できないことが、かえって著作権者にとって不利益となる場合もあるため、著作権法には権利の制限(例外)が規定されており、例外が認められる利用に限り、誰でも著作権者の許可なく著作物を利用できることになっています。
利用が認められる主な場合を超ざっくりまとめると、以下のようになります(詳細は文化庁WEBサイトなどをご参照ください)。
- 個人や家庭内などでの「私的な利用」のための複製(SNSなどネット上への投稿は、たとえ個人アカウントであっても私的利用とは認められないのでNG)
- 学校教育での利用(授業・試験・学芸会など非営利上演での利用はOK。企業の社員研修は教育での利用とは認められない)
- 情報処理や解析のための収集・複製(AIに学習させるため、ネット検索のためなどの利用はOK)
- 引用※2として利用する場合
※2 引用…自身の作成した文章や動画などで、自身の考えや意見、批評などの説明・証明・補足などの目的で、他者の文章、写真、映像などの著作物を用いること。
なお、引用としての利用が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
・公表された著作物の利用であること |
・公正な慣行に合致すること |
・引用の目的上正当な範囲内で行われること |
・自身の著作部分と明確に区別されていること |
・引用する著作物を改変していないこと |
・自身の著作物などが「主」であり、引用が「従」であること |
・引用元著作物の出典(作者名や作品名など)が明記されていること |
適切な利用として認められるには?
ここからようやく本題です。
上記の著作権法上の例外や引用要件などを踏まえて、次のように利用したい場合、どうすればいいのかをまとめてみました(ご利用に際しては、ご自身で利用規約などもご確認いただくことを強く推奨いたします)。
【YouTube動画の利用】
1. 印刷物に自身の論説の補足として、第三者のYouTube動画のスクショ画像を利用したい。
→ 引用の要件をすべて満たしていれば利用可能です。
印刷物には動画そのものを添付することはできないため、引用の要件を満たしていれば数枚程度のスクショ画像の利用は認められると考えられます。
ただし、大量のスクショ画像を利用して動画の内容がある程度わかってしまう場合や、スクショ画像を加工して利用する、引用上不要な場面の画像まで利用する、などはNGです。
2. 自社が紹介された番組の動画がYouTubeで公開されたので、ブログでその動画を紹介したい。
→ スクショ画像ではなく動画のリンクを共有するか、「埋め込み」で表示させます。
YouTube動画をブログ、SNS、WEBサイトなどに利用(引用、紹介)したい場合は、当該動画のURL(リンク)を共有するか、YouTubeを「埋め込み※3」で表示させます。
YouTubeに公開されている動画を複製することは禁止されていますが、この「埋め込み」はYouTubeが認める正式な機能であり、動画を複製するわけではないので利用OKとなります。
とはいえ、YouTubeには著作権を侵害している(可能性のある)動画も多数あるため、公式チャンネルで公開されている動画など信頼できるもの以外は利用しないほうがいいかもしれません。
また、大量の動画をまとめて1つの記事やサイト内で紹介する場合や、記事に何も書かずに動画だけ埋め込む場合はNGとされる可能性があります。
※3 「埋め込み」手順……XやFacebookなど主要なSNSであれば、動画の「共有」を開いて表示されるURLをコピーして投稿に貼り付けます。ブログやWEBサイトの場合は、「共有」の中の「埋め込む」を開いて表示されるコードをコピーしてテキストエディタに貼り付けるか、ブログなどの埋め込み対応機能にURLを入力します。↓のように表示されていればOKです。
3. 第三者が作成しYouTubeに公開されている複数の動画を、自分で再編集するために複製し、作った動画を自分のYouTubeチャンネルに投稿したい。
→ できません。YouTubeに公開されている動画の無断複製も再編集も禁止です。
投稿者自身のチャンネル内で管理する、自身で作成・投稿した動画を除き、YouTubeに公開されている動画を複製することや、修正・改変することは利用規約で禁止されています。第三者が作成した動画を勝手に再編集して投稿することは著作権の侵害にもなります。
明らかに第三者のコンテンツを(勝手に)再編集したような動画が公開されていることもあるため、自分がやっても問題ないでしょ?と思ってしまうかもしれませんが、避けた方がいいでしょう(何らかの理由で削除されていないだけだと思われます)。
【Googleマップの利用】
地図も「図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物」であり、著作権法で認められる利用以外では無断で利用することはできません。また、地図提供者の利用規約・ガイドラインに従う必要もあります。
Googleの地図系サービス(マップ、ストリートビュー、アース)については、利用規約で認められる利用であればGoogleへの申告は不要である一方、規約でNGとされる利用については一切例外は認められません(Google以外の地図の利用については、各サービス提供者・出版元の規約をご確認ください)。
4. 自店のチラシにお店の所在地を表示したGoogleマップのスクショ画像を利用したい。
→ Googleマップのスクショ画像のチラシへの利用できません。マップへのリンク(2次元バーコードなど)を掲載するか、自ら地図を作成して掲載しましょう。
チラシやショップカード、ガイドブックなどの印刷物にGoogleマップのスクショ画像を利用することはできません。
