上京する度に食事をご一緒させていただく社長さんがいます。私よりも10才ほどお若い創業社長です。この方、創業者らしいギラギラ感がなくいつも穏やかな方です。何よりも社員を大切にされ、社員が働きやすい職場作りを目指しています。
仕事の性質上、多くの社員は自宅から直接お客様に出勤するため、定期的に会社全体で親睦会を開催し、コミュニケーションを図っています。また素敵なオフィス環境を実現し、社員第一の会社作りを創業以来されています。
そんな素敵な会社でも、ある時初めて新卒を採用し育ててきた社員が引き抜きにあい、それがきっかけでごそっと社員が抜けた時期があるそうです。実はその時も私はお会いしていましたが、当時はそんなことを少しも顔に出されていませんでした。
「何が足りなかったとお考えですか」とお聞きしたところ、「結局操ろうとしていたんですよね」と・・・。企業経営だから譲れない部分があるにせよ、知らない間にそうした部分が強く出ていたと話していました。
初めて新卒採用をし、手塩にかけて育ててきた社員を引き抜かれてしまい、かなりへこんだと言います。しかしその様子を見た入社したての社員たちが「僕らはそうならないように、新たな時代を作ります」の言葉に救われたと言っていました。
結果、振り替えると風通しがよくなりまとまるきっかけになったそうです。「操る」という反省の言葉の一方で「結果的によかった」とその社長。社員思いの一方でその思いを受け止めている社員が数多く残っている証だと思います。
社長が持っている「社員と共に」という思いは、私は50を過ぎてからようやく行動に移せるようになってきましたが、彼は30代からすでに実践しています。一時期は大変であっても「同じ志を持つ者たちと仕事をする」・・・その軸はぶれていないようです。
企業価値が目に見えないものにシフトしつつあります。その筆頭が社風であり社員だと思います。彼ほどの企業作りには及びませんがその社長のぶれない軸を私も見習い「正しい経営」に努めたいと思っています。