「CSRなんて今ごろ言っているが、日本人は昔から当たり前のようにやっている」そう話をしたのは京都にある麩、湯葉専門店の「半兵麩」会長11代当社の玉置半兵衛さん。今年で80歳と言いますが、「かくしゃく」と言う言葉がぴったりの方です。
全国印刷文化展京都大会の記念講演としてお呼びした半兵衛さん、テーマは「先義後利」でした。半兵麩は創業325年の老舗です。しかしこの半兵衛さんはこの「しにせ」と言う言葉を嫌います。
老舗の「し」は、「死、止、私」という言葉にも置き換えられてしまうのだといいます。むしろ「しんみせ」でないといけないと。「しん」には「新、信、清、進、親、心、真、紳」と言う漢字に置き換えられ、お店と言うのは常に「しんみせ」でないといけないと。
儲かると言う漢字も「信じる者が集まる」と書きますが、儲けて世の中の為に何かを成し、その結果は後からついてくると。この話はよく耳にしますが、長く商売を続けるお店はこうした当たり前のことを地道に続けていることを実感しました。
組合ではCSR認定制度を作り、CSR活動を事業の中に浸透させていこうとする動きがあります。パイが縮小している我々の業界は技術や設備だけで差別化できる会社は一握りとなっています。
そうした中で着目したのが「CSR」。地域社会に根を下ろしてきた我々印刷業界にとってある意味では原点に戻るキーワードだと思います。冒頭の半兵衛さんの言葉の「当たり前」はまさに業界がやってきたことだと思います。
「お店は世の中の人の支えで成り立っている」と半兵衛さん、いまさら言うまでもないことかもしれませんがあらためて聞くと、この「いまさら」が今の世の中にははずせないなと感じています。
11代バトンをつないできた重みをあらためて感じるお話でしたが、そのジョイントの役目が「家訓」だったそうです。今は理念経営の時代、社員と共に歩むための経営理念、「言葉」の重みをあらためて感じた時間です。