副業をすることのメリット・デメリットとは?

これまでは、正社員として働く人の副業は禁止されることが殆どでしたが、働き方の多様化などから、大企業を中心に副業を認める企業が増えてきました。

また、厚労省のモデル就業規則からも副業禁止規定が削除され、世の中的には副業容認の方向に向いているようです。

どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

本日は、企業に雇用される人(正社員、パートタイム社員など)が副業をすることについて、また、副業を認める企業側のメリット・デメリット・注意点などについて、法律ド素人がそれなりにまとめてみました、という内容です。

毎度になりますが、本記事記載内容は法的な解釈が正しいことを保証するものでもありません。詳しくは顧問弁護士さんや自社の法務部門にご確認ください。

 


そもそも「副業」とは?

副業とは、主として収入を得ている労働(本業)を継続しつつ、本業以外の仕事によって収入を得ることをいいます。

本業の勤務アップ後や週末にアルバイトをする場合、またはクラウド系ワーカーとして動画編集やWEBデザインなどを行うような場合など、一般的には本業よりも労働時間・収入が少ない場合を副業と呼ぶことが多いようです。

副業と似た呼称に「兼業(ダブルワーク)」や「サイドビジネス」もあり、兼業は本業と同程度の労働時間・収入の仕事を掛け持つ場合(バイトの掛け持ちなど)、サイドビジネスは自ら起業する(個人事業主になる)場合などに使われることがあります。

ただし、「企業が正社員の副業を認めるか否か」という場合においては、兼業やサイドビジネスも含めて「副業」として規定されることが一般的です(本記事においてもまとめて副業と表記しております)。

 


企業は副業を禁止できる?できない?

副業によって「自社の業務に支障がでること※1」が想定され得るため、特に正社員については原則として副業は全面禁止とされることがスタンダードでした。

※1 競業他社で就労して自社の企業秘密を持ち出されるおそれがある、副業による疲労などが原因で労務提供に影響がでる(または欠勤する)などによって企業に不利益が生じる可能性があり得ます。

企業に雇用される社員には、競業避止義務労働力を提供する義務があります。

副業をすることによって、それらの義務が果たされなくなるようなことがあってはならないので、企業が制限または禁止してきた、ということです。

 

しかし、労基法にはもともと副業を禁止する定めはありません。

また、就業規則はあくまで就業時間内についての決まり事なので、基本的に就業時間外(プライベートな時間)の活動の自由を雇用側(企業)が制限することはできません。

そういった前提と、生活スタイルの変化や技術の進歩、労働力不足を補うためなどの理由もあって、国は企業に対して「自社の業務に支障をもたらすか否かを検討したうえで、労働時間外の副業については労働者の希望に応じること」を求めるようになり、そのため、正社員の副業を認める企業が増えてきている、ということです。

 

なお、パートタイム社員やアルバイト社員などについては、就労時間が短かく、副業の影響が生じにくいため、従来から副業を禁止していない企業も多いようですが、競業他社での就労や情報漏えいの恐れがある場合など、自社の秩序に影響がでるような場合はやはり制限・禁止されていることがあるので必ず確認しておきましょう。

 


副業のメリット・デメリットは?

副業を認める企業が増えていますが、副業許可にはメリットだけでなくデメリットもあります。

例えば次のようなことがメリット・デメリットといえます。

メリットデメリット
多様な働き方の許容による現有社員の離職防止人材の流出
従業者のスキル・経験アップによる自社への貢献企業秘密・個人情報などの漏えいリスク
副業者受け入れによる人材・労働力の確保従業者の健康管理、労働時間管理などの煩雑化、トラブルの発生

副業が認められることで、現有社員が求める働き方が可能になるような場合は人材流出を防止できますが、副業の方に魅力を感じて離職してしまうリスクもゼロではありません。

副業で得た経験やスキルが本業でも活かされる場合などは、企業にとってメリットになり得ますが、自社の営業秘密などを副業先に持ち出されて利用されてしまうリスクもあります。

また、自社に副業者を受け入れることで労働力を補えることはメリットになりますが、労務管理が煩雑化することや副業者への割増賃金支給などはデメリットになり得ます。

 

一方、副業する社員にとってのメリット・デメリットには次のようなことがあります。

メリットデメリット
収入増加確定申告など納税処理の負担
スキル・経験値アッププライベート時間の減少
自己実現の追求健康管理、本業とのバランスが難しい

当然ですが、本業を続けながら副業をすることになるので、収入は増えます。

また、将来起業を考えている人や、趣味・特技を活かしてフリーランスで働きたいと思っている人にとっては、本業で一定の収入をキープしながら、スキルアップや人脈確保、経験値などを得られるなどのメリットがあります。

一方で、休息時間やプライベートな時間が削られることにもなりますし、副業で得た収入についての納税手続きなどを自身で行わなければいけないこと※2などはデメリットといえます。

※2 副業分の収入分について、基本的には自身で確定申告しなければいけません。また、副業での年間所得が20万未満であれば確定申告は不要ですが、市区町村への住民税については20万未満であっても申告が必要になるので注意が必要です。

 

上記のメリット・デメリットをよく考えたうえで、企業は副業についての就業規則を整備し、社員は規則に従ったうえで(または本業企業に確認したうえで)副業するか・しないか、を選択しましょう。

