数年振りに「ナルダが教えてくれたこと」という小説を読み返しました。この小説は、グラスゴーのBelle & Sebastian(通称ベルセバ)というバンドの元メンバー、スチュアート・デイヴィッドのデビュー作。もう15年くらい(もっとかも)前に出た小説です。
どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。
本日は、「逃げたり、避けたりを繰り返して生きていたっていいよね」、という小話です。
小説の内容について詳しくはここには書きませんが、かなり後味の悪い小説です。ベルセバ好きやサリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑でつかまえて)」が好きな人は大好物かと思いますが、それ以外の人はまったく受け付けないのでは……
そんなお話です(という紹介でなんとなく内容が推測できるのではないでしょうか)。
「自分の大切なものを守るために戦うのだ」という人は多いけど、「大切なものを守るために逃げるのだ」という人は少ないような気がします。
この小説の主人公は自分の大切なものを守るために逃げ続けます。戦いません。そのために、最後まで読者に名前すら明かしません。きっと死ぬまで逃げ続けるのでしょう。
逃げることでしか生きられない、そんな主人公は(私も含めた)ある一定の層には支持されますよね。
ところで、よく「逃げる」ことと「避ける」ことは別ものだ、と言われます。
解釈は様々ありますが、
「逃げる」のは諦め=よくないこと
「避ける」のは目的達成(前進)のため=よいこと
とされることが多いと思います。
ここで唐突に話は変わりますが、当社はISOをベースとした品質管理、環境保全管理、情報セキュリティ管理の活動を行っています。この場合の「管理」とは、管理対象を決め、リスク発生の可能性を考え、どのように対策するか決定し、対策を実施し、対策された状態を維持または改善する、ということです。
そのリスク管理の考え方のひとつに「リスクの回避」というものがあります(他には「リスクの低減(最適化)」「リスクの保有」「リスクの移転」があります)。
「リスクの回避」とは、文字通り、リスクの発生する可能性のある状況を避けるような対策をすることです。
例えば、インターネット経由の個人情報漏えいリスクを避けるために、個人情報はネットワークから切り離した媒体に保管する、といった対策です。
これは個人情報を扱った事業を行い利益を得る(目的を達成する)ために、そこに存在する危険を「避ける」ということで、わりとポジティブに取られます。
他方、「リスクからの逃避」という考え方はありません(大枠でいえば「リスクの回避」に含まれているのでしょうが)。
個人情報漏えいリスクを避けるために、根本的にお客様から一切個人情報を受け取らないようにする(拒否する)、という対策が「リスクからの逃避」といえそうですが、そんな消極策は考えるな、ということでしょうかね?
しかし、個人情報を扱った事業を行い利益を得ることを諦めてでも、他に追及しなければいけない目的があるのであれば、「一切受け取らない」対策もアリですよね。
「ナルダが教えてくれたこと」の主人公も時にはリスクの低減や保有、移転を試み、その限りにおいて自分の大切なものが守られていると確信できていれば逃げ出しません。でも、不安や不信感が増大し、このリスクは低減も保有も無理!と思うと逃げ出してしまいます。
しかし、逃げることによって生き延びることができています。
逃げることで生き延びられるのなら、それでいいじゃないか、というのが私の個人的な考えです。結果としてサバイブできればいいよね?ということです。
だから、逃げるのはカッコ悪い、なんてこと言ってないで、「これはアカンやつ」と思ったら躊躇なく逃げる、これが大事だと思っています。
もちろん、逃げ続けるには相当な精神力が必要です(なんせ追い詰める側ではなく、追い詰められる側なので)。
お薦めの生き方ではないですが、そこから逃げることがその時点で自分にとっての最善策だと思うのであれば(生き延びられるのなら)、逃げればいいと思います。というか、「逃げる」という選択肢が自分の中にちゃんと残っているうちに、「逃げる」べきです。
……散らかってきたのでまとめます。
【本日のまとめ】
●人生も仕事も(人も企業も)、なんでもかんでも受け止めるのが良しとされるのは違うのではないか?
●だから、我慢できる(保有または低減可能な)リスクとそうでないリスクを分けて考えましょう
●そして、適宜避けたり逃げたりしてもいいから、大切なものを守り、長生きしましょう
というお話でした。
この時期(3月~4月)になると、新入生や新入社員に向けたメッセージ的な文章をあちこちで見かけますが、だいたいそういうのって「ガンバレ」系の内容ばかりで息苦しくて、ある意味逃げ道を塞いでしまっているのでは?と思ったので書いたブログでした(決してがんばることが間違っている、ということが言いたい訳ではないので誤解なきようにお願いします)。
こんな考え方(生き方)もある、ということを知ることで守れるものもあるのではないでしょうか。
本日はベルセバの名曲“Get Me Away From Here I’m Dying”が脳内リピート再生していましたが、最後に降ってきたのはフリーダ・ペインの“Cherish What Is Dear To You(While It’s Near To You)”でした。
「大事なものはあなたのそばにある(いる)うちに大切にしましょう」
いい言葉(曲名)だと思いませんか?
もちろん、曲そのものもいいですよ(70’sソウルやMotown系が好きな方ならすでにご存じの曲かと思いますが、未聴の方はYouTube等で聴いてみてください)←公式がアップされていないのでリンクは貼りませんが、ベルセバの曲と併せてお時間あるときにでも聴いてみてください。