「印刷会社の法律素人社員が著作権について調べてみた」シリーズ、不定期のはずがまさかの3か月連続で第8弾!
今回は新聞や雑誌の紙面、テレビのニュース等番組の画面を写真に撮って(画像として)SNSやブログ等に利用する場合&テレビ番組やネット配信動画を録画して(複製して)SNSやブログ等に利用する場合について、著作権を侵害しないために注意することをまとめてみました(読了約10分)。
どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。
毎度になりますが、当方あくまでも「ド」素人のため、ここに記載した内容が法的に正しい解釈であることを保証するものではありません。ご了承ください。
新聞記事も著作物
そもそも、事件や事故などの記事は、「事実を伝えているだけ=創作性がない(著作物ではない)=著作権がない」のでは?と思われる人もいるかもしれません。
確かに、著作権法には次のような規定があります。
事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。
著作権法第10条第2項
しかし、この場合の「事実の伝達」とは、「事件等が発生した場所・時間・被害者の氏名・被害の度合い」といった事実を「単に羅列しただけ」のデータ的なものを指しており、事件等についての記者が事件等について時系列的に整理したり、考察や説明などを含めてまとめて記事にしたものは著作物とみなされます(判例あり)。
つまり、新聞や雑誌の記事は原則著作物となります(ネットニュース記事も同様です)。
また、記事(文章)以外にも、記事に使われる写真も著作物ですし、記事の下や横に掲載される広告も著作物です。
著作物である以上、許可なく記事や写真、広告等が含まれる「紙面」を複製して(写真に撮って)SNSやブログ、動画等に転載※1すると、著作権(公衆送信権)の侵害になり得ます(引用として認められる場合は除く)。
記事の「見出し(タイトル)」部分だけの写真なら著作物ではないのでは?(参考:「ちょっとした著作権の話⑦」)と思われるかもしれませんが、文字列としては著作物とみなされなくても、紙面を写真に撮った場合、装飾や書体等が含まれるため、著作物と判断される可能性はあります。
また、複数の記事をコラージュ的につなぎ合わせたり、写真を差し替えたり、といった加工を施して公開する行為は、公衆送信権以外にも、翻案権(改変されない権利)の侵害にもなり得ます。
もちろん、新聞に限らず、雑誌、小説、漫画、パンフレットなどの印刷物の紙面を画像化して転載する場合も同様に著作権の侵害になり得ます。
SNSやブログ等不特定多数への公開ではなくても、会社内で新聞記事等を回覧することや、画像化したデータを社内で共有することも著作権の侵害※2になり得ます。
なお、新聞や雑誌の場合、申請し、使用料を支払うことで転載が認められる場合があります。転載する前に出版社(新聞社)の公式サイト等をご確認ください。
※1 転載…著作物を別の場所に「そのまま」掲載することをいいます。例えば、新聞記事を画像等で複製して自身のSNS投稿にその画像のみ、または記事を紹介する短い文と画像のみを投稿することは転載にあたります。著作権法で認められる例外の場合を除き、著作権者の許可なく転載することはできません。引用のつもりで使用していても、適正な引用と認められない場合は転載とみなされます。
※2 社内イントラ(社員のみアクセス可能な社内ネットワーク内のフォルダ)に新聞記事を画像化して保管・共有していた企業が新聞社から訴訟を起こされたという事例があります。
テレビ番組や動画も全部著作物
テレビ番組や配信動画の一場面を撮影した画像(写真)や録画した動画が、著作権者ではない第三者のSNSやブログ投稿に利用(転載)されていることがあります。
よく見かけるので、そのような画像・動画の利用は著作権的に問題ないのでしょ?と思われるかもしれませんが、テレビ番組や配信動画は映像の著作物であり、撮影・録画等で複製したものを著作権者の許可なくインターネット上に公開することは著作権の侵害になり得ます(適正な引用として認められる場合は除く)。
また、テレビ番組や配信動画を無断で編集した動画(ハイライト動画など)のネット上への公開も著作権の侵害になり得ます(公衆送信権、翻案権などの侵害行為)。
個人アカウントでの投稿であっても、インターネット上に公開する行為は、著作権法の例外で認められる「私的利用」には該当しません。引用として認められる場合等、著作権法で例外として認められる範囲を超えた利用はできないのでご注意ください。
じゃあ、なんでネット上にそのような画像や動画が沢山出回っているのか、というと、著作権侵害は今のところ親告罪のため、著作権者自身が訴訟を起こす必要があり、訴訟やそのための証拠集めなどの労力(コスト)と、著作権侵害行為による実被害を天秤にかけて、見逃しているだけという場合や、単に見つけられていないだけ、という場合などがあるためです。
ネットニュースやブログ記事も著作物
もちろん、ネットニュース(ニュースサイト)やブログなどの記事をスクリーンショット等で撮影して複製した画像を、自身のブログやSNSの投稿に無断転載することも著作権の侵害になり得ます。
このような画像の利用もよく見かけますが、本来であればスクショ画像を利用するのではなく、リンクURLを共有するか、ニュースサイト等が提供する正規の共有方法を利用しなければなりません。
また、記事そのもの以外でも、ニュースサイトやブログページの上部等に大きく表示されている画像(アイキャッチ画像:WEBサイト等の表紙的な役割の画像)や記事に挿入されているイメージ画像も当然著作物なので、それらを複製して自身のSNSやブログのアイキャッチ画像(またはイメージ画像)に利用する※3ことも著作権違反になり得ます。
自身のSNSやブログ記事のアイキャッチ画像や挿入画像は自身で素材サイトなどから「正規の手続き※4」で入手し、許可される利用範囲以内で利用しましょう。
