「ないものを作る」先日の中部マーケティング会議でお話を伺った錦見鋳造㈱の錦身泰郎社長の言葉です。「魔法のフライパン」といえば分かるでしょうか。30ヶ月待ちの厚さ1.5㎜のフライパンを製造している会社です。
元々は下請け会社でしたが、大手製造業が協力会社を中国に進出する時に、中国の工場並みに値引き交渉をされて、「それなら」と自社オリジナル製品を開発したのが魔法のフライパンです。
2㎜の厚さも厳しいそうですが、さらに0.5㎜薄くするのは至難のワザだといいます。それだけにここまで薄くすると熱効率もよくなり調理の時間もグッと短縮できるそうです。これが評判を呼び、冒頭の30ヶ月待ちのフライパンとなったとか。
加えてこの社長のすごいのは発信力。フライパンをただ売っているのでなく、フライパンを実際に使って調理をし、その熱効率をネットに毎日アップしていることです。毎朝10時にアップすることで買い物前の主婦に届けるというのです。
とかく「スペック」ばかりを出してしまいがちですが、実際に火のとおりの良さと料理の美味しさを発信することで「使ってみたい」と見る人に思わせるのですから、「モノでなくコト」というマーケティング理論もしっかりとされています。
技術力はあってもなかなか発信できないのが製造業に多いだけに、「作る仕組みと発信する仕組み」を自己完結する企業は強いですね。そして「何もないものを作る」強い思いが、私がたびたびブログで書く「アイディアを出す」ということに通じるなぁと思うのです。
「ないもの」という言葉を浮かべると「そんな無理な」と頭に浮かんでしまいがちですが、この「無理」という言葉が頭をよぎる限りは「ないものを作る」までには至らないと思います。
「新しいことをや」「イノベーションを起こす」には、今の延長上にはなく場合によっては「捨てる覚悟」も必要になってくるかもしれません。やりきる社長に共通するのはこうした「覚悟」があるのだと感じています。
ちなみに我が家に「魔法のフライパン」あります!! 使い心地は・・・私は料理しないので・・・(^^;)