他者の文章やタイトルなどをSNSやブログ、広報誌に使う時に気を付けること ~ちょっとした著作権の話④~

本日のブログは、前回(ちょっとした著作権の話③)に引き続き、ちょっとした著作権の話第4弾になります。

第3弾では主に「画像・映像」を使用する場合について書きましたが、本日は「文章等文字もの著作物を企業ブログ・SNS・広報誌などに使う場合に注意すること」について、実際に相談された “あるある” な例をもとにまとめてみました(今回も約10分で読めます。毎回長尺になってしまいますが、興味のあるところだけでもお読みいただけると幸いです)。

なお、著作権についての詳細は、文化庁の「著作権」についての公式サイトをご参照ください。

 

あ、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

 


以下はすべて、当社内で判断した内容になります。必ずしも法的に正確な解釈ではない内容が含まれているかもしれませんし、以下の事例でOKとしたことが絶対に権利侵害にならないことを保証するものでもありません。ご了承ください。

雑誌や新聞記事、小説等の本文や漫画の使用

Q. ①自社が紹介された雑誌の記事や新聞記事を切り抜いた画像・文章を広報誌に載せたい、②お気に入りの小説や漫画の1部を自社のSNSに投稿したい、大丈夫だよね?

A. ①雑誌や新聞の画像・文章は、たとえ自社(自分)が紹介されている場合でも無断使用はNG。②小説や漫画の中身が読める状態の画像を投稿するのもNGだが、表紙ならOKの場合あり。いずれも引用の適正な範囲内であればOK

 

【雑誌や新聞記事について】

たとえ自社(自分)が紹介された記事であっても、新聞や雑誌の著作権は出版社(編集者やライター等)にあります。紙媒体であっても、WEB版であっても、また、ちゃんとお金を払って購入したものであっても、無断で複製してSNSなどに公開したり、印刷物に使用(転載)することは禁止されています

新聞や雑誌の記事の場合、出版社によっては使用料を支払うことで記事の複製使用を許可しているところもあるので、どうしても記事を複製使用したいのであれば、問い合わせてみましょう。

 

【小説や漫画について】

作品全部や数ページといったまとまった単位ではなく、「ごく一部」のみの画像であっても、無断で使用(転載)してはいけません。ただし、表紙の画像については、作品紹介目的や作品販売目的(通販サイト等での使用)などの場合の無断使用は許可されている※1場合があります。

※1 無断使用が許可されている場合でも、「表紙全体の画像を使う」「縦横比を変えない」「出版社・作品名・作者名などを明記する」などの引用要件、および、出版社の利用規約を遵守しなければなりません。

なお、ブログやSNSで小説や漫画を紹介したい場合は、出版社や作者の公式アカウントの投稿を「正規の手段※2」を用いて自身の投稿に表示させることで、無断転載にはならないように投稿することも可能です。

※2 例えば、作者のtwitterの投稿を自身のtwitter投稿に使用するなら「引用リツイート」、作品の公式YouTube動画を自身のブログに引用する場合は埋め込み表示を使用します(投稿や動画をスクショした画像を使用するのは避けましょう)。

  

~転載と引用について~

上記のように、また、以降の事例のように、他者著作物の無断転載は禁止されていますが、一方で、転載ではなく「引用」としての適正な範囲内なら、著作権者の許可なしで使用することができます

ということで、「転載」と「引用」の違いについて、以下にまとめてみました。

転載」とは、「既に公表されている第三者の著作物を別の場所(印刷物やSNSなど)にそのまま使用すること」です。

一方の「引用」は、「自身の著作物の中で、自身の意見や主張等を補足するために、既に公表されている第三者の著作物(の一部)をそのまま使用すること」です。

「引用」は「転載」の一種ではありますが、大きく異なるのは利用目的で、転載が「他者の意見や主張=著作物そのものを紹介するための使用」であるのに対して、引用は「自身の意見や主張をより理解してもらうための補足的使用」ということになります。

例えば、①の例の場合、「自社が紹介された新聞記事をまるごとスキャンした画像を、『〇〇新聞に紹介されました』という一文を付けて自社の広報誌に掲載する」ような使用は、他者著作物そのものを紹介するための使用なので「転載」に該当します。転載の場合は、必ず著作者の許可が必要になり、無断で転載することは禁止されています

そうではなく、「自社の活動についての詳細や活動の理念等を自身で書いた記事の中に、活動が外部に評価されていることの証拠として、自社が紹介された新聞記事の見出しなど一部のみの画像を出典を明記して1~2枚程度小さく掲載する」という使用であれば、自身の意見や主張のための補足なので、引用になり、無断で使用してもOKということになります。

  

