強者の理屈、弱者の立場② ~カスタマーハラスメント対策~

前回の社員ブログ当番でパワハラ防止について書きました。その中(タイトル)に「強者の理屈、弱者の立場」という言葉を使ったのですが、これってものすごく根深い問題というか、人類永遠の課題だなぁ……なんて思ってなんだか悶々とした日々を過ごしております。

 

そんなマルワのシャドーサイドあれこれ担当 in Juneです。

本日は、前回の続き的な内容になりますが、「どんな時でも、どんな立場でも、相手を思いやる気持ちは忘れないようにしましょう!」というLOVE & PEACE & SDGsな企業のハラスメント対策についての小話第二弾です(約6分で読めます)。

 


パワハラやセクハラ、マタハラ・ケアハラは主に職場内部の問題ですが、仕事をしていく上で気を付けなければならないハラスメントには外部からの(または外部への)ハラスメント行為、カスタマーハラスメント(通称カスハラ)もあります。

カスハラは、利用する(買う)者から、利用してもらう(買ってもらう)者に対して行われる、不当な要求や脅迫・暴行等の著しい迷惑行為を言います(俗に “モンスター〇〇” “ブラック〇〇”等と呼ばれる迷惑な利用者による問題行動のことです)。

 

厚労省が公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」には、

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

と定義されています。

クレームや言動の内容に対して「要求を実現するための手段・態様」が相当か不相当かは個別の判断にもなるかとは思いますが、次のような言動の場合は、まず間違いなく「不相当」と考えられます。

  • 暴行や傷害等身体的な攻撃(殴る、蹴る等)
  • 脅迫や誹謗中傷、侮辱等の暴言(人格否定や容姿等を揶揄する言動、SNSへの誹謗中傷投稿等)
  • 大声で怒鳴りつける等の威圧的な言動や差別的な言動
  • 著しく不当な要求(土下座の強要、実被害以上の金品の要求、深夜や休日に対応することを強制する、契約の見返りに性的な関係を迫る等)
  • 何時間も居座る(電話を切らない)、何度も訪問してくる(電話を掛けてくる)等の継続的・執拗な言動で過度に従業員を拘束する
  • 対応した従業員個人への攻撃や要求(従業員の名前や連絡先を要求する、対応した従業員を撮影しSNSで拡散する等)

これらの行為によって、労働者が身体的・精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快になったために正常に就業できない(辞めざるを得なくなる)等の支障が生じることがカスハラとされます。

パワハラ同様、カスハラ行為も関係する法規制に反していれば罪に問われる可能性があります。店員への土下座強要は「強要罪」になり得ますし、土下座して謝罪している様子を撮影してSNSに投稿するのは「名誉棄損罪」や「侮辱罪」にもなり得、有罪となれば損害賠償責任が生じます(実際にそれらの行為によって逮捕されたことがニュースになったりもしてますね)。

近年カスハラ被害が増加していることをふまえて、令和2年1月に「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」が策定され、事業主にはパワハラやセクハラだけでなく、カスハラも含めたあらゆるハラスメント行為から自社従業員を守るための取組を行うことが求められています。

 


もちろん、お客様等からの商品やサービス、接客態度等についての「通常の苦情やクレーム及びそれらの改善・復旧等のための正当な範囲内での要求」についてはまったく問題のない行為であり、お客様等の不満を解消するよう真摯に対応しなければなりません。

しかし、「不相当な要求」を見て見ぬフリをする、または言いなりになってしまうことによって、自社の貴重な人材を損なってしまうことがあってはなりません。

社員だけでなく、お客様を失ってしまう、またはお客様にも被害や悪影響が出てしまう可能性もあります。

例えば、カスハラ現場に居合わせてしまったことで不快な思いをしたために二度と来店してくれなくなる、カスハラ対応のために他の業務が遅滞してしまい必要以上に待たされてしまう等。

そのような事態を避けるために、企業は、カスハラ行為者に対しては毅然とした態度で対応しなければなりません。また、「被害を受けた場合の対応やマニュアルを作成する」「カスハラ対策の研修を行う」「相談体制を確立する」「定期的に従業員アンケートを実施する」等の対策を実施し、従業員の心身が危険にさらされてしまわないよう、適切な安全管理を実施しなければなりません。

逆に自社従業員が取引先等に対してカスハラ行為を行うことがないように社員教育を実施することも大切です。

 

万が一自社従業員がカスハラの被害にあった場合、または自社従業員がカスハラ行為をしたことによって取引先従業員等に被害が出た場合に、企業の対応が疎かな場合(安全配慮義務を怠った場合)には損害賠償義務を負う可能性があります。

※過去の判例では、カスハラで被害を受けた従業者に対して、上司が逆に相手(カスハラ行為者)に対して再度謝罪してくるよう指示したことが、職務上の指導として許容される範囲を逸脱しているとして、上司によるパワハラが認定された(企業の対応が悪いと判断された)事例もあります。

 

企業は、相手がお客様(利用したいただく相手)であることから、事を荒立てないことを自社従業員に強いる場合もあります(泣き寝入り)。しかし、カスハラは(パワハラやセクハラも)人の尊厳にかかわる重大な事案であり、従業員の心身の安全を守ることは企業の責任でもあります。

パワハラやセクハラ防止対策と併せて、カスハラ対策も適切に講じましょう。

 


根本的なこととして、本来であれば「買う」側と「売る」側は対等な立場のはずなのですが、どうにも「買う」方に選択権があり、優越的な立場になってしまうことがあり、「強者の理屈」で「弱者の立場」を蔑ろにした言動をしてしまう……ということが起きてしまいます(特に近年目立つ気がします)。

また、「正義の暴走」とも共通しますが、自分に不快な思いをさせた相手には何をしてもいい(それが正当な要求だ)と思ってしまう人がいるのも、残念ながら事実です。

弱者を守り、正義の暴走を食い止めるためには「チカラ」の行使もやむを得ないということもあるかもしれませんが、その場合の「チカラ」は武力や腕力(言葉の暴力含む)ではなく、ルール(法規制)と道徳心(思いやり)による「抑止力」だけでなんとかならないものかな、と思ってしまいます。

  

……そんなこんなな私の脳内DJの今日のパワープッシュは、The Radio Dept.の大名曲、“Pulling Our Weight”です!

スウェーデンのバンドならでは?な少し影のある美メロと敢えてラジオから流れているかのように曇らせたボーカルを、冷たく淡々としたリズムとシンセの音色でくるんで、エレクトロシューゲやDIYポップの美味しいエッセンスをふんだんにまぶした名曲です(ソフィア・コッポラ監督の映画「マリーアントワネット」の劇中に使用されたことでも有名ですね)。

この歌のサビでは、“犯罪に屈して危険にさらされるとしても、自分たちのやるべきことをやるだけだ” 的なことが歌われています(Pulling Our Weight=私たちのやるべきことをする、の意)。

パワハラやセクハラもそうですが、泣き寝入りで収めようとする(社員に我慢を強いる)のは企業の対応として問題ありです。

まずは、自社の社員がカスハラの加害者にならないよう指導・教育をすること、そして、自社の社員がカスハラの被害に遭った場合には、適切に対処すること。それらの「やるべきこと」をしっかりとやれる組織でありたいものですね。

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