〇〇至上主義からの脱却

久しぶりに〇〇シリーズの投稿です。
至上主義と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?
「実力」至上主義、「売上」至上主義、「芸術」至上主義、「白人」至上主義などなどありますが、今回は「勝利」至上主義について思ったことについてお伝えできればと思います。

それは前回の投稿で「弱くても勝てる」を題材にしたのに続き、高校野球のお話になります。
高校野球といえば「甲子園」ですよね。特に夏の甲子園は地方予選から負けたら終わりのトーナメントの「絶対に負けられない戦い」から生まれるドラマに多くの人が熱狂します。
加えて甲子園や野球に限らず、高校生の競技は大多数がトーナメント戦っていう印象です。

トーナメント戦は負けたら終わりだから、どうしても勝つことが目的になって「勝利至上主義」に繋がってしまいます。
乱暴に置き換えると、勝つためなら何でもやる。極端な戦術をとったり、相手を揺さぶるためにヤジを飛ばし合ったり。。。
ところが高校の野球界でも最近はそんな勝利至上主義にアンチテーゼを唱える動きが広がっているそうです。

それが「Liga Agresiva」(スペイン語で先進的なリーグ)というリーグ戦の枠組みです。
このリーグ、地域毎に参加しているチームで総当たりのリーグ戦を行うだけではなく、 原則として全員が試合に出る。球数制限を徹底し、変化球の使用も制限される(スライダーやフォークボールは禁止!)。送りバントの回数も制限。高反発の金属バット禁止で低反発金属バットか、木製バットに限るなどなど様々な取り組みがあります。
野球本来の「打つ、投げる、走る」の原点に戻って、選手に「野球をする楽しみ」を体験させることを重視しているとのこと。
そのうえ、指導者も選手と一緒に「スポーツマンシップ」やリーグ戦を行う意義などのセミナーに参加して学ぶんだそうです。

最近は高野連も登板制限や休養日を設けたりして変わってきたなあ、という反面エースが「腕が折れるまで」投げぬいた結果、選手生命を棒に振る、なんてことも過去にはあった。
そんな反省を踏まえ、勝利至上主義から脱却して、選手をすごく大切にする仕組みづくりをしていることが伝わります。

そんな「Liga Agresiva」ですが、最初は大阪、長野、新潟の3県で始まったそうです。実際にリーグ戦をやってみると、飛ばないバットを使うから点が入りにくくなる。バッターは道具に頼らず、遠くに飛ばすための技術を研鑽する。投手は強打者相手にも怖がらずに攻めのピッチングができる。守備をする側も打球が早くないから、ボールに突っ込んでいける。
そのうえで負けても次があるから、失敗しても次に活かせますよね。
試合中もファインプレーには敵味方関係なく拍手が出たり、エラーなどがあってもみんなでドンマイ。だいぶ印象が変わります。
何より私が良いと思ったのが、試合が終わった後は両チームが車座になって試合の反省会を行うところ。あのワンプレーはどういう意図だったか、実はあのプレーは、、、といったことを共有して新たな学びに繋がっていくのが素晴らしい。将棋の対局が終わった後の感想戦に似てますね。

私たちの身の回りではなかなか負けたら(失敗したら)終わり。なんてことはそうそうありませんが、うまくいった時もいかなかった時も、後から振り返ることは大切ですね。

さて、3つの県で始まった「Liga Agresiva」ですが、関係各位に共感を呼び、今では31都道府県にまで広がりをみせている様相。
2021年から参加したのが神奈川の慶応高校。お分かりのことと思いますが、2023年の夏の甲子園優勝校。このリーグ戦の参加が全てではないにせよ、成果につながっていることと思います。

われらが愛知県は今のところ一校も参戦予定なし。「野球王国愛知」復活を願う一県民としても気になる話題でした。

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