ただし、「引用の適正な範囲内」として認められるためには、次の引用要件を「すべて」満たしている必要があります

  • 自身の著作物が「主」であり、他者著作物が「従」であること
  • 公表されている著作物からの引用であること
  • 出典(作品名・著者名・出版社名・出版日等)が明記されていること(ブログやWEBニュース記事の引用の場合はリンクURLや記事の公開年月日も併記しておく)
  • 書体、文字の大きさや色、記号等によって、自身の著作物と引用部分が明確に区別され、「引用」であることが容易にわかること
  • 引用の目的上正当な範囲内での使用であること
  • 引用部分に改変・編集を加えていないこと

引用は、「公表されている著作物」しか認められません。つまり、下書きの段階で非公表のままになっている論文や小説の原稿、あるいは、「個人宛に送られた」手紙やメールの本文の無断使用は引用として認められません(画像、またはテキストとしての使用どちらも)。本人の許可が得られない限りブログ等に載せてはいけません。

また、他者著作物を改変して使用することは、引用のつもりであっても禁止です(表紙のデザインからキャラクターのみ切り抜いた画像を使用する、小説などの別々の箇所の文章を繋げてひとつの文章にする、などはNG)。

 

  

小説や歌詞の一部、他者のブログやSNSから複製したテキストの使用

Q. ③大好きな歌の一節を自社広報誌のエッセイで紹介したい、④気になった他者のブログやSNSの投稿から、一部分のテキストを複製して自分のブログに使用したい、批判するために使うわけではないから大丈夫だよね?

A.③小説や記事、歌詞等の文章も「転載」はNG。④他者のブログ等ネット上の記事(文章)も著作物なので「転載」はNG。いずれも「引用」であればOKだが、ブログやSNSには独自の引用ルールもあるため、必ず事前に確認すること。

 

【小説の一節や歌詞について】

小説や歌詞の一部を自身のブログやSNS、広報誌(書籍)に使用する場合も、無断転載はNG、引用の適正な範囲内での使用であればOKとなります。

小説全体や1曲分の歌詞全部(またはそれらのが読める状態の画像)の使用、あるいは、自身の意見や主張なしで、ただ小説の中の好きな一節や歌詞を掲載するだけの場合は引用には該当しません。好意であってもやめましょう。

   

【ブログやSNS投稿の引用について】

ブログやTwitter・Facebook等SNS上の投稿を引用として使用するケースも増えていますが、ネット上で公開されているブログやSNSへの投稿も、基本的には投稿者の著作物となります(日常的な挨拶程度の投稿や他者の著作権を侵害している投稿は除きます)。簡単に複製(画像化)できてしまいますが、無断転載は禁止されます。

また、引用に該当する場合であっても、SNSなどが定める利用規約を守り、許可された手段を用いて引用(自身のブログやSNSへ表示)しましょう(上記※2参照)。

広報誌等紙媒体へSNS投稿記事を引用する場合は、文章(テキスト)かスクショした画像を出典元(投稿URLや投稿者名など)を明記して引用することになりますが、たとえ引用として認められる使用であっても、事前に投稿者に使用の許可を得ておいた方がよいでしょう。

ただし、一般人の(特に匿名での)投稿は、必ずしも正確な情報とは限らないものもありますし、他者の著作権その他権利を侵害しているような場合もあります。引用する際はその点にも注意が必要で、あまり安易に他者の投稿やブログを引用するのは控えましょう。

  

小説・ドラマ・曲のタイトル、ギャグや決め台詞の使用

Q.⑤自社ブログのタイトルや広報誌のコーナータイトルに大好きな曲と同じタイトルを付けたい、⑥社員紹介動画内で、お気に入りの芸人さんのギャグをマネして登場したり、ドラマの主人公の有名な決め台詞を使いたい、大丈夫だよね?

A. ⑤⑥タイトルや決め台詞等の「短い言葉・短い文章」は著作物とは認められない場合が多いので、基本的にはOKだが、すべてがOKとは限らない。芸人さんやドラマ等の人物の動きや見た目、一連の流れ等を総合的にマネする場合は著作権の侵害になり得る可能性はある。

   

【タイトルやキャッチコピーなど短い文章について】

実は、「タイトル」などの短い文章は著作物とはみなされない場合が殆どのようです。タイトル以外にも、ドラマなどの登場人物の決め台詞、芸人のギャグ、商品広告のキャッチコピー等の「単語や短い文章」は著作物とは認められていません。たとえ、それが誰もが知っているような有名なドラマや曲のタイトルであっても、流行語大賞にノミネートされるような言葉であっても、誰もが “あの人のネタだ” とわかるようなギャグであっても、です。

