「危機感をもて」と言います。確かに我々経営者にとって今の状況に安閑としていることはできません。いつも「背水の陣」で経営に望むことは心構えとしては当然のことかなと思います。
しかし一方で危機感ばかりで生活が出来るかというと、精神的には正直なところ「きついなぁ」と思います。そんなに危機感ばかり持っていても毎日が憂鬱になるだけであり、決して毎日が楽しくはありません。
危機感という言葉をなにかほかの言い方で表現できないか、ふと浮かんだ言葉が「問題意識」です。この言葉であれば、同じ表現でも前向きに感じられるのではないかなと。
先日も業界団体の新年の互礼会があり、そこで同業他社の社長の基調講演がありました。この会社地方の印刷会社。印刷業界に限らず地方の商圏は人口減少もあり、年々パイが縮小しています。
後継者として引き継いだ彼が早くからこの状況を見据えて新たなビジネスの柱を作り育ててきて十年近く、ようやくその花が開くこととなり規模はさほど大きくなくても立派に利益を出されています。それは置かれた状況の上に立って俯瞰できる精神的な余裕があるのではと。
冷静に判断をして今の形があるというのは発表の資料を見ていてもわかりました。自社のやってきたことに対して「理論」「知識」がちゃんと理由付けされているからです。そんなこともあり非常に聞きやすい内容でした。
「危機感」という気持ちに置き換わってしまうと、なにか「追われる感」があるようにも思うのです。追われているというのは「後ろを振り返ってしまう」そんな感覚にも似ているのではと。
とかく「危機感」という言葉を発し、また社員にも使ってしまいがちですが、実は危機感という感覚は我々経営者だけではないかと。その感覚に社員になりなさいは土台無理だとも思います。
「これでいいか」「なにか他の方法はないか」という問題意識を根付かせることが社員に対しても「主体的」に考える環境づくりになるのではとあらためて感じました。