※3 他者WEBサイトやブログの紹介目的でのSNS投稿(ブログ、動画投稿)であっても、当該サイト(記事)に使われていた「アイキャッチ画像」をそのまま自身の投稿のアイキャッチ画像(イメージ画像)として利用することは、適正な範囲内での引用とは認められない可能性があるので避けましょう。
※4 インターネットの画像検索で一覧表示された画像を複製保存することは正規の手続きによる入手とはなりません。また、素材サイト上でサンプルとして表示されている画像(「すかし」入りや解像度の低い画像)をスクショ等で複製することも正規の手続きによる入手ではありません。素材提供者の定める利用規約に従って利用しましょう。
適正な引用であれば画像や動画の利用は可能
では、新聞記事を画像化したものやテレビ番組の一部を複製した動画等を自身のSNS・ブログ・動画等の投稿に利用したい場合、どのようにすればいいのかというと……
- 著作権者の許可を得て利用する
- 適正な引用の範囲内で利用する
のいずれかに該当すればOKです。
許可を得るには、著作権者(出版社、テレビ局など)に問い合わせて許可を申請することですが、個人のSNS等への利用の場合、なかなか取り合ってもらえないこともあります(一つ一つに対応していたらキリがないので)。
「適正な引用」として認められる範囲内での利用であれば、著作権者の許可は不要ですが、そのためには次の引用条件を「すべて」満たす必要があります。
- 引用する著作物が公表された著作物であること
- 引用が公正な慣行に合致していること
- 引用の目的上、正当な範囲内で引用が行われていること
「1」は問題ないと思います。
「2」と「3」はややわかりにくく、また、法的に具体的に「これはOK!これはNG!」と明示されているわけでもないので、最終的には裁判による決定に従う(または過去の判例に従う)ことになります。
「公正な慣行」とは、引用元著作物と自身の著作物との関連性、引用の目的などが「社会一般的な価値観(通念)」で妥当と判断できる、ということです。
例えば、自身が今年の夏の気温上昇についてのブログを書いていて、その中に参考資料として、今月の日本の平均気温の推移についての新聞記事の一部を画像として掲載する、というような場合は「公正な慣行に合致している」といえます。
「3」は特に注意が必要な条件です。具体的には、
- そもそも引用する必要があること
- 自身の著作が主で、引用が従であること
- 自身の著作と引用が明確に区分(識別)できること
- 引用元(出典)が明記されていること
- 引用元に改変を加えていないこと
といったことを適切に行う必要があります。
まず、当然ですが、引用元と自身の著作に引用する必然性があることが条件になります。
例えば、上述の「今月の日本の平均気温の推移についての新聞記事の画像」の利用の場合、日本の気候についての自身の投稿の中に引用することは「必要性あり」といえますが、自身がハマっているゲームについての投稿にその画像を利用することには引用の必要性は認められません。
次に、自身の著作部分が「主(メイン)」である必要があります。
「こんな記事がありました」とだけ書いたSNS投稿に「今月の日本の平均気温の推移についての新聞記事の画像」を利用する場合のように、短い文章や引用元を紹介する一文のみを自身が作成した場合は、主は画像であり引用とは認められません(転載になります)。
また、引用元と自身の著作部分がわかりやすく区別されていることも大切です。
区別する方法には、引用部分を枠で囲む、書体(文字の種類や大きさ)を変える、表示スペースを明確に区切る、などの方法があります。
併せて、引用元の出典(作者、作品名、出版社など)を明記します。
新聞やネットニュースの記事等の場合、出版された(公開された)年月日なども併記しておくとよいです。
そして、引用する場合、元の著作物は「そのまま」利用しなければなりません。
複数の記事の画像や映像を組み合わせたもの、写真を差し替えたもの等の利用は引用として認められません。ただし、「引用に不要な部分を切り取る(またはぼかす)」場合は認められ得ます。
例えば、新聞記事の場合、引用上見出しの画像があれば足りる場合、見出し以外の本文を読めないようにぼかす、または切り取る、動画の場合、引用上必要な場面のみ抽出する、といった利用はOKとされます。
なお、個人的に閲覧するために新聞の切り抜きを画像化して自身のPCに保管する、録画した番組のダイジェスト動画を自ら作成してスマホに取り込んで移動時間に視聴する、というような利用であれば、著作権の侵害にはなりません(私的利用として著作権の制限=例外が認められています)。
一方で、個人アカウントでの投稿であっても、SNS等インターネット上に画像や動画を投稿することは、私的利用とは認められないため、著作権の侵害になり得てしまいますのでご注意ください。
なおなお、新聞記事やテレビ画面を撮影した画像であっても、いわゆる「写り込み※5」に該当する場合はインターネット上に公開しても著作権の侵害にはならない可能性が高いです(とはいえ、修正可能であれば該当箇所をぼかすなど加工しておくとよいです)。
※5 特定の新聞やテレビ画面を意図的に撮影したのではなく、「偶然写ってしまった」場合であり、該当著作物が主になる構図ではなく小さく写っている、または部分的に少し写っているだけのような場合で、元著作物の利益を損なう(悪影響を及ぼす)ものでなければ、SNSやブログ、動画などの投稿に利用しても著作権の侵害には該当しません。
今回は以上になります。
今回もまた長文記事になってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
SNSやブログなどに新聞記事やテレビ画面の画像を利用する場合、著作権侵害とならないよう注意して利用しましょう!
という感じで、本日の脳内DJのパワープッシュは、新聞記事……ということで(ホントそれだけですが)、説明不要のThe Beatlesの大大大名曲 “A Day in the Life”です!
この歌のように「こんな記事を読んでさ……」と紹介したくなっても、著作権を侵害しないようご注意を。