トレパクのリスクとは?企業も知っておくべきトラブル防止策 –清掃員スキリの事件簿–

どうも、マルワの裏方あれこれ担当です。

「清掃員スキリの事件簿(著作権トラブル編)」の第三弾、今回はいわゆる「トレパク」について。

トレパク(トレース+パクリ)とは、他者の写真やイラストを無断でトレース(下絵にして上からなぞる)して作成した作品を、自身のオリジナル作品であるかのように公開・販売する行為の俗称です。

特に企業のSNS投稿や広告に使われるイラスト・画像の場合は、炎上や損害賠償に発展するケースも少なくありません。クリエイターだけでなく、イラスト作成を依頼する企業担当者も、予防策などを知っておきましょう。

 


著作権トラブル編 Vol.03 トレパクの落とし穴

【ご注意】本ブログに掲載されている物語は、一般的な情報提供を目的としたフィクションです。登場する企業名、人物名、団体名などはすべて架空であり、実在の企業・人物・団体とは一切関係ありません。

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登場人物】

スキリ: デジタルリスク管理のスペシャリストであるが、ある事情から現在は清掃員として働いている。豊富な知識と鋭い観察眼を持ち、社員からの信頼が厚い。本作の主人公。

イシカワ: 法務部主任。普段は優しいが、一度怒ると怖い。

ヌケオチ: 広報部所属。マジメだが少しうっかり者。またしてもトラブルに巻き込まれてしまった。

 

日本の某所。××(ばつばつ)株式会社。

朝の巡回清掃を終えたスキリは給湯室でコーヒーを飲みながら、タブレット端末で××株式会社が新たに展開する新サービスのWEB広告を眺めていた。

ちょうどその時、広報部フロアから、またもやただならぬ声が漏れてくる。声の主は今回も、法務部のイシカワ主任と広報部のヌケオチさんである。

イシカワ主任
イシカワ主任

ヌケオチさん、広告のイラストについて、「あれは私が撮った写真をトレースしたものではないか?」と問い合わせが来ているんだが、どうなっているんだね?添付されている写真をみると、確かに広告のイラストとそっくりなんだ。

ヌケオチ
ヌケオチ

えぇ?あれは以前から何度か仕事をお願いしているイラストレーターのAさんに描いてもらったものなので、オリジナルのはずなんですが……

二人の会話が気になって、いつものようにスキリが様子を見に来る

スキリ
スキリ

ヌケオチさん、イシカワ主任、また何かトラブルですか?

イシカワ主任
イシカワ主任

あぁ、スキリさん。今度は、広告に採用したイラストの制作過程に問題があるのではないかと……

イシカワ主任に促され、ヌケオチは事の次第をスキリに説明する。

スキリ
スキリ

なるほど。これはいわゆる「トレパク」の可能性があるかもしれませんね。ヌケオチさん、そのイラストレーターさんにどのようにイラストを作成したのか詳しく確認してください。

ヌケオチ
ヌケオチ

わかりました!すぐ電話します。

  

30分後、イラストレーターとの電話を終えたヌケオチが広報部フロアに戻ってくる。

ヌケオチ
ヌケオチ

どうやらAさんは、偶然SNSでその写真を見つけてすごく気に入ったからと、イラスト作成アプリに取り込んで(下絵にして)イラストを作成したようです…… 

イシカワ主任
イシカワ主任

スキリさん、このような場合、会社としてどのように対応したらいいですか?

スキリ
スキリ

今回のイラストは著作権を侵害している可能性が高く、このまま使用し続ければ、法的な責任だけでなく、重大な企業信用失墜と炎上を招くおそれがあります。すぐに次のような対応をしてください。

・当該イラストの使用停止(広告の取り下げ)

・トレースの事実を認め、元著作権者に対し心から謝罪し、損害賠償や和解条件を含む今後の対応について、誠意をもって協議する(弁護士に相談する)

・イラストレーターとの契約内容を確認する

・元著作権者の同意を得た上で、企業のWEBサイトや公式SNSなどに、経緯、謝罪、削除措置、および再発防止策を明記した謝罪文を掲載する

ヌケオチ
ヌケオチ

誰かの写真やイラストをトレースすること自体が著作権的にダメってことですか?Aさんもトレースや模写をすることに問題があるという認識はなかったようです。今後イラストを作成する際に気を付けてもらったほうがいいことはありますか?

