送信前に要確認︕ドッペルゲンガー・ドメインにご注意を

情報漏えい事故というと、悪意ある第三者の社内システム侵⼊や、情報の保存された記憶媒体の紛失・盗難発⽣などを思い浮かべる⼈が多いかもしれませんが、⽇常業務で情報漏えいの原因となりやすいのは「メールの誤送信」です。
本来送るべきではない取引先などに誤って送信してしまうこと以外にも、メールアドレスの⼊⼒ミス(スペルミス)が原因で情報が漏えいする危険もあります。


●メールアドレスのタイプミスは、必ず送信エラーになるとは限らない

通常であれば、メールアドレスのスペルを間違えた場合、送信エラーとなって、メールサーバー(MAILER-DAEMON や Mail Delivery Subsystem)から「送信できませんでした」という内容のエラーメッセージ(主に英⽂)が返ってくるので、送信者はメールが送信できなかったことに気が付けます(送信できなかった原因がメールアドレスの⼊⼒ミスであることにも気が付けます)。
しかし、ドメイン(@より後ろの⽂字列)の⼊⼒ミスの場合は注意が必要で、特に有名なドメインの場合、間違えやすいスペルのドメイン名を使⽤した(または似せた)ドメインを使って、⼊⼒ミスメールを意図的に受信し、情報を盗む⼿⼝が存在しています。

そのようなドメインは「ドッペルゲンガー・ドメイン」と呼ばれ(⾃分と同じ、またはそっくりな姿をした⼈を⾒る幻覚の⼀種を表すドイツ語「ドッペルゲンガー」に由来)、正規のドメイン使⽤者ではない、悪意ある第三者に使⽤されていることが多いです。
もし、⼊⼒ミスしたスペルのドメインがドッペルゲンガー・ドメインとして使⽤されていた場合、送信エラーとはならず、攻撃者にメールが届いてしまいます。

攻撃者はメールサーバーの設定を、無効、または存在しないメールアドレスであっても受信できる設定(キャッチオール)にすることで、誤って送信されたメール(本来存在しないアドレス宛てのメール)を受け取ることが可能(※1)になります。
ドッペルゲンガー・ドメインに送信してしまった場合、送信者には送信できなかったというエラーメッセージが返ってこないため、ドッペルゲンガー・ドメインに送信してしまったことに気付けないことがあります。

実際に、⽇本国内でもドッペルゲンガー・ドメインに誤送信してしまい情報が漏えいした、という事故が報告されています。
ドッペルゲンガー・ドメインは昔から存在し、こちらがスペルを間違えた場合以外にも、メールやWEBサイトの広告リンクなどに、正規サイトや正規の問合せ先メールアドレスそっくりなドメインを使ったURLやメールアドレスを記載し、偽サイトや偽メールアドレスに誘導する攻撃もあります。

※1 例:正規のアドレスが「taro@sample.co.jp」の場合で、ドッペルゲンガー・ドメイン「@sample.co.jo」が存在する場合、「taro@sample.co.jo」というアドレスが実在しなくても、「@sample.co.jo」宛てのメールはすべて受信できるため、攻撃者に届いてしまい、メール内の情報を盗まれてしまいます。


●ドッペルゲンガー・ドメインの特徴

ドッペルゲンガー・ドメインは有名企業・サービスのドメイン名に似せたものなどがあります。以下にドッペルゲンガー・ドメインの特徴(パターン)の例をいくつかまとめてみました。

正規のドメイン「〇〇〇@sample.co.jp」に対するドッペルゲンガー・ドメインの例

〇〇〇@sample.co .jo トップレベルドメイン(.jp)が似ているが違う
〇〇〇@sample.comトップレベルドメインが正規と異なる(.co.jpが正しいが、.comになっている )
〇〇〇@sanple.co .jpタイプミスしやすいアルファベット違いのスペル(例の場合mがnになっている)
〇〇〇@sammple.co .jpスペルの⽂字が多い(例の場合mが2つ)
〇〇〇@sampl.co .jpスペルの⽂字が少ない(例の場合eがない)

ドッペルゲンガー・ドメインの実例としては、定番ドメインの「@gmail.com」に対する「@gmai.com」があります(gmail.comには他にも多数のドッペルゲンガー・ドメインがあるようです)。
もちろん、Gmail以外でも、定番的なドメインに対しては多数のドッペルゲンガー・ドメインが存在しているようなので、くれぐれもご注意ください。



●ドッペルゲンガー・ドメインへの誤送信を防ぐには︖

ドッペルゲンガー・ドメインへの誤送信対策として、有名な(既に確認されている)ドッペルゲンガー・ドメインへの送信をメールサーバーでブロックする⽅法がありますが、それだけで完全に防げるわけではありません。

ドッペルゲンガー・ドメインに限らず、誤送信をしないためには、次のような対策も実施し、慌てずに(できれば少し時間をおいて)確実に送りたい相⼿に送信するようにしましょう。

正規の相⼿から届いたメールを開いて「返信」する(アドレスを⼿⼊⼒しない)
● よく送信する相⼿のアドレスはアドレス帳に登録し、そこから選択する
● outlookの場合、すぐ送信されずにいったん送信トレイに保留する設定にしておく
● gmailの場合、送信後の「送信取り消し」設定で取り消し可能時間を「30秒」に設定しておき、送信後すぐに確認することを習慣化、誤っていた場合は即送信取り消しを実⾏する
個⼈情報や機密情報はメールに記載しない、メールにファイルを添付しない

ドッペルゲンガー・ドメインへの誤送信以外にも、不特定多数への同時送信時の「To」「CC」「BCC」の設定ミスによるメールアドレス情報の漏えいも多発しています。

メールの送信時には慌てず、慎重に送信相⼿や送信設定を確認するようにしましょう。