「正しさ」とうつくしさ

「日本語の乱れ」とよく聞きます。

新聞やテレビのニュースでも取り上げられますし、クイズ番組なんかで「間違って使われることが多い日本語」なんてカテゴリで問題になっていることもしばしば。
普段、社内校正(内校)で文章をみる時、たまに「あれ?」と思う漢字やことばがあれば、辞書検索をします。

そうすると

①完全に間違っている場合

②一般的には使用されにくいが、正式な用法である場合
(これは知識不足によるものでお恥ずかしい限りですが……)

③語源からすれば間違いだが、使用されることが多くなったために「正しく」なった場合
(例:一懸命、一懸命)

主にこの3パターンです。

②③の場合は、新たな知識を得て、賢さが上がった気になれます。

 

さて、①の場合ですが、お客さまの原稿が間違っていたことが「判明」しても、親切な妖精さんよろしく、コッソリ直す、なんてことはしません。できません。
マルワでは制作中に出た疑問点は、作業者から「KIZUKIカード」という質問カードで、お客さまにお伺いするようにしています。
お返事を頂いてから、それに基づいて修正します。

 

何故かというと、それが「あえて」又は「わざと」の場合があるから。

そして何をもって「正しい」とするか、という問題があります。

例えば、
・「ら抜きことば」
報告書や正式な文章ではNGですが、回顧録だとかコラムだとか、口語の形で親しみやすさを演出する効果を狙ったものの場合は問題なし。

・語の意味としては正しいが、常用外となっているもの。
「スキルをいかした仕事をする」活用して、という意味なので「活かした」が正しい筈なのですが、常用漢字表にこの読み方が登録されていないので、公用文書では使いません。勿論、そうしたルールと関係なければ問題なく使えますし、「間違い」ではありません。

他には、正しくは送り仮名が必要な語でも、法令等で「用語」として送り仮名無しで使われているので同じ使い方をする場面では送り仮名を無しにする場合、なんてことも。

 

そして「わざと」の場合。

「人(人材)」のように、語のニュアンスを重視して熟語としての定型から意図的に改変しているもの。
分かった上であえて変えているので、一般常識に照らし合わせて「間違い」としても書いた人にとっては間違いではなく、そういう「表現」であるわけです。
そのように使われているシチュエーション・文脈として正しくその意図が伝わるならば、面白いことだと思います。でも使いどころを誤ると「あ、この人間違えてる」と、ミスにカウントされてしまう、とても高度なテクニックですよね。その代わり上手く嵌れば記憶に残るフレーズになるのかもしれません。

一般常識的には間違いでも、文章として「良いもの」は別、ということなんでしょう。
そもそも常識も言葉もすべて人と人との間の取り決めなわけで、それを「良し」とする人が増えれば、今は気にかかる表現も、いつかは常識となるのでしょうけど。

 

日頃の業務で遭遇しがちな「間違いでは???」案件を並べてみましたが、思いの外いろいろあって、楽しかったです。
できたら自分で文章を書く時には、面白くて、分かりやすくて、できたらうつくしく表現できるようになりたいと思うのですけど……奥が深すぎて、難しいですね。

181112画像は私が学生の頃、「間違った日本語」として話題になったもの。
気持ちは分かるような、いやしかし……。

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