印刷業界は深刻な構造不況にあり、会う人に「大変ですねぇ」と業種を名乗るだけで言われてしまいます。確かにパソコンの発達やカラープリンターの普及、そして何よりもインターネット上での印刷発注が可能になってきたからだと思います。
この傾向は地方に行くほど深刻な状況になっています。しかしすべてが深刻な状況かというと、立派にがんばっている会社があります。実は先日も業界の組合の委員会での情報交換会の事例発表を聞き、あらためて社長の仕事は「アイディアを出すこと」だと感じました。
その会社、小さな地方都市の老舗企業です。社員数も10人足らずという企業規模、地方都市の衰退に伴い仕事が年々減っている状況でした。そんな中でその社長が考えたのが、言われたことだけをする従来型の御用聞きから脱皮したことです。
プレゼンの依頼があれば、要求された内容に一手間をかけてみる、また毎年やっているマップのイラストをお客様に言われなくても自社の判断で新たなものに作り上げていく・・・そうした「ちょっとしたプラスα」を心がけて信頼を積み上げたそうです。
他にも普段から付き合いのある方に、印刷ではない「コトで困っている方」の紹介をお願いしたり、「印刷物」を全面に出すことを努めて控えたそうです。その結果、お客様からお困りごとの「相談窓口」という評価を得ているそうです。
「アイディアを出して社員に後はぶつけている」とこの社長。最近よく耳にする「社長の仕事はアイディア出すこと」ということをまさに実現しているのだとあらためて感じた次第です。
我々の業界では20人以下が80%以上という小さい企業が多く、こうした企業規模の廃業が相次いでいます。役割上業界の今後の生き残りについての講師をさせていただく私ですが、今回の話を聞いて前向きに実践している会社があることが驚きでした。
といいながらこの会社、従来の印刷物をないがしろにしているわけではありません。従来型の印刷物の営業は長年その仕事をしている営業担当者を置いているとか。ある意味では「特性」を生かしての社員配置も感心しました。
今回の委員会はCSR関係の委員会です。事例発表もCSRがお題でしたが、こうした話が出るというのは、CSRが社会貢献などの社外のことだけではなく、社内に対しても当てはまるということ。あらためてこれからの社長の役割が大きいと感じた次第です。