僕たちはどう休むか(有給休暇義務化について)。

4月1日より、労働基準法改正に伴う有給休暇(年休)義務化がスタートします。

労基法等の労働関係法は日本の労働(=経済活動)という競技の「最低限の」ルールを定めたものであり、このルールを守らずに競技に参加するのは「ゴールキーパー以外は手でボールを使ってはいけない」というルールを守らずにサッカーの試合に出場するようなものてす。

しかし、実態としては、ルールをよく知らなかったり、反則をとられない程度にルールを無視したり、ルールを都合よく曲解したりしている監督や競技者が多いのではないでしょうか

どうも、マルワのシャドーサイドあれこれ担当です。

今回は、有給休暇義務化について素人なりにまとめてみた、という内容です。


新ルールにより、年間10日以上の有給休暇取得権利を持つ社員については、そのうち年間※で5日分は企業からお願いしてでも休ませなくてはいけません(既にすべての対象者が年間5日以上有給休暇を取得していて、管理簿の作成と保管も実施済みの場合は特に何か変える必要はありません)。

※この場合の1年間とは基準日(有給休暇付与日)から1年間という意味です。例えば4/1入社の社員の場合、半年後の10/1が基準日となり、10/1から翌年9/31までの間を1年間とします。ただし、基準日は各企業によって異なる場合があります。詳しくは厚生労働省配布資料をご参照ください。
※5日分とは、有給休暇でまる1日休む日×5日とされます。半日休や時間休が認められている職場の場合、例えば0.5日休×10回で5日分とはなりません。最低5日はまるっと1日有給で休む必要があります(2021.02.15追記)。

全ての事業者(企業)が対象となるのですが、調査によると、中小企業経営者の約25%は法改正があることすら認知していないといわれています。

また、労働者も有給休暇をあまり積極的には取得していない人が多いようです(日本人の平均取得率は約50%程度で、1年間で1回も取得していない(休んでいない)人も正社員全体の約15%ほどいる、という調査結果もあります)。

そこで、素人なりに今回のルール変更について誤解されやすいポイントを8つあげてみたのでご一読ください(それは違うよ!等あればご指摘いただけると助かります)。

とはいえ当方素人なので、正確な情報は厚生労働省の「わかりやすい解説」をご参照いただくか、信用できる社労士さん等にご相談ください。(2019年3月29日追記:厚生労働省公開のわかりやすい解説PDFへリンクを変更しました)

誤解①有給休暇取得にはそれなりの理由が必要

×特別な理由なんていりません。

今回の法改正とは関係ありませんが、最も基本的なことでありながら、案外勘違いしている人が多いようですので最初にあげてみました。
有給休暇は労働者に与えられた権利のひとつであり、基本的にいつ・どんな理由で取得しても問題ありません(体調不良の時にしか使えないなんてこともありませんし、忙しいから使っちゃダメということもありません※ また、理由によって可否を決めるのは法律違反です)。
権利の範囲内で積極的に有給休暇を取得し、リフレッシュして、業務で成果を出せるようにがんばりましょう。

※正常な事業運営に支障が出る場合は「他の時季にこれを与えることができる」と労基法第39条第5項に規定されています(時季変更権)。「正常な事業運営に支障が出る」場合の定義は曖昧ですが、やむを得ない場合は、別の日に有給休暇取得を変更してもらうようにお願いする(される)ことは認められています。なお、有給休暇申請を拒否することはできません。

誤解②自らの意志で「有給休暇いりません」、なら問題ない

×問題あります。

有給休暇が10日以上付与されている社員(半年以上勤務し、全勤務日の8割以上出勤している社員)全員が取得義務化の対象です。1年間で最低5日休暇を取らせないと違反となり、企業には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
自らの意思で有給休暇を使わないような場合でも関係ありません。会社に迷惑をかけたくないのであれば、年間最低5日は有給休暇を使って休みましょう。

誤解③使える有給休暇が5日分だけになる

×「義務化」された有給休暇取得が5日分なだけです。

最低でも全員5日分は有給で休みなさい、というだけです。自分が持っている有給休暇を全部使っても問題はありません。5日分の取得が義務化されたことによって逆に5日以上の有給休暇が取得しずらくなるような雰囲気(6日目以降の有給休暇を拒否する、嫌な顔をする等)には絶対にしないようにしましょう。

誤解➃中小企業には関係ない(というか無理)

×すべての企業に「義務化」されます。

人のやりくりが大変かもしれませんが、取らせないわけにもいきません。自社の状況によって、個別対応するか、会社全体または部署単位(グループ単位)でスケジュールを立てて消化するか等やり方は様々あります。なるべく事業に影響がでないように、計画的に実施していきましょう。

誤解⑤パートタイム・アルバイトには関係ない

×勤続年数や出勤日数の条件を満たしていれば対象になります。

パートタイム社員やアルバイト社員であっても、1年間の有給休暇取得日数を10日以上保有している社員であれば、今回の義務化対象です。休んで(休ませて)ください。
※パートタイムやアルバイト社員の場合でも週に5日以上出勤している場合は正規社員と同じ日数が、それ以下の場合出勤日数に応じて比例付与されます。

誤解⑥会社が勝手に有給を使える時季を指定できる

×「本人の希望を踏まえ」事前に時季を指定して与えられる、とされています。

会社が指示してでも休ませないといけないとはいえ、まずは本人の希望を尊重し、そのうえで会社が調整することは許します、ということです
また、社員が自ら希望して取得した有給休暇も含めて5日分なので、好きなときに有給を使いたい、というのであれば、早めに自分の休みたい日の有給取得届を出しておけばOKです。

誤解⑦年間休日を減らして、有給休暇をとらせればいい

×社員に無断で年間休日を減らすのはルール違反!

