企業経営では攻めは簡単だが、撤退は難しいといいます。撤退が難しいのは、もう少しやれば結果がでるという期待感や費用対効果もあるでしょうし、一方で今更引くに引けないというつまらないプライドのようなものもあります。
新しいことをやるときには果たして成功するだろうかという心配もありますが、新たな事をやるという前向きな気持ちが後押しすることもあります。こうした心の葛藤を経て、いざ動き出すと撤退できないというのはなんとも皮肉な感情だと思いませんか。
辛坊治郎さんがヨットを捨てて救命ボードに乗りましたが、その行為を評価する声が多いのは潔い撤退だと思われているからだと思います。さぞかし格好悪いと自身でも思っていたと察しますが、こと命を考えればそんなことは言ってられません。
ところが、これがこと経営となると引き際が甘くなってしまうのはなんとも皮肉なものだと感じます。私のような後継者は、あるものを引き継いだだけに、新たな事へのチャレンジは先代ほどの度胸はないものの、一歩踏み込んだ後の引き際は別ですね。
人はつまらないプライドで大事な判断を誤ることが多いと感じます。よく成功社長の話を講演会で聞くことがありますが、いくら聞いても上手いくか否かは社長を演じている人柄、個性に左右されてしまいますから、結局は自分次第だと思います。
冒頭に書いた引き際もあくまで一般論、攻めていくことが正解か、引き際がいいのかは結果が全てですね。ただ冷静に判断する力、つまらないプライドに惑わされることだけは避けたいと思っています。
経営を引き継いで15年目になります。数々の先輩社長との出会いがあり、そのつどご指導をいただきなんとかここまでやってくることができました。そしてあらためて感じることは、経営というものの難しさ、そして正解がないということですね。
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