日本語には同じ音で、同じ読みで、でも違う漢字が充てられることがままありますよね。
いわゆる同音異義語というやつ。
音にすれば同じ響きの筈なのに、意味が異なったり字面から受ける印象が異なったりが面白くて、だいすきです。
綺 麗 / 奇 麗 許 す / 赦 す 優しい / 易しい
漢字の問題ならどれもどちらも正しいですが、言葉が文章の、会話の流れの一部である以上は文脈に沿ったものが選ばれるべきです。
言葉の表面上は似ていても、表現した内容にも影響が出ることがあります。
些細なものでも。
だから言葉選び、漢字選びはたのしいのでしょう。
でも逆に。
選ばなければ、どちらにも成れる。
受け手が意味を選ぶことができる。
あるいは、どちらの意味も持たせることができる。と言うこともできます。
何故いきなりこんなことを考え出したかというと、欲しくて申請していた本を
会社で買って頂いたからです。
とても嬉しかったのでご紹介させてください。
その名も、
「やさしい日本語」表現事典(編著 庵功雄,令和2年7月,丸善出版)。
昨年10月の記事でもチラッとネタにしましたが(コレです)、日本で暮らす、日常会話なら日本語が分かる外国人の方(Not英語、中国語、韓国語話者)にきちんと伝えるための工夫、それが「やさしい日本語」です。
先日お仕事させていただいた案件に、やさしい日本語版のページがありました。
そこでの表現/配慮が適切かどうか確認したくて、改めて調べた時に出会った本です。
ネットで検索すると、自治体が作成したガイドラインは見付かるのですが、具体的な事例に中々行き当たらず……。
有力な参考資料として、弘前大学社会言語学研究室が長年かけて構築していたデータベースのリンクが省庁㏋にも貼ってあったのですが、残念ながら2020年の1月で研究室の㏋が閉鎖、データベースも閲覧不可になっていました。
何とも悲しいことですが、仕事を全うするためには立ち止まってはいられません。
その時の案件はガイドラインを参考にするなどして無事に終わりました。
が、MUD(メディア・ユニバーサルデザイン)に取り組む弊社としては、「外国の人にも伝わりやすい」は大事な観点です。
今回のコロナ禍の影響もあり、そうした視点のお仕事も増える筈!と頼りになる本探しをしたのでした。
どうしてこの本を選んだのかというと、まずタイトルが素敵です。
だって「事典(ことてん)」なのです。
「やさしい日本語」というものの考え方(も勿論ですが)より、具体例、「どのように表現するのが適切なのか」を知りたい立場として、「事典」というだけでそれを叶えてくれることが明らか!
(辞典(ことばの解釈) / 事典(ものごとの説明) / 字典(文字そのもの) の違いもすきです。みんなすきです)
まぁ紹介ページに目次が載っていたので、タイトルだけで決めたわけではありませんが。
本の内容について、結論から言うと、とても参考になりました。
事例ごとに書き換え前→後と書き換えのポイントが載っていて分かりやすかったです。
実際にターゲットとして求められている時以外にも、「伝わりやすい表現」を考えるにあたって、忘れてはいけない視点だと感じました。
あと、本の帯に載っていた言葉が個人的にすきです。
『ともに生きていくために、いま考える日本語のこと』
“日本語”のルビ(ふりがな)は「ことば」です。
簡単という意味の「やさしい(易しい)」と、
伝わるように、という相手への気持ちの「やさしい(優しい)」のダブルミーニング。
初めて「やさしい日本語」という考え方を知った時は、単に字面から受ける印象優先の表記選択かな?なんて思っていたので、ちょっと、かなり反省しました。
漢字を選択すれば、より伝えたい言葉の意味をはっきりさせることができる。
逆に、あえて選ばなければ広く、より多くの意味を内包することもできる。
「表記」って、本当に奥深いですね。
つい日頃はスマホなんかで入力する時に、予測変換なんかでズラッと出てきた中から何気なく選びがちです。
たまには、その変換が適切なものか考えてみるのも良いかもしれません。
何気なく過ごしていた気付きがあるかも。
とにかく漢字に変換しがちな わたしへ、自戒をこめて。
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