今年も残すところあと僅かになりました。
年末年始が休業となる企業であっても、業務用パソコンやデータ、資料などを自宅に持ち帰って作業する=「持ち帰り残業」をする、という人もいるのではないでしょうか。
では、「持ち帰り残業」は残業(=残業代の対象)になると思いますか?ならないと思いますか?
どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。
本日は連休や週末などにありがちな「持ち帰り残業」についての注意点や管理上のポイントなどについて、法律素人社員がそれなりにまとめてみました、という内容です。
毎度になりますが、本記事内の事例はすべて架空のものであり、当社を含めた特定の企業の事例ではありません。また、本記事の解釈は法的に正しいことを保証するものではありません。予めご了承ください。
「持ち帰り残業」は残業にあらず?
一般的に「持ち帰り残業」とは、
勤務時間外に自宅などで仕事をすること
をいいます。
会議資料の作成、顧客に提出する企画書の作成、デザイン案や試作品の作成、見積書や仕様書の作成、メール対応……などを自宅で行うようなケースがこれに該当し得ます。
「持ち帰り残業」は、文字通り仕事を自宅などに持ち帰って行うため、会社内で行う通常の残業とは、根本的に次の点で異なります。
- 作業者(社員)の私的な場所・時間の中で行われる
- 会社の指揮命令が及ばない状態で行われる
例えば、
- 深夜や早朝に作業をする
- 作業途中で出かけたり昼寝したりする
- お酒を飲みながら、テレビを見ながら作業する
など、通常の残業では考えられないような仕事のやり方であっても、それは作業者の裁量次第ということになります。
逆に言うと、どのように作業をしていたとしても、同僚や上司に見られることもなければ、会社のルール通りに作業しなければいけない状態にもありません。
そのため、
原則として、持ち帰り残業は労働(会社の指揮命令下で仕事をすること)とはみなされず、残業代支給の対象にはならない
というのが一般的な解釈になります。
「持ち帰り残業」でも残業として認められる場合もある
社員が自主的に行う「持ち帰り残業」は残業とはみなさない、ということですが、逆に、自主的ではない場合、つまり「指示・命令されて行う場合」や「本人の意思に関係なく、やむを得ない事情などから行わなければいけない場合」は労働時間とみなされる可能性があります。
労働時間とみなされる可能性があるのは次のいずれかに該当する場合です。
- 会社(上司)が持ち帰り残業を指示・命令した場合
- 会社(上司)からの明確な指示・命令はないが、持ち帰り残業をしないと期日までに作業を完了できないことが明らかな場合
- 会社(上司)からの明確な指示・命令はないが、持ち帰り残業をしないことで、人事評価や賞与などで不利益が生じる場合
「1」の場合はもちろんですが、「2」や「3」の場合も労働時間とみなされる可能性があることには注意が必要です。
「持ち帰らざるを得ない残業」のリスク
「持ち帰り残業」自体は悪いことではありませんが、「持ち帰り残業」しないと仕事が回らない状況から生じる「持ち帰らざるを得ない残業」が常態化してしまっていると、次のようなリスクが生じる可能性があります。
●残業になる/ならないの見解相違リスク
上述のように「持ち帰り残業」であっても、残業(労働時間)として認めらる場合もあるため、
作業者「やらなければ終わらないので仕方なく自宅で仕事をした=残業だ」
会社(上司)「社員が自主的にやった=残業ではない」
といった見解の食い違いが生じて、トラブルになる可能性があります。
●隠れ過重労働発生リスク
「持ち帰らざるを得ない残業」を残業として認めて、残業代を支給している場合でも、労働時間を適切に管理できていない場合、次のようなリスクもあります。
- 実際には、申請(受理)された残業時間以上に労働してしまっていて、残業時間の上限を超えてしまう
- 深夜や早朝作業の発生により、適切な勤務間インターバルがとれなくなる
