タイトルやキャッチコピーも著作物?? ~ちょっとした著作権の話⑦~

「印刷会社の法律素人社員が著作権について調べてみた」シリーズ(不定期)の第7弾!

「AというアーティストとBというアーティストに同名の曲があるが著作権的にはどうなるの?」とか、「自社製品のキャッチコピーを社員が考えた『あなたのために』と決めたが、このコピーも著作権で保護されるの」とか、疑問に思ったことがあるかもしれません。

今回は、そんな「タイトル」や「キャッチコピー(キャッチフレーズ)」などの権利についての内容になります(以前「ちょっとした著作権の話④」でも触れていますが、今回はより詳しく書いたつもりです)。

  

あ、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

ここに記載する内容は、あくまでも素人調べなので、法的に正しいことを保証するものではありません。とはいえ、参考にしていただける部分があるかもしれないので最後までお読みいただけると幸いです。 

 


タイトルやキャッチコピーなどの短い文字列も著作物?

結論から書くと、基本的にはタイトルやキャッチコピー(キャッチフレーズ)などの短い単語の組み合わせは、それ自体は著作物とはみなさないというのが通例なので、誰かと誰かの曲名(作品名)が同じであっても※1著作権的には問題なし、ということになります。

もちろん、曲名に限らず、小説や映画のタイトルなども同様ですし、誰かの曲名と別の誰かの書いた小説のタイトルが同じでも問題なし、ということです。

※1 特にビートルズの曲名は、リスペクトも含めて様々なアーティストや作家の作品のタイトルに使われていますね。例えば「Tomorrow never knows」「Norwegian Wood(ノルウェーの森)」 「Drive my car」「a day in the life」などなど。

 

自身がアイデアを絞りに絞って考案したタイトルやキャッチコピーがたまたま既存の誰かの作品名と同じであっても、それだけをもって著作権を侵害したことにはなりませんが、逆に、絞りに絞って考案したタイトルと全く同じタイトルが別の誰かの作品名になっていても、著作権を侵害された、ともなりません。

 

タイトルやキャッチコピーがそれ単体では著作物とみなされない理由は、一般的にそれらは「1つまたは数個程度の短い単語の組み合わせ」で表現されるため、似たような表現になりやすく、また、ありふれた表現が使用されることもあるため創作性が認められない=著作権法上の著作物には該当しない、と判断されるからのようです。

もちろん、タイトル以外の作品全体の内容などまで同じ(または類似する)場合は、著作権の侵害になり得ます。あくまでもタイトルの文字列「のみ」では著作物とみなされないだけですのでご注意を。

また、著作権法上の違反にはならなくても、タイトルが商標登録されていれば、該当する商用で利用することはできませんし、商標登録されていなかったとしても、不正競争防止法違反の可能性もあるので、やはり商用での利用は避けたほうがいいでしょう。

 

タイトル以外の「短い単語の組み合わせ」の場合はどうかというと……ということで、以下にいくつかまとめてみました。

 


新聞や雑誌、ネットニュース等の「見出し」は?

一般的には、新聞や雑誌等の「見出し」は著作物とは認められないと判断されることが多いようです。

理由はタイトルの場合と同じで、限られた文字数の中で、特定の事象についての要約的な表現を行うため、創作性は発揮しにくい(誰が書いても同じような見出しになる可能性がある)、ということのようです。

一方で、限られた文字数の中で「記事を読みたくなる」ための創意工夫を凝らしている=著作性がある、という判例もあるようですし、見出しを転載利用する場合でも許可が必要としている新聞社や出版社もあるようなので、結論としては、転載利用する前に新聞社(出版社)の利用規約等を確認してください、ということになります。

また、新聞や雑誌、ネットニュースなどの見出し部分を撮影して画像化し、SNSやブログ等に投稿する場合は、引用として認められる範囲内、または私的利用等法令で認められる例外利用の場合を除き、利用できません(著作権法や不正競争防止法に反するおそれがあります)。

 

歌詞や小説の中の短い文字列(一節・一文)は?

歌詞の一節、小説の一文、映画や漫画の台詞の一部、などの場合はどうかというと……

法的に明確な決まりはありませんが、一般的にワンフレーズ程度のきわめて短い文章や、日常的に使われる「ありふれた表現」であれば著作権の侵害とはならないと解釈されることがあるようです。

例えば、アーティストAの曲のサビに「あなたに会えてよかった」というフレーズ(歌詞)があったとして、それを自身の書いた小説の中で使用しても、ありふれた表現なので著作権の侵害とはならないはずです(そもそもAの曲の歌詞の転載であると断定することは極めて難しいかと)。

また、曲名がそのまま歌詞として使われている場合に曲名部分だけを抜き取ったとしても、曲名と同じなので著作権の侵害とはなりません。

ただし、Aの曲の歌詞の複数の短いフレーズを文章中にちりばめて利用するなど、全体を通して読めばAの曲の歌詞であることが識別できる場合などは著作権の侵害になり得ます※2

※2 小説や映画、歌詞などの「架空の物語」の中に他者楽曲の歌詞の一部などを利用することは、たとえ特定の時代や場面を象徴させる目的であっても引用とはみなされない可能性が高いようなので、無断での利用は避けましょう。

 

元の著作物との関係性を誤認させるような場合は?