 


副業を認める場合の注意点

企業が副業を認める場合、次のようなことに注意しつつ、就業規則などを整備して、社員に周知しておきましょう。

●副業する社員の健康管理・安全配慮

企業は社員への安全配慮義務を負っており、この義務は副業の許可・禁止に関わらず負うことになります。

副業する社員は、当然副業しない場合より労働時間が増えますが、そのことによって社員が健康を害することがないよう、健康診断の実施などで管理しなければいけません。

また、安全配慮義務は自社が本業であるか、自社が副業になるかも関係しません。どちらの場合でも社員の健康を管理する責任があることに注意しましょう。 

 

●副業する社員の労働時間管理

本業の労働時間と副業の労働時間は通算されます(労基法第38条)。

そのため、本業で1日8時間週40時間労働した場合、副業先での労働時間はすべて時間外労働(残業)となり、副業先企業が割増賃金を支給しなければいけません

本業・副業いずれも企業で働く(雇用される)場合、先に雇用契約を締結している企業が「本業」、後から雇用契約を締結した企業が「副業」とされます。

本業側で週40時間働き、それに加えて副業したい、という人を自社で受け入れる場合、自社が「副業」となるため割増賃金の支払い義務が課せられます。

本業が正社員で、副業がアルバイト(パートタイム)社員の場合でも、本業で1日8時間週40時間働いているのであれば、副業については割増時給の支払いが必要になります。

なお、副業を「個人事業主」として行う場合など、特定の事業者に雇用されずに副業する場合は、本業との労働時間の通算は不要となります。

 

●守秘義務遵守の確認

副業のために、自社の企業秘密が漏えいするおそれがありますし、本業で培ったノウハウや取得した顧客リストを副業先で利用されるリスクもあります。

そのため、守秘義務(自社の企業秘密を漏えいしないこと)や競業避止義務(競合他社に就労しない、競合する事業を行わない)について、副業する社員に周知し、場合によっては誓約書をの提出を求めるなどして管理しましょう。

 

●労災の適用

本業先から副業先に移動する途中で事故にあった場合、副業先の労災対象となります。

また、副業している社員が過労で倒れた場合などでは、本業と副業それぞれの業務上の負荷を総合的に評価して労災認定されることがあります。そのため、本業先での負荷、副業先での負荷、いずれも労災不認定であっても、本業と副業の負荷を合算した場合に労災が認められる、ということも起こり得ます。また、仮に副業先での勤務中に倒れたとしても、副業先だけでなく、本業先の労災の対象ともみなされる場合があるので注意が必要です。

 

●副業する社員が注意すること

副業を認められた社員は、健康、労働時間、税金や保険などを自ら管理しなければなりません。

本業・副業いずれについても秘密保持(守秘義務)や労務提供義務があるので、それぞれの企業秘密やノウハウを漏らさないこと、本業が副業に・副業が本業にそれぞれ影響しないように健康や睡眠時間を自ら適切に管理すること、確定申告や住民税を適切に申告する(そのための手続きを自ら行う)こと、などに注意が必要です。

 


副業を許可する場合の規定はどうすればいい?

厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」におけるモデル就業規則では、

  • 副業を希望する従業員は事前に会社に届け出ること
  • 「労務提供に支障がある場合」「企業秘密が漏えいする場合」「会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合」「競業により、企業の利益を害する場合」のいずれかに該当する場合は、会社は副業を禁止または制限できる

ことと示されていますので、これがスタンダードになっていくのではないかと思います。

あまり詳細にこの場合はOK、この場合はNGなどと決め過ぎてしまうと、労使双方やりにくくなるので、就業規則には大枠だけ規定し、副業希望者がいる場合、申請内容に応じて個別に対応していく、というやり方がいいかもしれません。

また、本業企業は社員の労務管理のため、副業先の情報もある程度把握しておく必要があります。

そのため、副業を希望する社員は、就労先の名称や事業内容、どの程度の時間労働するのか、どのような業務を行うのかなどについて本業先に申告しなければいけません。本業企業に知られたくないから、といって虚偽の申請をすると懲戒処分の対象にもなり得ますので注意しましょう。

  


という感じで、働き方や生き方は変化してきていますし、近い将来、ダブルワークス(どちらも本業)や、マルチワークスなどが当たり前になってくるかもしれません。

いずれにしても、自身が希望する働き方、生き方ができることが理想であり、無理・無茶はせずに休むときはしっかり休む、ということも大切ですね。

 

……そんなことを思っている本日の私の脳内DJのパワープッシュは、アンディ・ウォーホールのバナナなアートワークがあまりに有名過ぎるVelvet Underground & Nikoのデビューアルバム収録の名曲 “Sunday Morning” です。

歌詞の引用は控えますが、この歌の主人公は、せっかくの日曜の朝なのに、気怠く、なんとなく日々にうんざりしているような気がします(ルー・リードの歌い方のせいかもしれませんが)。

副業をすることで収入アップやスキル・経験アップなども期待できますが、休息時間が不足することで、心身に負荷がかかりすぎないよう、気を付けていきたいですね。

本日はこの辺で。

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