ただし、作品タイトルなどは「文字の商標」として商標登録されている場合があります。そのため、有料の企業ブログ(ネットサロン)や有料の広報誌のメインタイトル等に作品名や台詞を使用すると商標権の侵害となる可能性はありますし、「タイトルロゴ(文字の形状・色・配置などのデザイン)」は著作物になるので、無断転載はNGです。

また、ドラマの1シーン(人物や風景、セリフや効果音、BGM等の集合体)や動作・間・動きも含めた芸人さんのコント・漫才などは創造性のある著作物となり得るため、企業のブログやSNS、広報誌等に画像や映像を使用する・マネた動画を投稿するなどは避けた方がよいでしょう。

  

自社広報誌や自社社員のブログ内の文章、納品した成果物内の文章の使用

Q. ⑦同僚が書いた社員ブログや広報誌の文章を自分のブログで使用したい、⑧お客様に依頼されて作成した印刷物内に記載した、自社で作成した文章(お客様の依頼で自社内で文章を考えたもの)の一部を自社のブログに使用したい、大丈夫だよね?

A. ⑦自社の業務として作成した広報誌やブログの文章の著作者は企業になるので、業務として作成するブログであれば使用してもOK。⑧お客様に納品した成果物の著作権については個別の契約を要確認

   

【自社の広報誌や他の社員の書いた記事について】

会社の指示、または会社の許可を得て作成されたブログや広報誌内の文章であれば、特定の社員が書いた文章であっても会社が著作権を持つことになります(職務著作※3)。

※3 企業名と投稿者名を併記している場合で、権利帰属が企業になることが明示されていない場合は、たとえ業務として作成している場合であっても、職務著作が認められないこともあるのでご注意ください。

そのため、別の社員が作成した文章でも、会社の「業務として」広報誌やブログに引用または転載する限りは問題ありません。とはいえ、社内に元の文章を作成した社員がいるのであれば、ひと声かけておいた方がよいと思います。

 

【成果物内の文章等について】

お客様の依頼で作成した印刷物やWEBコンテンツ等に使用した、自社内で作成した文章の著作権は基本的には作成した者(この場合は自社)にありますが、著作権譲渡契約※4を締結している場合は納品先(お客様)の許可なく自社で使用することはできません

※4 著作権のうちの譲渡可能な権利は譲渡し、譲渡が法律で認められていない著作者人格権は「行使しない」という契約を締結するケースが多いです。必ず契約内容を確認しましょう。

もちろん、契約上使用に問題がない場合であっても、事前にお客様に使用許可を得ておいたほうがよいでしょう。

 


……などと前回に引き続き、今回も長々と書いてしまいましたが、著作権等の権利関係は複雑であり、ここに記載した内容が法的に正しいことを保証するものではありませんのでご了承ください(当方、あくまでも素人です)。

現実問題としては、よほど悪質な場合を除き、著作権などの侵害となるような投稿であっても、訴訟問題などに発展することは殆どないと思いますが、少なくとも、企業の名で公開・発行するブログや広報誌であれば、権利を侵害してしまわないよう、配慮することは企業の社会的責任です。

著作権(+その他知的財産権やプライバシー権なども)について正しく知って、正しく利用していきましょう!

……ということで、本日の私の脳内DJのパワープッシュは、少し冷くドライな質感の音とメロディが、まだまだ続く暑さにダウン気味の私をチルアウトさせてくれるスウェーデンのバンド、The Bear Quartetの “It Only Takes A Flashlight To Create The Monster”。

この曲のサビでは、降りしきる午後の雨の中で、“権利や名声の再利用” “ありがたい浪費” として行われることを皮肉を込めて(だと個人的には解釈しています)歌っています。

ただ浪費する(ちょっとしたネタにする)ためだけに他者の権利を侵害してしまわないように注意しつつ、かといって、萎縮しすぎて何も発信できなくなってしまわぬように、配慮しながら発信していけたらな、と思ったり思わなかったりしおります。

 

参考:文化庁「著作権」(WEBサイト)、「ちょっと待って、そのコピペ!著作権侵害の罪と罰(林 幸助著、実業之日本社発行 2008年第1版)」、「はじめての著作権法(池村 聡著、日本経済新聞出版社発行2020年第3版)」、「図解わかる著作権(中川達也監修、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会編集、株式会社ワークスコーポレーション発行2010年第1版)」、「著作権トラブル解決のバイブル! クリエイターのための権利の本(著者:大串肇、北村崇、染谷昌利、木村剛大、古賀海人、齋木弘樹、角田綾佳 発行・販売:株式会社ボーンデジタル (2018年第1版)」、その他弁護士や有識者等のブログ記事等(順不同)

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