ちゃんと、休む、責任。

みなさまの中には、あと約1か月後に訪れる(はずの)夏季休業(連休)を心の支えとして、この「シンドイ」7月を乗り切ろうとしている人もいるかと思います(私もです)。

ところで、連休に限らず、休日や勤務アップ後は仕事から完全に離れて、それ以外のことを満喫する(したい)人がいる一方で、休日や勤務アップ後でも仕事をする(してしまう)人もいます。

 

どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

4月~6月にかけて、働き方やハラスメントについてのブログが続きましたが、本日は、「そんな日本社会に生きる私たちだからこそ、勤務時間外はちゃんと休みましょう!」という感じの、労働者の休日の過ごし方についての小話です(約8分で読めるブログです、毎回長くて申し訳ないですが、大切なことなので読んでいただけると嬉しいです)。

 


日本には「つながらない権利」はない、だけど……

さぁ、明日から連休だ!という休日前日の終業後。みなさまはどのようにしていますか?

  1. 休みに入るから、と業務用のパソコンやスマートフォンの電源を切って会社の棚にしまう
  2. 休み中でも上司や取引先から電話・メールがくるかもしれないから業務用のパソコンやスマートフォンは自宅に持ち帰る(または私物の端末で対応できるようにしておく)
  3. 休み中でもやらなくてはいけない仕事が山積みだからほぼ毎日出社する(申請・手当なしの「自主的な」休日出勤)

労働者であれば、本来「1」であることが “当たり前” のはずですが、実際には「2」という人が多いのではないでしょうか(「3」という人はいないと信じたいです)。

フランスやイタリア等の一部の国では、勤務時間外の仕事上のメールや電話を拒否する権利(通称「つながらない権利」)が認められており、従業員が勤務時間外の仕事の電話やメールを拒否できることを契約(規則)に含むことが義務付けられています(一部対象除外あり)。

一方、日本ではそのような権利の法整備は進んでおらず、なんやかんやと勤務時間外でも仕事の電話やメールはやってくるし、それらに対応するために業務用端末を持ち帰る・持ち帰ることを許可(指示)する、という人・企業が未だに多いです。

ステルス残業が問題視されるようになり、「勤務時間外のメール送信の抑制」が厚労省のガイドラインで例示されたこともあって、勤務時間外に社員間または取引先への仕事の電話やメールを禁止する企業も少しずつ出ては来ています……が、まだまだごく少数といったところです。 

 

日本では「できれば対応したくないが、対応するのはやむなし」が多数、だけど……

日本では、勤務時間外の上司・同僚・取引先等からの仕事の電話やメールへの対応については、人間関係や取引先の印象が悪くなる、または、どんな用事で電話(メール)が来たのか気になってしまう(早く済ませたい)、という理由から、勤務時間外でもそれらに対応する、という人が多いようです。

2021年の株式会社NTTデータ経営研究所による「新型コロナウイルス感染症と働き方改革に関する調査」によると、「就業時間外の緊急性のない業務連絡への対応」について、半数近い人(46.7%)が、「できれば対応したくないが、対応するのはやむを得ない」と考えていて、「対応したい」という人(16.8%もいる!)も合わせると63.5%もの人が勤務時間外の仕事の電話やメールでも、一応対応するものだと考えているようです。

とはいえ、勤務時間外でも仕事上の連絡をすること&それに対応することが「当たり前」になっていたり、勤務時間外に電話やメールに対応することを会社が指示しているのに手当が支給されていなかったりする場合は、問題(法令違反)になる可能性があります

数分程度の電話や、ちょっとしたメールでのやりとりだけであっても、勤務時間外に仕事をする(させる)のですから、厳密にいえば休日手当(または残業代)を申請(支給)しなければなりません。

また、勤務時間外でも電話やメールに対応できるように端末を持ち帰る(電源を入れておく・外出先にも携帯していく)ことを会社が指示しているのであれば、その時間は「会社の指揮命令下における待機時間=労働時間」となり、やはり手当支給の対象になり得ます。

もちろん、現実問題としては、そんな申請の手間や管理の煩雑さに頭を悩ませるのは、労使双方にとって建設的ではありません。

そんな不毛な問題で悩まないためには、勤務時間外はやむを得ない緊急の場合を除き連絡しない、勤務時間外に業務用端末を使用しない……という当たり前のことを徹底するのが一番ですが、そこをあまり厳しくすると、社内ルールを破って(こっそり)休日等でも仕事をしてしまう&それに気付いても会社や上司が黙認してしまう、というのが日本人であり日本社会です(困ったものです)。

夜中でも休日でも仕事上の電話やメールには迅速に対応するのが当たり前だ!こちらが休みでも相手は仕事している場合だってあるのだからいつでも業務用の端末を持ち歩くのが常識だ!と思っている人もいるかもしれませんが、そのような行為は、「業務間インターバル」「残業時間の制限」「適切に従業員を休ませる義務」等の企業のコンプライアンス遵守を阻害する行為になり、結果的に会社に迷惑をかけることになるかもしれない、ということは端末の待ち受け画面に常時表示しておいてもいいかもしれません。

