高校生から通っている美容室があります。当時お世話になった先代は創業の地で営業を続けまだ現役ですが、息子は先代とは違う場所でお店を構え複数の店舗展開をしています。先代は腕もよく名古屋でも有名な方です。
美容室は全国で23万件あるといいます。その多くがわずかな人数で切り盛りし社会保険も整っていない店が多いといいます。息子さんは技術では先代にまだまだ及びませんが、それでも店舗を増やして新しいお客様を開拓しています。
かつて「カリスマ美容師ブーム」がありました。キムタクが演じた美容師のドラマが放映されたことで、多くの若者が美容師を目指し、奇抜なカットやちょっと洒落た店構えなどが流行した時代です。
しかしこのブームもあっという間でした。地域にそぐわない奇抜な店構えをしたり、自分が満足するカットをしたり、「カッコいい」を押し付けたり「顧客満足」に視点がいってなかったからだといいます。
以前は美容室にとって一番のキーワードであった技術も、今では「あってあたり前」だといいます。確かに「美容室」という言葉ではなく「サロン」という言葉をよく耳にするようになりました。
パーマをかけたり、カラーリングしたりすると多くの時間をサロンで過ごします。であれば、ゆったりとした空間で時を過ごしたいというのがお店に求められるのは当然のこと。「お客さまが何を求めているか」が集客のキーワードとなります。
冒頭のジュニアは地元の有名な大学を卒業していますが、その大学からサロン経営者になることはほとんどありません。技術は大学を卒業後学びましたので、美容業界で希薄であった社員の福利厚生と顧客満足を考えて経営しているといいます。
美容業界にどっぷりとつからなかったからこそ分かる業界の弱点。そこを見極めているからこそ、先代に頼らず店を大きくしたこともうなずけます。業界を俯瞰すると見える打つべき一手。その近道は先の「お客様は何を求めているか」だとあらためて感じます。