はじめての zine 作りガイド ~印刷会社が教える9つのコツ~

どうも、マルワの裏方あれこれ担当です。

今年最後のブログは少し趣向を変えて、当社でも支援サービスをはじめた「zine制作」について。

はじめて zine を作る方でも安心して制作を進められるちょっとしたコツや注意点を、印刷会社の立場からまとめてみました、という内容になります(そう、一応マルワは印刷会社なんですよ)。

 


zine(ジン)は、個人や少人数のグループが自主的に制作・発行する小冊子のことです。写真集、イラスト集、小説、エッセイ、日記など、自由なテーマで自分の世界観を表現でき、商業出版のような制約がなく、発行部数や売上も気にせず作れるのが魅力です。

近年は「デジタル疲れ」もあり、SNSやネットではできない表現方法として再注目されていて、自分でも作ってみたいと思っている人も多いかと思います。

ただ、あまりにも自由度が高いので、逆にどうやって作ればいいのかわからない、という人もいるかもしれません。また、印刷や製本を発注する場合、トラブルを防ぐためにはデータ準備に少しコツが必要だったりもします。

そこで、おおまかなzine制作の流れとコツ&注意点を以下にまとめてみました。参考にしていただければ幸いです。

 


1. テーマを決めよう

zineの最大の魅力は「自由さ」。まずは「自分の好きなこと」や「今感じていること」から始めるのがおすすめです。マニアックなテーマでもOK。自分らしさがzineの魅力になります。

たとえば、こんなテーマなどがあります。

  • 好きなものを掘り下げる(コンビニスイーツ、インディーズバンド、美術館 など)
  • 日常や特定の時間・場所を切り取る(育児日記、ペットとの暮らし、地元の純喫茶巡り など)
  • 作品集(写真集、イラスト集、詩集 など)
  • 専門知識や技術の紹介(料理、プログラミング、楽器演奏 など)

 


2. 完成形を決めよう

テーマが決まったら、どんな形で表現するかを考えます。サイズや綴じ方でも印象が大きく変わるので、印刷コストや読みやすさも考慮しつつ理想の形を考えましょう。

以下について、ざっくりでいいので決めておくと制作がスムーズになります。

  • 紙面構成(レイアウト)とページ数
  • サイズ
  • 製本方法

紙面構成

「表紙にタイトルと写真を配置して、その裏面は白ページ、本文の最初に目次があて、その次のページから本文が始まる」といった構成を決めましょう。ページ数はこの段階ではまだ確定しなくてもいいですが、おおよそのボリュームは決めておくとよいでしょう。

サイズ

定番サイズには次のようなものがあります。

A5(148×210mm)読みやすく持ち歩きやすい、zineでは定番サイズ
A4(210×297mm)雑誌サイズで家庭用プリンターでも印刷しやすい
B5(182×257mm)大学ノートくらいのサイズ
B6(128×182mm)単行本くらいのサイズで親しみやすい

そのほか、正方形、新聞サイズ、A3やB4など大きめなサイズなどもあります。

内容や配布方法に合わせてサイズを選びましょう。イメージが湧かない場合は、お気に入りの本やzineと同じサイズにしてみるのもアリです。

※大きなサイズや不定形サイズ、豆本などの小さなサイズでの印刷を依頼する場合、印刷会社に事前にご相談ください。

製本方法

代表的な綴じ方の特徴と注意点を知っておきましょう。

豆本や特殊製本の場合、加工や手作業が多くなるため一般的な製本より価格が高くなることがあります。事前見積をおすすめします。

ページ物の場合、どちら向きに綴じるのかも予め決めて作業するようにしましょう。

右綴じ縦書きの日本語向き
左綴じ横書きや外国語向き(写真集・イラスト集なども左綴じが多い)
天綴じカレンダーやプレゼン資料、紙芝居風絵本など特殊な綴じ方で表現したい場合

 


3. 素材をそろえよう:著作権や肖像権は必ず確認!

紙面構成やサイズが決まったら、必要な素材を集めましょう。

●文字原稿

下書き、取材記事、動画からの文字起こしなど。原稿なしで直接編集アプリに入力することも可能ですが、原稿データからコピペするほうが効率的です。

原稿データはWordやメモファイルでOKです。手書きした文章をそのまま印刷したい場合は、手書き原稿をスキャンして画像化(デジタル化)してレイアウトソフトに配置することを前提に、予め原寸で書いておくとよいでしょう。

●写真、イラスト

紙面を飾る写真・イラストは、用途に応じて次のようなデータを準備しておくとよいです。

カラー印刷RGBまたはCMYK(印刷会社に依頼する場合はCMYK推奨)使用実寸で300から350dpi(dpi=解像度)のデータ
モノクロ印刷・特色1色印刷単色でも濃淡を表現:グレー
くっきりとした線画:モノクロ2諧調
グレー:使用実寸で300(イラストや写真)から600(細かい文字など)dpiくらいのデータ
モノクロ2諧調:使用実寸で800から1200dpiくらいのデータ