タカハシ
タカハシ

トレースや模写は、絵の練習のためなどの私的利用の範囲内であれば問題ありませんが、ネット上に公開したり、商用利用したりすると著作権侵害となる可能性があります。これは模写の場合も同様です。ネット上の写真などを元に描くのであれば、元作品の著作者や写真に写っている人物に予め許可を得ることですね。因みに、トレースや模写ではなく、既存作品を「参考」にする場合も、そっくりになってしまうと権利侵害リスクはあるので、できれば複数の作品を参考にしつつ、元作品の特徴をそのまま真似するのは避けるべきですね。

イシカワ主任
イシカワ主任

わかりました。元の著作者にすぐ連絡して、誠意をもって謝罪と今後についての話合いをしましょう。このこととは私から社長にも報告します。今後同じようなことが起きないために、会社として実施しておくべき対策はありますか?

スキリ
スキリ

そうですね、作成したイラストを公開・利用する前に、類似画像検索などを活用して既存の写真やイラストにそっくりなものがないか確認することが必要ですね。とはいっても、トレース・模写したものかどうかを見抜くことは困難なので、イラスト作成を依頼する際の契約書に「第三者の権利を侵害しないことを保証する条項」と「万が一侵害が発覚した場合の責任分担に関する条項」を含めて、制作前に作成者と合意しておくことも大切ですね。


その日、元写真の著作者と会社との話し合いが行われ、今回は写真の利用料を支払うこと、クレジットに元著作者名を加えること、このイベント広告以外にはイラストを使用しないこと、を条件にイラストの利用を認めてもらえることになった。

また、イラストレーターA氏には今後このようなことがないよう厳重に注意し、権利侵害がないことを保証する条項を加えた業務委託契約を改めて締結することとなった。

 

  • 自分が描いたものでも「元作品の表現」を写せば権利侵害の可能性あり! 誰かの作品の構図・ポーズ・配色などの創作的要素をトレース・模写した作品を著作者の許諾なしでネット上に公開したり商用利用したりしないようにしましょう。SNSに公開されている一般の人のスナップ写真や自撮り写真も著作物なので、ネット上への公開や商用で利用する場合は、本人(または写っている人)の許可が必要です。
  • フリー素材のトレース・模写・AI参照にも注意! 正規の手順で入手した画像素材でも、加工やトレースでの商用利用・ネット上への公開が禁止されているものもあります。必ず利用規約を確認しましょう。トレースではなくAIに作品を参照させて描かせる場合も、元作品への著作権侵害になり得るので、権利許諾を得ている画像以外は参照させないようにしましょう。
  • 外部に依頼する際は契約書で権利保証を確認! 企業などから外部のクリエイターにイラスト制作を依頼する場合、契約書や発注書に「著作権侵害がないことを保証する」という条項を入れておきましょう。トラブル発生時の責任を明確化でき、企業・クリエイター双方のリスクヘッジになります。また、クリエイターはトレパク冤罪(トレパクしていないのに疑われる)を避けるためにも、制作過程(参考資料、下絵、作業ログ等)を記録しておきましょう。

 

この後、スキリに次なるトラブルが待ち受けているのですが、それはまた別のお話で……

 


いかがでしたでしょうか?

トレパクは「知らなかった」では済まされない問題です。自社の広告やSNS投稿に不安がある場合は、著作権専門家等に相談し、制作プロセスを確認するようにしましょう。小さな確認で大きなリスクを防げるかもしれません!

 

ということで、今回のBGMは、本編の内容とは一切関係ありませんが、昨日一昨日と奇跡の再結成ワールドツアーで16年振りに日本にもやってきた、OASISの名曲 “Some Might Say” なんてどうでしょうか。

「そんな風に言う(思う)人もいるかもしれないけど、自分はそう思わない」ということがあるのであれば、その逆の「自分はそう思うけど、そんな風には思わない人もいる」ということもあります。

創作活動にも、「これってやっていいのかな?」とちょっと立ち止まって考えることが大切ですね。

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