面白いと、AIと

先週の月曜日、マルワで愛知県印刷工業組合の新入社員研修「企画提案とプレゼンテーション 」が行われました。
他の研修に比べ、受講生のみなさんがグループに分かれてワイワイとCMを作るワークショップがあることもあり、とても賑やかな内容となっています。


僕も講師を務めました。
今年で3回目になります。
企画提案に役立つ「いろんなアイデアの出し方」をテーマに40分ぐらいお話しします。
毎年、同じPowerPointのスライドでも良いのですが、ちょこまかと思いついたときに変えています。
今年追加したのは昨年受講したマーケティングのセミナーで聞いた「人が嬉しいと感じることをアイデアに結びつける」と、生成型AIの取り扱いについて。


生成型AIについては付け焼き刃な知識なので受講生の方が詳しかったのかもしれません。
この生成型AIのスライドを作っているとき(手動で作っているのが落語のように滑稽なのですが)「アイデアの出し方自体、もう来年はやらなくて良いのではないか」などと、ぼんやり考えていました。
有名なアイデアの定義に「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と言うものがあります。
とても、生成型AIが行うのに得意そうなジャンルです。
未来は会議的にアイデアを考えるのではなく、個々で数百、数千のアイデアを考えるのが当たり前。
もう来年の新入社員研修は「どうやって生成型AIを使いこなせば、良いアイデアができるのか」を講義だけすれば良いかもと思っています。


……思っていながら、懐疑的なところもあります。
それは2つの「面白い」がキーになると考えています。


1つは「面白い」を判断するスキルの低下。
生成型AIで作り出すものは中央値的な面白いもの、すなわち今まで売れたものヒットしたものに近いものばかりになってしまうと考えています。
その中からどれが面白いのか選ぶことスキルや、それ以外の突拍子もないアイデアを思いつくスキルは、AIに従ってばかりだと、どんどん低下すると思っています。
数学者の新井紀子さんの受け売りですが、常に色々な体験をして、自分の人間力で物事を見る目を養っておこうと思っています。
たとえば、飲食店や映画などの評価サイトを参考にすることなく五感で決める。
流行なことも経験しつつ、誰も行かないところ、誰もやっていないことを経験する。
そこを養っておくと生成型AIで生成したものにチョイ足しも出来、結果それがオリジナリティや作家性みたいなモノになり独自化できるのではと思っています。


もう1つは考えている時の「面白い」への欲求。
毎回、受講生の皆さんのアンケートを見ていると、自分たちが考えたことをカタチに変えていく面白さを
感じてもらっていると実感しています。
中には「自分のアイデアがグループ内で採用されなくて悔しい」という感想もいただきました。
この作っていく楽しさと悔しさが「面白い」と、年を重ねるごとに思います。
AIが考えたものに、ただただ乗っかって提案するより、自分で手塩にかけて作ったアイデアの方が、愛着が沸きます。
自分の手でつくったものには、そのものが本来持つ以上の価値を見出すという、IKEAの家具に準えて「IKEA効果」と言われる人間の心理的傾向です。


愛着がある方が、より深く、より情熱的に、進めることは想像に難しくありません。
AIと共創しながら、愛あるものを作る方が面白いし、幸せだと思っています。
星新一さんのショートショートなら、以上の文章もAIが書いていますが、なかなか楽をさせてもらえません。

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