従業員の写真や個人情報、適切に管理していますか?
目次
WEBサイト・SNS・ブログ・広報誌などを使った自社の広報活動・採用活動などのために、現に在職している従業員の写真や氏名などの個人情報を利用(掲載)している企業は多いと思います。
当然、自社従業員の個人情報も、お客様からお預かりする個人情報と同じように適切に管理しなければなりませんが、実際にはあまり厳格には管理していない(またはルールがない)、ということもあるようです。
そこで今回は、企業における「自社従業員(元従業員)の個人情報の利用」についての注意点をまとめてみました。
●従業員という立場であっても、肖像権やプライバシーの権利が認められます
法的な明示はないものの、すべての人には人権に基づいた「肖像権」が認められており、本人の許可なく容姿などを撮影すること、その写真を利用(公開・掲載)することは禁止されます。氏名を明示しない場合でも、個人を特定できる写真は本人の許可なく利用できません。
また、プライバシーの権利(プライバシー保護)として、容姿以外の個人に関する情報(出身地や出身校、現在の居住地域、趣味など)も、本人の許可なく利用できません。
例えば次のような場合は、利用前に本人の許可を得ておく必要があります。
- 採用活動のために、求人サービスサイトや自社WEBサイトに従業員の写真・氏名・入社年・所属部署・コメントなどの情報を掲載する
- 取引先などへの新入社員紹介目的で、広報誌に従業員の顔写真・氏名・所属部署・抱負・趣味などの情報を掲載する
- 自社のWEBサイトに従業員の写真をモデルとして(イメージ写真として)利用する
- 広報活動や自社の活動報告として、SNSやYouTubeに従業員を登場させる
●従業員の個人情報も、適切に取得・管理・利用しなければならない
自社従業員の個人情報を適切に管理することはすべての企業の義務です。次のような適切な取扱い・管理をしなければなりません。
- 個人情報の取得時(撮影時)に利用目的を明示して、本人の同意を得る
- 取得時に明示した利用目的以外で利用しない
- 個人情報は利用権限のある者以外が利用・閲覧等できないよう厳格に管理する(データの暗号化、保管場所へのアクセス制限など)
- 不要になった場合は適切に個人情報を破棄・削除する
- 本人からの開示・変更・利用停止・削除などの要請には速やかに、かつ適切に対処する(本人からの削除・利用停止の要請には原則応じる)
なお、個人情報保護法は、企業の規模や業種、取り扱う個人情報の量に関係なく、個人情報を1件でも取り扱うすべての事業者に適用されます(1人だけでも従業員がいるのであれば、その人の個人情報を取り扱うことになるので個人情報保護法は適用されます)。
●退職者の写真などの継続利用には特に注意が必要
従業員の個人情報の利用において、特に問題が生じやすいのは、WEBサイトなどに掲載されている従業員が退職した場合です。
撮影時や公開時(本人の在職中)に同意を得ていた場合であっても、同意の際に具体的な掲載期間について明示していない場合が多く、在職中は掲載されることに異議がなくても、退職後には削除して欲しいと思っている人もいます。
そのため、基本的には退職者の写真などの個人情報はできるだけ速やかに公開停止・削除、または別の在職中の社員の情報に差替えましょう(退職後1か月以内に削除するなどルールを決めておくとよいです)。
また、退職者の個人情報がWEBサイトなどに掲載(公開)されたままになっていると、本人が知られたくないと思っていたとしても、以前どの企業で働いていたのかなどの情報が第三者に知られてしまう可能性もあります。
近年では、検索機能にAIが使われることもあり、氏名を入力(検索)すると、その人がどの企業で働いていて、どのような業務に携わっているのか、などが結果として出力される(AIが回答する)こともあるため、今までよりも個人情報の公開や公開継続には配慮が必要です。
本人の退職後も、何らかの理由で個人情報を継続利用(公開)する場合は、次のような事項について、退職前に本人との間で改めて合意しておきましょう。合意は口頭でもいいですが、書面を残しておくほうがいいでしょう。
- 利用(公開)を継続する期間、公開範囲、利用媒体(SNSの種類、広報誌、など)
- 退職者本人からの開示・変更・利用停止(公開停止)などについての要請の受付窓口(担当者)とその連絡手段
- 退職後に新たな写真などを公開しないこと、または公開済の写真などを新たな目的(媒体)に利用しないこと
とはいえ、例えば、何年も前にSNSに投稿された集合写真などをすべて削除することは難しい、会社の行事の様子(旅行や飲み会など)を会社の記念誌などに利用したい、というような場合もあり得ます。 もし、そのようなことが想定されるのであれば、上記の退職時の同意事項にそれらの「例外」についても明示し、同意を得ておくようにしましょう。
●従業員の個人情報をインターネット上に公開する場合は慎重に
実際に働いている従業員の顔が見える(どんな人がいるのかわかる)、というのは、企業PRとして効果的ではありますが、個人情報の厳格かつ適切な管理が要求され、また、雇用が流動化して短期間で退職する人も増加している今の時代に、安易に従業員の写真や氏名をWEBサイトやSNSなどに利用(公開)することにはリスクもあります。
また、従業員の氏名や顔写真を悪用した「なりすまし」の発生、従業員へのストーカー被害、公開を望まない従業員とのトラブルの発生などの原因にもなり得ます。
従業員を守るためにも、また、不要なトラブルを避けるためにも、従業員の個人情報をWEBサイトやSNSなどに公開する必要が本当にあるのか、公開する場合の管理手順はどうするのか、などを今一度見直してみてはいかがでしょうか。