スマホやデジカメで撮影した写真のデータはRGBで保存されます。それを画像編集アプリ(Photoshopなど)を使ってCMYKやグレー、モノクロ2諧調などに適宜変換してデータを作成しましょう(念のため変換前の元データも残しておきましょう)。

スマホで撮影した写真はできる限りオリジナルサイズのものを用意しましょう。LINEで送られてきた写真やアプリで加工した写真は、圧縮されて解像度が低くなっている場合があります。

 

他者の写真やイラスト等を使用する場合、著作権や肖像権などの権利を侵害しないことは必須です。zineは個人制作とはいえ、販売・配布する以上、著作権の例外として認められる「私的利用」にはなりません。

ご自身で撮影した写真でも、他人が写っている場合は配慮が必要になります。

具体的には、以下のようなことに注意しましょう。

  • SNSに投稿されているものを含む他人の写真、イラスト、文章を無断で使用しない
  • 画像検索で一覧表示される画像をコピーして利用しない(公式配布元から入手)
  • 人物が写っている写真や模写イラストは、本人の許可を得る
  • 店舗やイベント、街中のスナップ写真でも顔がはっきり写っている写真は使用を避ける
  • 商標・ロゴは公式規約に従って利用する
  • フリー素材でも商用利用OKなもののみ使用する

●自身のプロフィール等の情報

必須ではありませんが、裏表紙や本文の最後(奥付)などに著者名(ニックネームも可)、SNSリンク、連絡先を記載しておくと、読者との繋がりが生まれるかもしれません。

 


4. 編集に使うアプリを選ぼう

編集・加工に使うアプリは無料から有料のプロ向けまで様々です。自身のスキルやコスト、用途などに応じて選びましょう。

主な編集アプリには次のようなものがあります。

アプリ名特徴初心者向け度プロ向け度
Adobe InDesignページ物のプロ用定番ソフト。レイアウト機能が強力。★☆☆★★★
Adobe Illustrator単ページの制作に強い。多ページも可能だがInDesignには劣る。★★☆★★★
Adobe Photoshop画像編集のプロ用定番。AIによる画像生成や合成も可能。★☆☆★★★
Affinity StudioAdobe製品に似た複合編集アプリセットだが、縦書き非対応。★★☆★★☆
Canvaテンプレートが豊富で直感的に操作できる。★★★★☆☆
Microsoft Word / PowerPoint使い慣れたソフトで手軽に制作可能。ただし、プロ印刷には調整が必要な場合も。★★★★☆☆

プロ向けのInDesignやIllustoratorは入稿データ(印刷会社に渡す印刷用データ、主にPDF)の作成にも適しています。一方、CanvaやWordなどは入稿データ作成にはあまり適していないので、事前に印刷会社に対応可能か確認しておきましょう。

編集も自分でやるのが zine の醍醐味ですが、デザイン(クオリティ)にこだわりたい場合は、素材は自分で用意して、編集作業はプロに依頼するのもアリです。

 


5. フォント(書体)を選ぼう:フリーフォントにはご注意を!

フォント(書体)は zine の印象を大きく左右します。何を選ぶのかは作り手の自由ですが、読みやすさにも配慮してフォントを選べば、よりよい作品になるでしょう。

主な用途別の代表的なフォントの種類には次のようなものがあります。

タイトルや見出しゴシック体(太め)、明朝体(太め)
本文・長文標準からやや細めの明朝体
装飾的な文字デザイン書体、POP体、手書き風書体

インターネットなどで無料配布されているフリーフォントには、商用利用が禁止されているものもあり、販売・配布する場合は商用禁止フォントは使用できません。

また、印刷会社への入稿データにフォントが正しく埋め込まれていないと印刷トラブルの原因になりますが、フリーフォントの中にはPDFへの埋め込みが禁止されているものもあるので事前に確認しておきましょう。

 


6. 編集&校正をしよう

素材が揃い、アプリを決めたら、編集作業へ。自由なデザインで個性を出しつつ、最低限のポイントは押さえておきましょう。

編集のポイント

  • 編集データのドキュメントは仕上がり原寸サイズで作成する(例:A5仕上がりの場合、A4のドキュメント内にA5の枠を置いてその中に文字や写真を配置するような作り方をしない)
  • 紙面のフチまで背景や写真などを配置する場合は塗り足しをつける(上下左右3mmずつ外側まではみ出るように配置)
  • 欠けてはいけない要素は仕上がり正寸の内側5mm程度以内に配置する

校正ではここを確認!