「ベストセラー小説『〇〇〇』と同じタイトルを含む『シン・〇〇〇』というタイトルで、『〇〇〇』とは無関係の小説を書いて公表する」「他社人気商品と類似する自社商品に、人気商品と同一(または類似)のキャッチコピーを使用する」など、既に公表(認知)されている作品・商品名やコピーを、自身の著作物や商品に使用する(商用利用する)ことは、著作権とは別に商標権の侵害になる可能性があります(販売差し止めや損害賠償請求など)。

特に、既存作品や商品との関係性を購買者や視聴者に誤認させる可能性があり、元作品・商品の正当な利益を侵害するおそれがあるような利用は、トラブルの原因になり得るので避けましょう。 

また、ありふれたタイトルやキャッチコピー(表現)なら問題にならないかもですが、特徴的な、または誰もが知っているような大ヒット作と同じタイトルを自作品に付けると、本人にそんな意図はなかったとしても、または作品そのものは特に類似していなかったとしても、「マネ(パクリ)」と思われてしまって、作品への正当な評価の妨げになってしまうかもしれません。

 

「タイトルロゴ」を使用する場合は?

文字としてのタイトルではなく、文字の形や色、大きさ、並び方、装飾などでデザインされた「タイトルロゴ」の場合、単体でも著作物とみなされる可能性はあります(著作物とは認めないという判例もあるようですが、素人ではその判断基準の理解は困難です)。

また、一般的に知られているような商品・サービスや企業のロゴ、アニメや映画作品のタイトルロゴなどは商標登録されている場合が多いので、それらと同じ(またはそっくりな)ロゴを使った商品を販売すると商標権の侵害とされる可能性があります。

 

短歌や俳句、詩を利用する場合は?

短い文字列であっても、短歌や俳句、詩などの場合はそれ単体で著作性のある作品として完結しており、著作物として認められます。他者の作品を無断で利用してはいけません。

なお、交通安全や防犯などのキャンペーンのために作成される「標語」も短い文字列であっても、内容によっては著作物とみなされる場合があるようです。
具体的にどのような場合が著作物と認められるのかは個別判断になりそうなので、基本的には許可なく他者の標語を利用しない(マネしない)ようにしましょう。

 

長いタイトルやキャッチコピーの場合は?

曲名や小説・漫画のタイトルなどで、たまに「長っ!」と思うようなタイトルがありますが、そのような長いタイトルやキャッチコピーの場合、著作物として認められる可能性があるようです。

具体的にどれ位の長さなら、または、どのような内容なら、著作物とみなされるのかは個別判断になると思いますので、わからない以上は無断利用は避けるほうがよいでしょう。

  


……ということで、再度まとめると、「タイトルなどの短い文字列は著作物とはみなされないので、基本的には自由に使えるが、場合によっては著作権や商標権の侵害になることもあるのでご注意を」ということです。

タイトル(作品名)が偶然誰かのものと同じ(似ている)、という場合はさほど気にする必要はありませんが、かといって、安易に(または故意に)他者のタイトルやキャッチコピーをマネする(同じものを使う)のは控えた方がいいかもしれません。

また、他社が商標登録済みの商品名や作品名の利用は著作権とは別に商標権の侵害になるので、やはり安易にマネしない(似た商品名を付けない)ようにしましょう。

 

……そんなことを書いている私の脳内DJの本日のパワープッシュは世界中の全インディーPOPファンのハート捉え続ける大名曲、The Pooh Sticksの「On Tape」です!

この曲の歌詞には沢山のバンド名や曲名(マニアが探し回っているようなレア盤ばかり)が散りばめられており、“あれもこれも持ってるんだぜ、コピーしてもらったカセットテープでね(実物はもってないけどね)” というオチで終わるのですが、この曲のようにバンド名や曲名を歌詞の中に複数登場させることも著作権的には一応OKということになります(似たパターンの曲には、日本のバンド、フリッパーズギターの「Goodbye, our pastels badges」という曲もありますね)。

ということで、このブログにはオチはありあせんが、本日はこの辺で……

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