一方で、Googleマップへのリンク(2次元バーコードなど)を掲載して、利用者にスマホなどで読み込んで表示してもらうことは可能です(実際の利用を考えたらリンクのほうが便利ともいえます)。
なお、新聞などの定期刊行物内での画像の利用、引用としての数枚程度の画像の利用、非商用の印刷物への利用、プレゼン資料や企画書への利用であれば、権利帰属の明示(Googleのロゴマークなどを正しく表示する)などを条件にマップの印刷機能を使って印刷したマップ画像の利用は認めらます※4(マップではなく、ストリートビューの画像はいずれの場合も利用できません)。
もちろん、個人的に旅行などで利用するためなら画像を利用しても、なんら問題ありません。
※4 2024年4月時点での利用規約を読むと、印刷機能を用いて印刷したものであれば、5,000部以内の広告や名刺に補助的に(小さく)所在地の地図画像を利用する程度なら許可されているような気もしますが、はっきりしたことはわかりません…… どうしてもチラシにマップ画像を利用したい場合は、専門家にご相談ください。
5. 自身のブログに自社所在地をGoogleマップで表示させたい。
→ ブログなどネット上のコンテンツに利用する場合は「埋め込み」で表示します(スクショ画像は使わない)。
インターネットやメールなどを使って誰かと地図情報を共有する場合も、スクショ含めた画像を利用したマップの共有は禁止されています。
ブログやWEBサイトで不特定多数との間でマップを共有する場合は、Googleマップの機能である「埋め込み※5」を使って共有します。イベントなどの参加者などとの間で、メールやLINE、SNSのメッセージ機能などでマップを共有する場合は「URLを共有」しましょう。
目的地までの経路やビジネス情報などの共有も可能です。
※5 「埋め込み」手順……共有したい場所が表示された状態で「共有」を開き、その中の「地図を埋め込む」を選択して表示される<inframe>からはじまるコードをコピーしてブログなどの表示させたい場所に貼り付ける(テキストエディタの使用、またはブログなどが用意している機能を利用)。↓のように表示されていれば「埋め込み」になっています(当社の所在地をgoogleマップで表示しています)。
【その他のWEBコンテンツの利用】
6. LINEやメールでの個人的なやりとりをスクショして印刷物やブログに載せたい。
→ 相手の許可があればOKですが、著作権への配慮も必要です。
LINE(チャット)やメール、SNSのダイレクトメッセージ、手紙など、個人間でのやりとりを、送り主の許可なくネット上に公開したり印刷物に掲載したりすることは、プライバシーの侵害行為なので相手が許可しない限りNGです。
また、引用のつもりであっても、個人的なメールや手紙などは「公表された著作物」ではないので、著作権上の引用には該当しません。
さらに、スタンプなどはスタンプ制作者の著作物ですし、LINEのロゴやチャット画面の背景などはLINEの著作物なので、それぞれの利用規約に従う必要もあります。
仮にハラスメントや事件の証拠になり得るようなものであってもブログやSNSなどに公開するのは避けましょう(スクショ画像を証拠として保存し、弁護士などに開示する分には問題ありません)。
7. Xでの第三者の投稿を自身のブログで紹介したい。
→ Xの投稿のURLを共有するか、「埋め込み」で表示させる場合はOK。投稿のスクショ画像の利用は原則NG。
X(旧Twitter)以外でも、Facebook、Instagramなども同様ですが、投稿を別のSNSで引用・共有する場合、投稿の「共有」機能で表示されるURLをコピーするか、HTMLをコピーしてブログなどに貼り付けます(YouTube動画やGoogleマップのリンク共有・埋め込み表示と同じです)。
X内で他者の投稿を共有・引用する場合は原則「引用リポスト」を使います。
ただし、投稿内容が改変・削除されてしまうこともあるので、引用の要件を満たす場合に限り「公正な慣行」としてスクショ画像の利用が認められる場合もあるようです。
8. 他者のWEBサイトを自身のブログで紹介したい。
→ 原則URL(リンク)共有します。スクショ画像はランディングページの一部のみなどであればOKとされる場合があります。
SNSではなく、WEBサイトを紹介(共有)または引用したい場合は、URL(リンク)を貼り付けて共有します。
印刷物の場合は検索で一番最初に表示されるページのスクショ画像であれば引用の要件を満たせばOKとされます(ブログ等の場合もランディングページであればスクショ可と解釈され得ます)。
なお、SNSや企業の「ロゴ」「アイコン」も著作物であり、引用・掲載する場合は必ず利用規約やガイドラインに違反しないようご注意ください。例えば、以下のような利用は著作権の侵害になり得ます。
- SNSや企業が公式に提供しているロゴデータ以外を使用すること(旧ロゴの使用もNG)
- ロゴの色や形状を変更すること
- 最小サイズや余白の最小サイズを守らないこと
- 独自の装飾や文字を加えること
という感じで大雑把な内容ではありますが、何かの参考にしていただけましたら幸いです。
ただ、規約や法令は改正されることがありますので、利用前に最新の利用規約を確認していただきますよう、お願いいたします。
そんなこんなな私の脳内DJの本日のパワープッシュはもうすぐ4月ということで、The Jesus and Marry Chainの初期名曲「April Sky」です!
何となく歌詞全体がこのブログで言わんとしていることに通底している気がするのですが、上手く言語化できないので歌詞の引用などは差し控えます。気怠さ全開のボーカルとビーチボーイズライクなメロディ、ノイジーなギターの絶妙なバランスが最高ですので、YouTubeや各種配信などで聴いてみてください。
本日はこの辺で……