ご存知の方がいると嬉しいのですが、当社は印刷会社です(誤解を招くようなキャッチ画像ですが……)。
チラシやポスター、パンフレットや伝票類等々の紙面構成を考え、作成し、印刷し、加工することを生業としています。
何を今さらと思われるかもしれませんが、当社の「軸」は印刷物作成で、「土台」は社内で一貫生産可能な設備と人員を持っていることです。
ただ、それ以外にも「装飾」として様々な企業活動もしていますし、最近「装飾」の業務に占める割合が大きくなってきているようにも思います(それがいいとか悪いとかいう話ではないですが)。このブログも「装飾」のひとつです。
当然、当社の活動に限らず、あらゆる企業活動や製造、アート作品の創作、もっと言えば、人生そのものにも「軸」「土台」「装飾」は不可欠な要素です。
どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。
今回のブログは、一言で言ってしまうと、“何事にもバランスって大事だよね”、というだけの小話です。
例えば「歌もの」の楽曲(録音物)制作では次のような手順が一般的です(諸説あり)。
- 仮オケ(デモ:いわゆる「下絵」や「ラフ」相当の録音物)を作る。
- 仮オケにあわせて各パートを個別に録音する(素材作成)。
- 録音された素材を個別に調整する(どの音域を強調するか・減らすか等)。
- 調整した個別の素材を並べて全体のバランスを整える(音量バランスや音の聴こえる位置の調整等)。←ミックスという工程です。
- 全体のバランスが整ったら曲全体の仕上げをする(音量や音域の最終調整、アルバム等複数曲ある場合の音量や質感の統一、曲間の空白時間の調整等)。←マスタリングという工程です。
あとは、曲名等のクレジットの登録作業や諸手続きを経てCDに記録されたり、ネット上で配信されたりして、誰でも聴ける「音楽」となります。
「下絵→素材作成→素材の調整→全体のバランス調整→仕上げ」という流れは印刷物をはじめ、様々なモノの制作(絵・小説・映画等)にも共通ですね。
どのようなモノを作る場合も当然「素材」は重要です。これがあまり良くないと、いいモノは作れません。
ただ、どんなにいい素材を揃えても、全体のバランスが悪いと、やはりいいモノはできません。
では全体のバランスを良くするために大事なのは何か?
それは冒頭にも登場した「軸」と「土台」です。
「軸」は主役なので、歌ものであれば「メインボーカル」。「土台」は「ベース」または「キックス(バスドラム)」です(弾き語りであればピアノやアコギが土台になります)。
普段あまり意識して耳を傾けている人は少ないかもしれませんが、音楽においてベースはコード感やグルーヴ感など楽曲の土台を固めるためにとても重要なパートです。個人的にはベースが楽曲全体の6割を占めると思っています。
まず「軸」と「土台」だけでバランスを調整し、気持ちよく聴こえるように仕上げていきます。
それが固まったら、それ以外のパート(装飾)を一つずつ鳴らして、バランスを調整していき、最後にすべてのパートを鳴らして整えれば、とりあえず楽曲としてカタチになります(上記④:ミックス、またはミックスダウンと呼ばれる作業工程です)。
ここで大事なのは最初に「軸」と「土台」を固めることと、一度固めたら最後まで「軸」と「土台」は動かさないことです。
「軸」と「土台」を途中で動かしてしまったりしてブレてしまうと、バランスを崩してしまい、何度も調整しなければいけなくなります。
また、「軸」や「土台」が決まらないまま作業を進めることも同様で、エンドレスの調整地獄に陥って時間だけが過ぎていきます。
もちろん、「軸」と「土台」だけでは味気ないので、「装飾」も重要です。
でも、装飾はどちらかというと派手で見栄えが良く、とっつきやすいということもあって、ついつい装飾ばかりに意識が向きがちです。
本来、ボーカルの後ろでやんわりと鳴っているのが心地よいピアノやホーンがボーカルをかき消すくらいの大きさで鳴り続けて、ボーカルが聴こえにくいとしたら(悪目立ちしていたら)、それはあまり気持ちよい曲ではないですよね?
また、環境の変化であっけなくバランスが崩れてしまうのもやはりいいモノとはいえません。
楽曲作成でいう「マスタリング」工程はものすごく重要かつとても専門性が高くて難しい作業ですが、この工程なしには楽曲は成立しません。
例えば、スマホのイヤフォンで聴く場合とカーステレオで聴く場合、テレビやラジオで流れる場合と高価なオーディオ機器で再生される場合…etc
それぞれで音の聴こえ方は当然違ってきますが、その差をなるべく少なくできるようなバランス調整が大事です。
演奏(歌唱)する人には気持ちよく演奏(歌唱)してもらって、あとはレコーディングエンジニアにお任せあれ!ということもありますが、バランス調整のためには、演奏(歌唱)する本人も「常に全体のバランスを意識する」ことも重要です。
「ワークライフバランス」も同じで、本来であればその「バランス」は制度や仕組みによって整えるのではなく、自分自身で整えることが基本中の基本。そして、「バランスの良い状態」は一人ひとり異なって当然なんです。
音楽(録音物)のバランスにも「唯一無二の正解」なんてありません。
何事につけても、「装飾」に気を取られすぎてバランスは崩れていないか?と定期的に見直してみてはどうでしょうか、という小話でした。
印刷会社なんだから印刷物の作成手順を例にすればよかったことに、書き終わってから気付いたことは内緒にしておきます。
そんなことを思っている私の頭の中ではMy Bloody Valentineの名盤“LOVELESS”収録の“To Here Knows When”の曖昧でカオティックなサウンドがリピ再しております
散々バランスが……とか軸と土台が……とかいっておきながら、この曲(というかアルム全体)は軸も土台も装飾も混然一体となっていてバランスなんて言葉が使えないような不思議な音空間となっています。
そして、これがまたとても気持ち良いのでカオスもありなのか?とか、考え出すと訳が分からなくなってきますので、本日はこの辺で……
ご興味ある方はぜひ聴いてみてください(ヘッドフォンで大音量視聴がお薦めではありますが、気分が悪くなる人もいるようなので、そこは自己責任でお願いします)。
メチャクチャカッコいいですよ!