さようなら、またいつか!

 先日、長年にわたって愛されてきた国産スポーツカーの生産終了がニュースになりました。
 私の学生時代はスポーツカーやデートカーが、ステータスの証でしたが、憧れだったあのクルマが時代の流れとともにその幕をおろす。そのニュースを目にして、思わず某人気歌手へのオマージュを込めて「さよーなら、またいつか」という言葉が頭をよぎりました。

 私たちの身の回りには、いつの間にか姿を消したものが数多くありますね。子どもの頃に食べた駄菓子や毎日のように観ていたテレビ番組、コンビニに当たり前に並んでいた雑誌、そして本屋さん。どれも当時は無くなるなんて思っていなかったのに、気づけば「もう手に入らないもの」になっていました。

 だけど、不思議なことに“消えたまま”とは限りません。ある日突然、復活のニュースが飛び込んでくることがあります。たとえば、長年販売休止となっていた飲料が「ファンの声に応えて」限定復活したり、往年のテレビ番組がリバイバル特番として再びお茶の間に帰ってきたり。人の記憶に残るものには、いつかもう一度脚光を浴びるチャンスが巡ってくるのかもしれません。

 誰しもが「失って初めて、その存在の大きさに気づく」という経験があることでしょう。なくなった瞬間に惜しむ気持ちが生まれ、それが復活を願う声へとつながる。そう考えると、“さよなら”は決して永遠の別れではなく、“またいつか”への約束でもあるのだと思います。

 では、私たちの仕事である印刷業界ではどうでしょうか。インターネットやデジタルの普及に伴い、「紙の役割はもう終わったのでは」と言われることは何度も。しかし実際には、紙ならではの手触りや、ページをめくる喜び、形として残る安心感は、簡単には代えがたい価値だと思います。某大手企業の社内報がデジタル化した後に、社員の熱い要望で紙になったなど、一度は縮小した冊子やカタログの需要が、近年また見直されているのもその証拠でしょう。

 冒頭のクルマ業界でも最近は紙のカタログが無くなっていますが、いつか復活することを願っています。

 消えていくものに別れを告げることは寂しいことです。けれど、開発者の方が、またいつかお会いしましょうと言っていたように、スポーツカーが再び道を駆け抜ける日を願うとともに、私たちもまた、印刷とそのまわりにあるものを、新しい形で発信していきたいと思いました。

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