繁忙期も終わり仕事も落ち着いて来た4月、何気なくfacebookを見ていたときに見つけたセミナーが、名古屋意匠勉強会ナルホ堂さん主催の「筑紫書体と中村書体」でした。
登壇されるのは、フォントワークスで「筑紫書体シリーズ」を制作されている藤田重信さんと、フォントがアナログ(写植)だったころに「ナール」「ゴナ」という丸ゴシック・ゴッシク体を制作された中村書体室の中村征宏さんということで、名古屋では珍しいフォントセミナーに、「これを逃すと名古屋では二度とないかも!」と即決で申し込み手続きをしました。
(どちららというと人見知りの私は、一緒に行く人がいれば参加というのがいつもの姿勢ですが、今回ばかりは一人でも参加しようと思い立ったのです)
セミナーは定員100名が満席で、参加者の8割が名古屋以外の方たち。東京や大阪、九州から参加されている方もいらっしゃったようで、感心の高さに驚きました。
中村さんが制作した「ナール」は、第1回の石井賞国際タイプフェイスコンテストで第1位を獲得したそうです。アナログの時代では見出し文字は、写植で字詰めをしたり、文字を一文字ずつ切って手作業で詰めたりという作業を行っていたのですが、中村さんは「ベタ組みで印字しても行として美しい書体ができないものだろうか」という発想から、仮想ボディを目一杯に使用した「ナール」をつくったそうです。「ナール」が発表されたことでその後の丸ゴシック体のデザインには大きな影響を及ぼした書体で、現在でも「ナール」のデジタルフォント化を望む方は多いそうです。
藤田さんの「筑紫書体シリーズ」は、活版や写植時代の“にじみ”“ぼけ”“インク溜り”を意識して設計されているということでした。個性的でかつ美しい筑紫明朝は、書籍の装丁にも本文にも適しているということで、思想・哲学書に多く使われていると聞いて、自宅の書籍に筑紫明朝を見つけた時にはうれしくなってしまいました。
約4時間のセミナーの中で、お二人から書体デザイナーになったきっかけや、かつてフォントがどのような存在であってどう変化してきたのか、どんな視点・思いでデザインしていて、今後さらにどう変化していくのかなど、書体の造形の魅力はもちろん、お二人の感性や視点をお聞きでき、本当に貴重な時間を過ごさせていただいて良かったと感じました。
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