また、部下に無償で勤務時間外の労働を強制する、休業中の取引先に対応を強要することは、パワハラやカスハラにもなり得ます。自分は仕事しているのだから、相手(部下や取引先)が休みだとしても、そんなの関係ない!というような言動を絶対にしない、ということは紙に書いて枕の下に置いて眠るようにしておいてもいいかもしれません。

企業としても、勤務時間外でも仕事の連絡をすることや端末の持ち帰りを明確には指示していなくても、休日等にスマホ等を持ち帰ること、またはオフィスへの入室を許可すること(黙認含む)は、休日に社員が “こっそり” 仕事をすることを容認することとイコールであり、万が一労務上の問題が発生した場合に企業としての安全管理上の責任を問われる可能性があります。

 

頑張ることや、やる気があることは素晴らしいことですが、何事にもルールがあります。どんなに試合に勝ちたい気持ちや責任感が強くても、反則ばかりする選手は一流の選手ではありません。会社に内緒で勤務時間外に仕事をしてしまうのは、反則ばかりするスポーツ選手と同じですよね?

 

きっちりし過ぎてもやりにくいのも現実だけど……セキュリティリスクも忘れずに

勤務時間外の業務端末やデータの持ち帰りは、労務問題以外に、情報セキュリティ上のリスクが高いことも忘れてはいけません

例えば、取引先情報満載の業務用のスマホを旅行先で紛失した、機密情報を保管していたパソコンの入った鞄を盗まれた……等々。休日の場合は多少気が緩んでいたり、通常とは異なる環境で端末(データ)を管理することもあり、端末の紛失・盗難、情報漏えい(メール誤送信含む)が起きやすくなります。

便利だから、家で仕事した方がはかどるから、もしかしたらお客様から連絡があるかもしれないから、といった安易な理由で、何の対策も実施せずに端末やデータを持ち出すこと、それを会社として許可してしまうことは、適切な安全措置を怠っていることになります。場合によっては、取引先との機密保持契約の不履行や、不正競争防止法・個人情報保護法による情報の適切な管理義務違反にもなり得ます。

もし端末やデータの持出を許可するのであれば、「セキュリティソフトの導入」「OSやアプリの定期的なアップデート」「公共Wi-Fi接続禁止」等の基本的な対策だけでなく、「端末管理ツールの導入」「データの暗号化やアクセス制限の実施」「VPNやVDI等比較的安全な通信手段の利用」等の対策の実施、および社外での端末やデータの利用ルールを定めて利用者に徹底させる(教育する)ことが不可欠です。

労務問題とセキュリティリスク管理の面から、企業は、勤務時間外の仕事上の連絡や端末の使用(持出)について、次のような事項を含めたルールを決めて社員に周知するようにしましょう。

  • 時間外に仕事上の連絡をする場合の連絡手段、および対応の必要性の判断基準について(どのような用件の場合に連絡してもよいか等のガイドライン)
  • 勤務時間外に業務上の必要によって何らかの対応を行う場合の就労管理について(手当や代休の支給、申請・許可手段等)
  • 端末やデータの時間外使用について(持出申請手順や持出を許可する端末・データの制限、持出時の管理手順等)
  • 私物端末の業務利用の可否、および許可する場合の利用制限について(好き勝手に私物端末を利用させにためのルール)
  • 対外的な休業中(営業時間外)の連絡手段の周知方法について(休業中の問合せ窓口や緊急の場合の連絡方法等)
  • ルールを守らなかった場合の罰則等について(無断残業、無断休日勤務をした場合のペナルティ)

 

セキュリティ上のリスクと労務上のリスクがあることをふまえて、勤務時間外の電話やメールも含めた仕事上の対応については慎重に判断しましょう。

  


なんやかんや言っても、私自身、勤務時間外に仕事の電話やメールがきたら、やはり対応してしまいますが(残念ながら、どうにも私も日本人です)、なにごとも「ほどほど」にして、うまくやり過ごすのが一番なのかもしれませんね。 

……そんなこんなで私の脳内DJのパワープッシュは、Young Sound from Scottland、伝説のPostcardレーベルを代表するバンド(日本では「ネオアコ」を代表するバンドとして有名)、Orange Juiceの “Poor Old Soul (part2)” 。

今回は敢えて歌詞の引用は控えますが(興味ある方は検索してみてください、とてもいい歌詞です)、4月から連続してなんとなく労働環境についてのブログを書いていく中で、まぁ、日本はそんなものだしなぁ、とか、とはいえ、そんなの間違っているよなぁ、とか思いつつ、ちょっとペシミスティックになっている中、この曲のサビの歌詞が容赦なくグサグサと刺さりまくっていたのでした(どうにも “つまらない” 人間になってしまいました)。

 

結論、休む時はちゃんと休みましょう!

参考:東洋経済オンライン「休日連絡NG、つながらない権利どこまで主張可能?」 2021.12.22

HRPro「「つながらない権利」とは? テレワークの継続のために“私生活と仕事の切り替え”を」 2021.11.11

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