私の好きなバンドのひとつ、フィッシュマンズの “In The Flight” という曲に次のような歌詞があります。
ドアの外で思ったんだ あと10年たったら なんでもできそうな気がするって
でもやっぱりそんなのウソさ やっぱり何も出来ないよ
僕はいつまでも何も出来ないだろう
作詞:佐藤伸治
なんともやるせない、無力感が充満した歌詞ですが、諦念や悲壮感ではなく、救いの手をこちらに差し出してくれているような……そんな感じのする名曲です。
未聴の方はぜひ聴いてみてください(個人的にはアルバムバージョンよりも佐藤伸治ラストライブで演奏されたバージョンが好きです)。
どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。
今回は、しばらく継続してきた「職場の常識、再点検」シリーズはいったんお休みして、↑の歌詞に導かれて?「自分には『何も出来ない』と思ってしまうことがあっても、適度に受け流せるようにできるといいですね」といった感じの「学習性無力感」についての小話です。
学習性無力感とは?
自分の努力や行動が報われないことを繰り返し(長期間)経験するうちに、「何事にも期待できない、何をしても無駄」であると学習してしまい、たとえ自身の行動が結果を伴いそうな場合であっても、行動を起こせない or 積極的に取り組まなくなる、または抵抗しなくなってしまう状態になることがあります。
それを「学習性無力感」といいます。
ビジネスの場で学習性無力感が生じやすい環境としては、次のようなものがあげられます。
- ハウスルールや上司の価値観が絶対とされ、自分の意見などはすべて否定される
- 仕事上の目標が曖昧、またはコロコロと変わる
- 褒められることが殆どない(ちょっとしたことでもひどく怒られる)
- ハラスメントが横行している
- 上司や同僚に気軽に相談できない(困っていても助けてくれない)
- 長時間労働、休日出勤が当たり前になっている
- 正当に評価されない
※ 上記事例はあくまでも一般論であり、当社を含めた特定の企業についてのものではありませんので誤解なきようお願いします。
誰だって、自分の行動が何らかの「結果」を伴っていれば、「次はこれをやってみよう」などの積極性が出てくると思います。
逆に、自分の行動によって、何らかのストレス(怒られる・否定される等)を感じる場合でも、はじめのうちは何とかそれに抵抗しよう、その状況を変えよう、と行動(努力)するはずです。
しかし、何度行動(努力)してみても、成果が出ない、状況が変わらない、自分の価値観が否定され続ける、といった状態が続いてしまうと、自ら行動(努力)することに価値を見出せなくなってしまいます。
その結果、「指示待ち」になるだけでなく、言われたことを(何も考えずに)言われた通りにやるだけになってしまうこともあるようです。
たとえ、それが法令や倫理観に反する行為であっても、言われた通りにやってしまう場合もあり、コンプライアンス違反や企業のブラック化の一因にもなり得ます。
また、学習性無力感が原因で、何らかの業務(指示)を与えた際に、拒絶反応を示す・苛立つ等情緒不安になることもあるようです。
学習性無力感に陥りやすいタイプとは?
学習性無力感は次のような人ほどなりやすいようです。
- 完璧主義(些細なことでも気にしてしまう)
- 責任感が強い(何でも自分のせいだと思ってしまう)
- 小さいころ、親や先生に言われた通りに行動してきた(いい子)
- 過去に自己否定や大きなストレスを経験した(虐待やDV、イジメなどを受けた)
同僚や部下に該当する人がいる場合は、指導や声がけのやり方には注意が必要かもしれません。
また、自分がそのようなタイプだと自覚している人は、学習性無力感にならないように、そういうことがある、と認識し、下記「学習性無力感を防ぐには?」に例示しているようなことを心掛けるようにしたほうがいいかもしれません。
「学習性無力感」といわれても、「そんなのは本人の問題だ」「甘えているだけでは?」と思ってしまう人もいるかもしれませんが、個人差はあるにせよ、環境の影響で積極性が失われてしまうこともある、ということです。
さらに、無力感は他の社員にも伝染しやすいので、学習性無力感に陥った社員がいる状況を作ってしまう(またはそのような状況を放置する)と、職場全体のパフォーマンスの低下に繋がります。
学習性無力感を防ぐには?
逆に、次のようなことが「適切に」出来ている環境であれば、学習性無力感は生じにくくなるようです。
- 立場(役職)に関係なく、ちょっとしたことでも褒める・感謝する
- 達成可能な成功体験を積む機会が与えられている(無理・無茶な要求をしない)
- 意見を言う(聞く)機会が定期的に設けられている、相談しやすい環境になっている
- ハラスメント対策や労働時間の管理が適切に行われている
自分自身が学習性無力感にならないためには、
- 些細なことを深刻にとらえ過ぎないようにする
- 小さな(短期的に実現可能な)目標を立てて、その目標をクリアすることを目指す
- 自分ばかりを責めない(環境や周囲のせいにしてしまう)
- 視野が狭くならないように、適度に気分転換する
- 自身の成功体験を日記(ブログ)に残しておき、それを読み返す
といったことを心掛けると良いようです。
特に自分を責めずに「環境や周囲のせいにしてしまう」というのは、割と重要な気がします。
学習性無力感になる人は、元々が責任感が強かったり、完璧主義だったりする人が多く、常に環境(他人)のせいにするようなタイプではないので、時と場合によっては、自分を追い込まないようにすることも必要ではないでしょうか。
既に自分が学習性無力感になってしまったと感じる場合、対象から物理的・心理的に距離を置いて、気分転換すること、自分を大切にする行為(ちょっとしたご褒美など)を意図的に行う、などで、ココロの状態を回復させるようにするといいようです。
とはいえ、学習性無力感になっている本人が、自分でそのような行動をとることは難しい場合もあります。そんな時は周囲の人(家族、友人、上司、同僚など)がそのような行動をサポートしてあげましょう。
そうすることで、学習性無力感の蔓延しない職場になっていくのではないでしょうか。
……なんて書いておりますが、防止・克服については、完全にネット情報などの受け売りなので、効果を保証するものでも、実体験でもありません。ご了承ください。
自分にできることなんて本当に限られているので、仲間(同僚、先輩後輩、上司部下、取引先など)のチカラを借りて任せられるところはお任せして、逆に頼られるのであればそれにこたえられるように「適度に」なんとかしていけたらいいのではないでしょうか。
完全に人任せにするのも違うし、過度に責任を感じてなんでも引き受けようとするのも避けて、他者を認める&思いやりを持って接することができれば、自身が学習性無力感に苛まれることも、他者を学習性無力感にさせてしまうこともないのではないか、と思います。
“In the Flight” の歌詞では「なんでもできそう」な気がしたと歌った直後に「やっぱり何も出来ないよ」と諦め?無力?を嘆いているものの、後半では、自分は何もできないから、仲間を頼って飛んでいくんだ、という決意表明ともとれる歌詞で締めくくっています(この曲を含むアルバムが最後のアルバムになってしまったので、 “あとは頼んだ” 的な意味とも取れなくはないですが……)。
私自身、根がネガティブ(ダジャレではないです、念のため)で、自分では「なにも出来ない」ことくらいは自認しておりますが、誰かを頼り、時々は誰かに頼られながら、何とかしていけたらいいいのだろうな、なんてことを1年のスタートに思いつつ(もうすぐ2月ですが)、本日はこの辺で……