  • 誤字・脱字
  • 数字(日付・金額など)
  • 表記ゆれ(「欲しい」と「ほしい」、「プリンター」と「プリンタ」など:意図的に使い分ける場合を除き、統一されているほうが読みやすいです)
  • 事実関係の誤りがないか
  • 読みやすさ・わかりやすさ

他の人にも読んでもらうか、AIを活用するのもおすすめです。

 


7. 印刷しよう:データ入稿・用紙・部数決めのポイント

データが完成したら、いよいよ印刷です。印刷方法によって仕上がりやコストが変わってきます。予算や用途に応じて選びましょう。

●印刷方法の主な特徴

特徴コスト品質
オンデマンド印刷小部数・短納期対応〇+
家庭用プリンター手軽・1枚から可能低(部数が多いと高)
コンビニ印刷手軽・1枚から可能〇(オンデマンド印刷には劣ることが多い)
リソグラフ印刷小部数対応・独特の風合い中(多色刷りは割高)〇+(味がある)
オフセット印刷高品質・大量印刷

オンデマンド印刷でも1部から対応してくれる印刷会社もありますが、ある程度まとめて印刷するほうが割安になります。リソグラフ印刷も比較的小ロットからでも対応してもらえるところがあるので確認・相談してみましょう。

●入稿データのポイント

ネットプリントを含め、印刷会社に依頼する場合は、指定されるルールに従った形式で入稿データを作って渡す必要があります。ここがzine作成(印刷依頼)での最難関ともいえます。

ルール通りに入稿データが作られていないと、印刷トラブルや余計なコスト(手間)が発生する可能性があります。必ず事前によく確認しておきましょう。

一般的な例として次のようなものがありますが、ルール・条件は印刷会社や印刷方法によって異なるので、必ず依頼する印刷会社に確認してください。

  • 仕上がり実寸サイズで作成したPDFまたは指定形式ファイルでの入稿(PDF/X-1a または PDF/X-4が指定される場合が多い)
  • 無線綴じで背幅(本の厚み)がある場合、必要な背幅サイズを含めた表紙データを作成する(例:A5サイズで背幅が4mm必要な場合、表表紙と裏表紙別々のデータではなく、綴じ方向にあうようにレイアウトして、300x210mm仕上がりサイズのデータを作る)
  • フォントは埋め込みまたはアウトライン化
  • 画像解像度は300dpi以上推奨(解像度が低いと仕上がりが劣ります)
  • 塗り足し(上下左右に仕上がり実寸+3mm)とトンボをつける
  • 実際には印刷しない不要な枠線や補助線は削除する
  • カラーはCMYK推奨(RGBでは色味が変わることがあります)、モノクロ印刷の場合はグレーまたはモノクロ2諧調推奨
  • 特色印刷の場合印刷する色数とデータの色数を一致させる(例:青色1色印刷の場合、RGBカラーの青系色でデータを作らずに、黒1色で作り、正しく色を指定する)

なお、Canva無料版やwordなどからは適切な入稿データが作成できないことがあります。事前に印刷会社に相談しておきましょう。

●用紙選びのポイント 

用紙選びも重要です。種類によってコストが変わってきますし、印刷会社によって(また印刷方法によって)利用できない種類もあるので、事前に確認しておきましょう。

  • 本文用紙
    • 上質紙:コピー用紙のような表面加工されていない紙で比較的安価
    • コート紙:表面に光沢(ツヤ)がある紙で写真やフルカラー印刷の発色が良い
    • マットコート紙:コート紙の光沢を抑えた紙で、上品な仕上がりになり文字も読みやすい
    • 書籍用紙/ラフ系用紙:クリームがかった色でややざらつき(高級感やレトロな雰囲気)があり、長文を読むのに適している
  • 表紙用紙:無線綴じなどでは、本文より厚い紙や色の違う紙を選んで強度やコントラストを出すことができます。

●部数決めのポイント

目的や販売・配布方法によって部数を決めましょう。最初は少部数で作って、評判を見て増刷するのが現実的です。

用途目安部数
友人・イベント配布30〜50部
委託販売・通販あり100〜200部
展示・個展販売50〜100部

 


8. 製本しよう

印刷会社に依頼する場合、製本まで対応してくれるところが多いです。希望する製本方法を正確に伝えておきましょう。

自分で製本したい場合は、印刷データのページ順や表裏をよく確認してから進めましょう。ただし、無線綴じは印刷会社に依頼する方が確実です。

印刷後に製本方法を変更することは原則できないので、事前によく確認しておきましょう。

 


9. 販売・配布してみよう

完成した zine はぜひ人に読んでもらいましょう。販売・配布方法は様々です。

  • イベントや zine フェスで手売り(手配り)
  • 専門店・ギャラリーで委託販売
  • オンライン(ECサイト)で販売

価格設定にも決まりはありませんが、他の人の価格を参考にしたり、制作費をまかなえる程度を意識すると良いでしょう。


まとめ

zineは、ルールに縛られない小さな自己表現の場です。印刷や製本の基本を押さえれば、誰でも気軽に始められます。

印刷会社では、データ作成から紙選び、製本方法の相談までしっかりサポートいたします(当社にもお気軽にご相談ください)。あなたの世界を一冊にするお手伝いをいたします。

 

【お知らせお願い

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