このようなトラブルを避けるために、どのような場合に「持ち帰り残業」を残業として認めるのか、労働時間の開始・終了を何をもって確認するのか、どのように申請・承認するのか、などについてのルールを整備して、適切に管理する必要があります。
●社員のモチベーション低下リスク
「持ち帰らざるを得ない残業」が常態化してまうと、「ストレス増加」「社員満足度低下」「仕事へのモチベーション低下」「勤務中の集中力低下(ミスの増加)」などの影響が生じてしまい、結果として仕事の効率や品質に悪影響が及んでしまう可能性もあります。
●情報漏えい・不正利用のリスク
労務管理(社員の心身)上のリスク以外に、情報漏えいや不正利用が起こるリスクもあります。
例えば、
- パソコン、スマホ、USBメモリ、書類などを社外で紛失する(または盗まれる)
- 業務用アカウントのID・パスワードが盗み見られる
- 私物PCや自宅のネットワーク機器がウイルス感染してしまっている(業務端末への感染拡大、VPN経由での社内ネットワークへのウイルス侵入)
- 私物スマホの利用を許可する場合、業務メール(データ)を業務に関係ない友人・知人に誤って送信してしまう
- 家族や自宅来訪者など業務とは無関係の者に機密情報をのぞき見られる
などの可能性があり、その結果、
- 機密情報や個人情報などが外部に漏えいしてしまう
- 業務端末や業務アカウントが不正に利用されてしまう
- 社内ネットワークに接続する別の端末やサーバーなどもウイルスに感染してしまう
などが起きてしまうかもしれません。
「持ち帰り残業」の管理
このように、「持ち帰り残業」は労務面や情報セキュリティ面でのリスクにもなり得るため、会社側は、次のような対策をとっておく必要があります。
【持ち帰り残業への対策例】
ルールの整備 | ・持ち帰り残業を申請・許可手順と許可基準(判断は誰が行うのかなど) ・業務端末、USBメモリやCD-Rの持出許可手順(持出端末の制限など) ・業務データの複製の可否(複製を禁止するデータの種類など) ・私物端末の利用可否 ・または、「持ち帰り残業は一切禁止する」というルール |
適正な仕事量の 割当て | ・タスク管理やヒアリングなどで仕事量を把握する ・コミュニケーションを図る ・グループウェアなどで情報共有 |
適切なセキュリティ対策 | ・持出端末への管理ツール導入(万が一の場合の強制ロックなど) ・持出端末へのウイルス対策ソフト導入 ・端末のOSの定期的なアップデート実施 ・持出端末や記憶媒体の暗号化 ・端末の起動時ロック設定 ・重要データの暗号化、アクセス制限設定 ・VPN機器のアップデート、パスワード管理 |
社員教育 | ・上司への指導(パワハラや無茶な仕事の押し付け防止) ・端末やデータ取扱いについての指導 ・残業として認める場合の事例と申請・許可手順 |
せっかくルールや手順を整備していても、形骸化してしまっては意味がないので、適切にルールや対策が実施されていることを定期的に確認することも大切です。
まとめると、
持ち帰り残業にも様々なリスクがあるので、適切に管理しましょう!
ということになります。
社員の自主性を重んじるから、とか、やる気があってよろし!ではなく、基本的には「持ち帰らざるを得ない残業」が生じないような働き方ができるように環境を整備していくことが大切ではないかと思います。
そんなこんなで、本日の私の脳内DJのパワープッシュは、Strawberry Switchbladeのデビュー曲にして大大大名曲 “Trees & Flowers”です!
「イチゴ柄の飛び出しナイフ」といえば、いかにも80’sなエレポップ風POPソングの“Since Yesterday(邦題:ふたりのイエスタデイ)”が日本でも大ヒットした80年代を代表するPOPアーティストですが、Trees & Flowersはそのような芸風?になる前のアコースティックな楽曲です。
穏やかな曲調に反したネガティブシンキング全開な歌詞について、毎回考えさせられてしまいますが、この曲の主人公みたいな心境にならないよう、休む時はちゃんと休む、休む時間をちゃんと作る、そのうえでやるべきことをしっかりとやる、ということが大切ですね。
毎度のように長くなっているので、本日はこの辺で……