仕事で資料や企画書、WEBサイト、動画などを作成する際に、イラストや画像、楽曲などの「素材」を素材提供サービス(サイト)からダウンロードして利用している(利用したい)、または、他社が提供する配信サービスなどを仕事でも使っている(使いたい)、という人は多いと思います。
しかし、仕事として素材やサービスを利用することは「商用利用」に該当するため、商用利用が禁止または制限されている場合、利用できない(または条件付での利用になる)ことがあります。特に「フリー素材」や「無料で利用可能なサービス」の場合は注意が必要です。
ということで、本日は日々の仕事の中で当たり前のように使っているけど案外正しく理解していないかもしれない、イラストや写真、楽曲などの素材またはサービスを商用で利用することについてまとめてみました。
あ、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。
毎度になりますが、本記事は法規制の素人が、素人なりにまとめてみた、という趣旨なので、法規制や規約についての正しい解釈を保証するものではありません。また、サービスによって商用利用可能な範囲は異なるので、必ずサービスの利用規約をご確認ください。
そもそも商用利用とは?
「商用利用」とは、ざっくりいうと、
自らが利益・収入を得るために(=営利目的で)利用すること
です。商用利用か非商用利用かの線引きとしては、「利益を得るために使うかどうか」と考えると整理しやすくなります。
「商用利用」のわかりやすい例としては、
- 素材サイトから入手したイラスト素材をTシャツやグッズにプリントして自社製品として販売する
- クライアントからの依頼で(対価を得て)作成するWEBサイトやパンフレットなどに素材サイトから入手したイラストや写真を使用する
- 自社(自身)のオリジナル作品として有料で販売するイラスト集、楽曲集、動画コンテンツなどに、素材サイトなどから入手したイラストや写真を使用する
- 他社サービスを使って配信する動画や楽曲の利用権を販売する(限定公開の視聴・ダウンロードURLを有償で配布する)
など、商品やサービスとして「直接対価を得るもの」に利用する場合があります。
一方で、以下のような場合については、会社などでの利用であっても商用利用ではないでしょ?と思われがちかもしれません。
- 社内会議で使用する資料や顧客へのプレゼン資料に素材サイトのイラストを使用する
- 素材サイトからダウンロードしたイラストを店内POPに利用して店内に掲示する
- 新聞折込広告やWEB広告に素材サイトからダウンロードした写真を利用する
- 店内BGMとして音楽配信サービスを使って楽曲を流す
- 無償配布する自社の販促品に素材サイトからダウンロードしたイラストを利用する
社内会議用の資料を有償で販売することなんてありませんが、資料を使って何かを考えたり議論したりするのは、自社の利益を得るためなので、商用利用になります。
入場料を徴収する音楽イベントではなく、通常の店内BGMとして個人向け配信サービスを使って楽曲を流すことは、楽曲の使用そのもので利益を得る行為ではありませんが、店内の雰囲気を良くするため=利益を得るための楽曲利用といえるので、やはり商用利用になります。
このように、他者著作物を使って直接利益を得ていなくても、一般的な企業の活動での利用であれば、どのような活動も最終的には「利益・収入を得るため」の活動といえるので、企業(法人)や個人事業主がビジネスの中で素材やサービスを利用する行為は、直接の利益の有無にかかわらず「商用利用」と解釈される、というのが一般的なようです。
そのため、企業の活動に他社提供のサービスや素材を利用するのであれば、商用利用が許可されているものを使うようにしましょう。
イラストや写真素材などを使う場合、素材提供サービスの公式サイトなどで利用規約や利用上の注意事項などを確認し、商用利用が認められているものを利用しましょう。ただし、商用利用には条件がある場合もあるので、それについても必ず確認しておきましょう(フリー素材だが商用の場合は有償となる、有償の場合は提供者への届出やクレジット表記が必要、などの可能性もあります)。
なお、YouTube、Spotify、Apple Music、Amazon Musicなどの動画・音楽配信サービスは個人利用(私的利用)を基本としているので、イベント会場での上映や店内BGMとして映像や音楽を流すことは禁止されているものが殆どです(必ず利用規約を確認しましょう)。
BGMや映像を商用で利用する場合は、商用利用可能な配信サービスを利用しましょう。
商用利用自体はOKでも、禁止される使い方もある
商用利用自体は許可されるサービスや素材であっても、商用を認めるための条件が設定されていたり、特定の利用方法については禁止・制限される場合もあります。
例えば、
- 非商用利用であれば無償で利用可能だが、商用利用の場合は有償となる
- 1つの制作物(成果物)につき、素材の利用個数が制限される
- 商用利用OKとして有償で提供されるイラストや写真、楽曲などの素材を、そのまま自身の「素材商品」として販売(転売)することを禁止する
- 反社会的、出会い系など、特定の目的での広告やWEBサイトへの素材・サービスの利用を禁止する
- 非商用利用であれば著作者やサービス名の表示は不要だが、商用利用の場合は著作者名やサービス名(サイト名)の表示を必須とする、または著作者・サービス提供者への報告・申請を必須とする
などです。
他にも、サービスや素材サイトによって、これはOK、これはNG、こうしたい場合はこうするように、といったルールが「利用規約」や「契約書」に記載されているのでよく確認しましょう。
逆に、自身のサービスや素材を他者に提供する場合、トラブルを避けるためにも、曖昧なルールはできるだけ避け、具体的にこの場合はOK、これはNG、を明確にして、利用規約、または契約書に記載しておきましょう。
著作権法上の商用利用の扱いは?
他社著作物(サービス含む)の利用、ということで、関連しそうな著作権法にはどのような商用利用についての規定があるのかというと……
著作権法には商用利用・非商用利用についての特別な定めはありません。
ただし、私的利用※や学校などの教育機関(塾や企業の研修機関などはこれに含まれません)などでの利用の場合などを除き、著作者の許可なく利用することが許されないと定めているので、そのことから、著作者(サービス提供者)の許可がない限り、または許可された利用方法を除き、商用利用はできない、と判断することができます。
※ 「私的利用」とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において利用すること」と定めており、この「家庭内に準ずる限られた範囲内」には「会社などでの内部利用は該当しない」と解釈されることが通例となっています。そのため、社内資料などへの利用であっても私的利用とはならず「商用利用」とみなされます。
ということで、まとめると、
企業や個人事業主がビジネス活動の中で行う活動や制作物に他社(他者)の著作物やサービスを利用する場合は、商用利用が認められたものを、利用規約で認められる範囲内で利用しましょう。
となります。
他者の権利を尊重するために、またあ、自らのトラブルを避けるために、適切に利用しましょう!
そんなこんなな私の本日の脳内DJのパワープッシュは、モリッシー(The Smithsにこの曲と似たタイトルの曲もありますね)をはじめ、様々なアーティストに影響を与えまくった伝説のジャングリーギターポップバンド、Girls at our best!のテーマソング的な大名曲“Getting Nowhere Fast”です!
タイトルを直訳すると「(努力しても)成果がでない」「もたもたする」などといった意味ですが、これは使っていいのか or ダメなのか……とあれこれ考えたり調べたりなんてモタモタしていられないから勢い優先!何か言われたら考えればいい!という風に突っ走ってしまう人もいるかもしれませんが、自分の利益のために他者の権利を侵害してしまうのは、ダメ、絶対。
ということで、迷う場合は素材やサービス提供者に事前に確認して、適切に商用利用していきましょう。
本日はこの辺で。