今決まっている会社の年間休日(所定休日・所定休暇)を事業者(会社)の独断で減らすことはできません(当然ですが、毎週少なくとも1回の休日、または4週を通じて4日以上の休日は「法定休日」として定められており、これらを変えることもできません)。
休日数や休日の時期を変更するには就業規則の改定や労働組合(または労働者過半数の代表者)の合意が必要で、従業員にとって不利益な変更(休日が減る=労働日数が増える)には相応の合理的な理由も必要です。有給休暇を取得させるために年間休日を減らすのは合理的な理由ではないので、労働基準監督署等から指導を受ける可能性があります
また、企業独自の「特別休暇」は今回の義務化対象外です。例えば、慶弔休暇や夏季休暇を特別休暇(有給)
としている場合、5日以上有給で休暇をとらせていればそれでOKかというとそうではありません(ただし計画年休※の場合はOK。ややこしいですね)。通常の有給休暇から5日分の取得が義務とされていますので、特別休暇とは別に5日は有給休暇を使って休み(休ませ)ましょう

※計画年休には就業規則への明記と労使協定の締結が必要です。

誤解⑧有給休暇をとった(とらせた)ことにしておけばバレない

×年次有給休暇管理簿の作成及び保管が義務付けられています。

時季(日付)・日数・基準日(有給休暇付与日)を「労働者ごと」に管理するための管理簿の作成と保管が義務付けらます(単独の帳簿である必要はないので、賃金台帳や労働者名簿等に項目を追加しても可)。
保管は有給休暇付与期間(1年)+その後3年間とされています。何か問題が発生した(またはその疑いがある)場合は、労働基準監督署等からチェックされるので、「嘘」は厳禁です


いかかでしたでしょうか?本当はもっといろいろ書きたいのですが長くなるので(すでに十分長い?)割愛いたします。気になる方は関連する書籍も多数出ていますので、ぜひ読んでみてください(社労士さんや弁護士さんのwebサイトも参考になります)。

「働き方改革関連法(そんな法律はありませんが、労基法等今回の労働関係法改正の総称としてこう呼ばれています)」によって、有給休暇5日分取得義務化以外にも次のような改正が同時に、または順次施行されていきます。

  • 残業時間の罰則付き上限規制
  • 勤務時間インターバル制の努力義務化
  • フレックスタイム制の柔軟化
  • 高度プロフェッショナル制導入
  • 割増賃金(残業代)割増率の中小企業猶予の廃止
  • 同一労働同一賃金の原則適用
  • 産業医の権限強化

要約すると、長時間労働の是正を含む多様な働き方を推進し、効率よく働くためにルールを変えていく、ということです。今まではこれでよかったから(こうしてきたから)…は通用しなくなります。休む人がいることを前提とした体制の整備」を進めていかなくてはいけないと思います。

逆に私たちがサービスや商品の提供を受ける側に回ったとき(利用者となるとき)に、「提供者だって休むもの」であり、「今までより多少不便なこともあるということを忘れないようにしないといけないな、と自分自身にも言い聞かせていこうと思います(先月の私のブログにも書きましたが、すべての物事には表もあれば裏もあります)。

自分の休みが増えることはウェルカムでも、他人の休みが増えて自分に不都合な影響がでると(コンビニが22時で閉まって夜中にジュースが買えないとか、商品が希望日時に届かないとか)文句をいう人も増えるものですが、それでは改善されていきませんよね。


…などと書き立てましたが、「どのように」この制度に対処するかよりも、もっと重要な(そしてまずもって考えなくてはいけない)ことは、「なぜ」このような制度がはじまるのか、ということだと思います。

せっかくなので、職場の体制や仕事の手順、自分の生き方を改善していくいい機会だと思ってポジティブにいきましょう!(珍しく前向き)

…ということを書いている頭の中では、サイモン&ガーファンクルの “April come she will” がリピートされ続けておりました。

April…の歌詞のように、9月になったら「そんな制度もあったね(遠い目)」なんてならないことを願いながら。


2019年3月29日追記

厚労省が公開している「わかりやすい解説」(PDF)が文字通りわかりやすいのでリンクを貼っておきました。

このブログでは書ききれなかった「こういう場合はアリ?ナシ?」や計画年休を設定する場合の決まりなどQ&A付でまとめられています。

ぜひご一読ください。

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